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可哀想な婚約者(クロード視点)②
しおりを挟む後日、マルベリー家の使用人たちの有能っぷりと、ダニエルの無能っぷりに悪態をつかずにはいられないクロードであった。
まさにお飾りの暫定当主。殆どが家令長を始めとした使用人たちが回しているようなものだった。
そして、ローゼスではなく自分が婚約者に選ばれてよかったと思うことになる。
ローゼスではあの使用人たちを御せない。
義理の兄の立場では、マルベリー伯爵家を掌握するのは難航するだろう。
幸い、クロードに重度の恋煩い状態のベアトリーゼ。使用人たちはベアトリーゼが大事なようだし下手を打たなければ、穏便に味方に引き入れることはできるだろう。
使用人たちはあくまで領分を犯さない様に、慎重に動いている。それは、のちにマルベリー伯爵当主の座をベアトリーゼが引き継ぐにしても、その伴侶が引き継ぐにしても問題ないように気を配っているからだ。
難しい仕事から逃げ回り、丸投げしているダニエルとは大違いだ。
その頃のベアトリーゼはというと――
「それでね! 今日も、クロード様がかっこよかったのおおお!!」
スババババと照れ隠しスパーリングを無言で受ける執事に、思いっきりのろけていた。
最近は従僕では避けることも不可能となってしまった。
(日に日に拳が鋭くなっております、お嬢様……!)
あの小さく引っ込み思案な女の子が、と成長の目覚ましさに胸が熱くなるのであった。
時折フェイントも入るため、きちんと話は聞いていないといけない。
ベアトリーゼのテンションと、連撃の変調はシンクロしているのだから。
少しぼうっとしていれば、ボディにきつい一撃が入るだろう。
(ですがこのルドルフ、伊達に先々代からこの屋敷に仕えていません! ドラゴンすらデコピンで仕留める大奥様たちにくらべれば!!!)
その日のクロードは、特製ソースとレタスとトマトと牛パテの挟まった『ハンバーガー』なるものに舌鼓を打つこととなった。特にパテの牛肉は甘い油がジューシーなのにくどくなかった。
サンドイッチとはちょっと違った形だが、バーガーは持ちやすいように紙で包まれているしおしぼりやナプキンが数枚付いていた。
(素材がいいのか? 肉がいい。この前の迎賓館で食べたフルコースより美味いな……)
栄養が偏らない様にフルーツベースのスムージーとサラダも付いていた。
サラダは食べやすいように細かく刻んであるし、最初からドレッシングと和えてある。
その気遣いに、ふと笑みの零れるクロードだった。
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