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11、ユリアの縁談

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 ユリアは良い暮らしではありたいが、別にファーストレディになりたいなどとは全然思っていない。
 裕福で、そこそこの名家に嫁げればいいと考えている。金のない高位貴族より、裕福な商家がいいという程だ。
 完璧な淑女であるフレアが、その完璧さ故に不良債権の極みと言えるエンリケのトイレットペーパー役にされているのを見ているうちにそうなった。
 あの美貌で超絶優秀な姉が、ウンコ殿下のおしりふきにされている。
 下手に優秀を気取ったら、あのウンコ殿下のおしりふきに自分もされるかもしれないとユリアは気づいた。そうでなくても他のドラ息子のおしりふきにされるかもしれない。
 ユリアはお世話をするより、されたい人間だった。
 もし、アシュトン公爵家に姉がいなかったらかなり悲惨だっただろう。
 ユリアは可愛らしいが狡賢かった。そこそこゲスでセコイ性格だった。
 フレアに迷惑を掛けず、可愛らしく甘えておけばちゃんとそれなりのところに嫁がせてもらえると判断した。
 その判断は正解であった。
 父のジョージのもってくる縁談は、どれもいまいちだった。
 中にはちょっといいかもと思って姉に相談すると、でるわでるわ危ない噂。
 凄まじいマザコンやシスコン、薬物依存、特殊性癖、ギャンブル癖、買い物依存症、隠し子や内縁の妻がいる――どことなく、エンリケ臭の漂う男ばかりなのだ。見てくれと家柄ばかりの外見キラキラで中身がスッカスカなのばかり。
 一度だけジョージの顔を立ててお見合いをしたら、危うくネクロフィリアのコレクションにされかけた。姉が絶対出されたものを飲食するなという忠告をしてくれて、ユリアがきちんと従っていたから回避できた。手を付けていたら、何をされていたとか考えたくない。
 ちなみにそのヤバい見合い相手は、別の令嬢と見合いした時に拉致監禁して、その親が探し回った結果、地下の秘密のコレクションの中から出てきた。
 コレクションは孤児、娼婦など足のつきにくい人から古く多くいたが、最近のものは村娘や商家の娘、下級貴族の令嬢などどんどん身元がしっかりした女性も出てきた。
 どうしても体の綺麗な女性が欲しくて、ついに貴族まで手を出したそうだ。身分の高い人間は水仕事や重労働などしないので、髪や爪や手足などの末端まで傷みが少ないのだ。
 当然そのヤバい見合い相手の家は満場一致で取り潰しとなった。高位貴族ではあったが前々から悪評が酷く、今回のことで完全に貴族の世界から孤立した。呪われた家として名を馳せた結果、引き継ぎたい人もいなかった。
 たった一度でもジョージは兎に角人を見る目が節穴なのだと理解するに十分だった。
 どうやら、王家筋の侯爵家であることと結納金に釣られたらしい。
 ユリアは実の父親だろうが、糞野郎に嫁がせる奴は敵だと思っている。異母姉のフレアの方が信用できた。

「お父様は、王家の対応で暫く多忙になるでしょう。わたくしが縁談をセッティングして良くて?」

「うん、お姉ちゃんなら安心だわ」

 母は当てにならない。元は娼婦だったし、貴族の伝手は少ないだろう。
 それに昔っからフレアの手の平というか、指先だけでコロコロ転がされていた。
 フレアはまともな貴族との付き合いが多いし、公務で外国に訪れることもあったので、伝手が手広くある。
 ユリアはフレアにはちゃんと従っていたのだから、きちんとした身元で、まともな相手を用意してくれるだろう。
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