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あばよ! ですわ!3
しおりを挟むスタールビーの一級品って滅茶苦茶高いんだよ。一級品は嫁入り道具になることや、先祖代々受け継ぐことだってある。縁起物のパワーストーンでもあるから。
使用人に探させて、質屋とかに入れられていないかも調べてもらった。出てこなかったけど。
淡々とセシリアの過去の所業を突きつけるクロード様、超クールで惚れ直しちゃう。
「ああ、あと――貴女、何度か私が贈ったベアトリーゼへのプレゼントを勝手に開けてネコババしていたでしょう?
流石に誕生日や祝い事の物は盗らなかったようですが、私が地方や外国で見つけて贈ったものばかり狙った確信犯」
「知らない! 知らない知らない知らない!」
「貴女のそのエメラルドのティアラ、サファイアのイヤリング、黄金ミンクのケープ……それは全て私からベアトリーゼに贈ったものですが?」
「違うわ! これは私が男性から貰ったのよ! 婚約者がいない私を可哀想だって!」
「その白いドレスに、ダイヤのついた靴。サイズが合っていないのでは?」
よく見れば、セシリアの白いドレスは少し皺が多い。
ふわっと広がったスカート部分はともかく上半身はきつそうだ。ミンクのケープで隠しているけれど、胸なんてもうぱっつぱつだ。
ぶるぶる震えたセシリアは叫ぶ。
「だって、地味なベアトリーゼより可愛くて綺麗な私の方が似合うもの! 綺麗なものは綺麗な人が身に付けるべきでしょう!?」
周りはドン引きだ。
私は可哀想なのと自分で言いながら、異母姉、というかもしかしたら他人かもしれない人からものを盗んでいた。しかも、婚約者からの物を。
「それは、ウェディングドレスに浮かれて失神しそうなベアトリーゼの予行練習のためのドレスや靴や宝石です。
泥棒に貸し出していい代物じゃない――衛兵、この娘を拘束してください。
まだ余罪は十分あるでしょう。貴族ではないのですから、情けは無用です」
クロード様が軽く手で合図すると、待機していたらしい兵が一斉にやってきた。
セシリア親衛隊キラキラオールスターズは、セシリアのあまりの糞女っぷりに忘我状態だ。
いや、私もここまで糞だとは知らなかったですが。
連行されながら「私は伯爵令嬢なの! 貴族なのよ!」と叫んでいるセシリア。
か弱い美少女が、怒りに我を忘れて鬼女のような顔で叫んでいる。
それを軽く眼鏡を直しながら、無機質な視線を向けているクロード様。その知的眼鏡ムーブもエクセレントなクロード様が、こちらを見た。
「引きましたか? 容赦のない男だと」
「いえ、クロード様がやっていなければ私がやっていました」
「そうですか?」
「はい、助走付けて殴っていました! パーじゃなくてグーで!」
セシリアの癖にクロード様と会話をするなんて生意気だ。
クロード様をよその女に渡すかと、腕を取ってギュッと抱き着く。
息巻いている私に、きょとんとするクロード様が口を押さえてくつくつと笑いだす。
「貴女は、本当に昔から変わりませんね」
「はい、クロード様が大好きです!」
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