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胃袋を掴みたい婚約者(クロード視点)③
しおりを挟む最近、ますますダニエル達の愚行が輪をかけていると聞く。
定期的に釘を刺しても、すぐに忘れて愚行を繰り返すのだから腹立たしい。それを問いただしても、言い訳にならない屁理屈をこねて正当化しようとしてはクロードに論破されるの繰り返し。
全力をもって使用人たちがベアトリーゼに被害が行かないようにしているが、それでもどうにもならないものがある。
成長に従いそういったことに興味が出るのは分かるが、ベアトリーゼの異母妹――正確には血も繋がらない義妹セシリアの男癖の悪さだ。
クロードが当初から危惧していた通り、碌に矯正されることがなかった。
甘やかすだけのダニエルと、もともとの素行に問題ありすぎなルビアナとタチアナ。
あんな非常識な連中に囲まれて育てばそうなるに決まっている。良心のある使用人は、セシリアに苦言を呈した。しかし、セシリアは大仰に泣いてダニエルに虐めだと密告し、使用人を首にするように仕向けた。
しかし所詮は暫定当主である。家宰は表面上はそれを受付、首にしたと言って書類上も解雇をし、同日付で再雇用をして一か月ほどの暇とマルベリー所有の別荘の掃除を申し付けて、ほとぼりが冷めたら元の場所に戻していた。
セシリアは使用人の顔など覚えていない。
半年もすれば戻ってきているが、髪型を少し変えさせてしまえば忘れるレベルである。
ベアトリーゼは「最近見ないわね……?」と訝しむのに、自分付きの侍女ですら忘れるのだから大したものである。
一度、クロードは何故ダニエルからマルベリーの全てを奪い取ろうとしなかったのか聞いたことがある。
家宰である壮年の男は、深い笑みを浮かべた。
「私と私の家族はポプキンズ辺境伯夫妻とエカチェリーナ様に命を救われたのです。
命だけでなく、人生も救われたのです。
ダニエル様達を追い出すのは簡単ですが、私はその位置に行きたいわけではありません。
お嬢様は女伯爵か夫人にはいつか必ずなるのですから、なるべく恙なく穏便に事を済ませたいのですよ」
そしてタマヒュンな物でも思い出したように、そっと視線を逸らした。
ポプキンズ辺境伯は結構やんちゃな時代があったのだろう。
「あとお嬢様が恋に目覚めてしまった以上、何か下手を打てば汚い花火にされるのは私です」
長くマルベリーに仕えていると、色々とマルベリーの血筋特有の暴走を目にしているようだ。
保身と忠誠の為に職務に忠実だった。
その時、屋敷の方から見慣れた亜麻色がやってくるのが見えた。
頬を薔薇色に染めて顔からはち切れんばかりに喜びが漏れ出ているのはベアトリーゼだ。
「クロード様、いらっしゃいませ! お会いできて嬉しゅうございますわ!」
「私も会えて嬉しいですよ」
クロードの月並な挨拶や社交辞令にも、にっこおおおと笑みがさらに輝くベアトリーゼ。
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