上 下
25 / 43

卒業式ですわ!2

しおりを挟む

 
「酷いわ、お異母姉様はいつもそう! どうしてそんなに私に冷たいの!?」

「セシリアがよその家に迷惑をかけるのに謝らないから、菓子折りを持って謝罪しに行っても水をぶっかけられたり罵倒されたり、運が悪いと足蹴にされたり扇子や平手で引っぱたかれるから。
 セシリアの尻拭いには疲れた。もう自分でやって」

 謝罪の様子が想像を絶していたのか、セシリアのひきつれていたキラキラオールスターズが引いたのが分かった。
 クロード様の顔が険しくなった。しかめっ面もゴチです。
 クロード様がうちを引き継ぐ前に何とか収めたかったけど、間に合わなかったわ。クロード様は頑張っていると慰めて下さらなかったらきっと今の私はセシリアを出合い頭にぶん殴っていたくらい荒んでいたでしょう。
 キラキラオールスターズの数人は、セシリアと私を見比べて困惑している。そうじゃないものもだいぶ視線が柔らかくなったのが分かった。
 そりゃそーだわ。セシリアの引っかけたところは特に女性に優しい文化をもつお国柄だもの。

「私がいつ、どの家に迷惑をかけたの!?」

「両手足で足りないわよ。漸く示談がだいぶまとまってきたのに、また男ひっかけて……
 王子殿下を諦めたのは良い判断だけれど、留学中の公子を引っかけるのは如何かと思うわ。
 セシリアが引っ搔き回したせいで破談になったところもあるのよ。
 貴女をこの学園と卒業と同時にマルベリー家から一切援助せず、貴族籍を剥奪することでお咎めなしに何とか出来たんだけど。
 というより、今日が卒業式だからもうセシリア・マルベリーじゃなくて、ただのセシリアね」

「セシリアはマルベリー家から離縁されるのか!?」

 ぎょっとしたようにセシリアの腰を抱いていた黒髪俺様系イケメンが詰め寄ってくるが、それを払うクロード様。
 呆れたように口を開く。

「というより、セシリアという娘はもともとマルベリー家の娘ではありません。
 現当主のダニエルは子爵家からの婿入りで、ベアトリーゼの母であるエチェカリーナ様がお亡くなりになっていなければ彼女が今も女伯爵であり当主でした。
 正当な継承権を持つのはベアトリーゼでしたが、エチェカリーナ様がお亡くなりになった時の彼女は六歳。引き継ぐには早すぎる。ダニエルはそれまでの暫定当主です。
 ベアトリーゼも成人し、私とまもなく結婚するので爵位を返すことが決定しています。
 セシリアは、戸籍上はダニエルとルビアナの娘という形になっています」

 戸籍上って、なんか引っかかる。
 え? ちがうの? ちょっと一人だらだらしていると、くすりと冷酷に笑うクロード様。
 いやーん、私の性癖を容赦なくクリティカル!
 周囲の男たちは茫然としている。
 え、普通知ってるよね? うちの馬鹿親父が婿養子で、お母様が亡くなった途端に恥部野郎の放蕩婿殿になったことは。
 仕事は使用人たちが回してくれていたから、それほど切られなかったけどさー……
 しかも、私の婚約者はクロード様やで? クールでインテリジェンスで王太子付きの侍従から最近補佐官になったんやで? 生まれはケッテンベル公爵家で、次期マルベリー伯爵家当主だし。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】都合のいい女ではありませんので

風見ゆうみ
恋愛
アルミラ・レイドック侯爵令嬢には伯爵家の次男のオズック・エルモードという婚約者がいた。 わたしと彼は、現在、遠距離恋愛中だった。 サプライズでオズック様に会いに出かけたわたしは彼がわたしの親友と寄り添っているところを見てしまう。 「アルミラはオレにとっては都合のいい女でしかない」 レイドック侯爵家にはわたししか子供がいない。 オズック様は侯爵という爵位が目的で婿養子になり、彼がレイドック侯爵になれば、わたしを捨てるつもりなのだという。 親友と恋人の会話を聞いたわたしは彼らに制裁を加えることにした。 ※独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。

転生聖女のなりそこないは、全てを諦めのんびり生きていくことにした。

迎木尚
恋愛
「聖女にはどうせなれないんだし、私はのんびり暮らすわね〜」そう言う私に妹も従者も王子も、残念そうな顔をしている。でも私は前の人生で、自分は聖女になれないってことを知ってしまった。 どんなに努力しても最後には父親に殺されてしまう。だから私は無駄な努力をやめて、好きな人たちとただ平和にのんびり暮らすことを目標に生きることにしたのだ。

【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜

鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。 誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。 幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。 ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。 一人の客人をもてなしたのだ。 その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。 【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。 彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。 そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。 そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。 やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。 ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、 「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。 学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。 ☆第2部完結しました☆

【完結】胃袋を掴んだら溺愛されました

成実
恋愛
前世の記憶を思い出し、お菓子が食べたいと自分のために作っていた伯爵令嬢。  天候の関係で国に、収める税を領地民のために肩代わりした伯爵家、そうしたら、弟の学費がなくなりました。  学費を稼ぐためにお菓子の販売始めた私に、私が作ったお菓子が大好き過ぎてお菓子に恋した公爵令息が、作ったのが私とバレては溺愛されました。

忘れられた幼な妻は泣くことを止めました

帆々
恋愛
アリスは十五歳。王国で高家と呼ばれるう高貴な家の姫だった。しかし、家は貧しく日々の暮らしにも困窮していた。 そんな時、アリスの父に非常に有利な融資をする人物が現れた。その代理人のフーは巧みに父を騙して、莫大な借金を負わせてしまう。 もちろん返済する目処もない。 「アリス姫と我が主人との婚姻で借財を帳消しにしましょう」 フーの言葉に父は頷いた。アリスもそれを責められなかった。家を守るのは父の責務だと信じたから。 嫁いだドリトルン家は悪徳金貸しとして有名で、アリスは邸の厳しいルールに従うことになる。フーは彼女を監視し自由を許さない。そんな中、夫の愛人が邸に迎え入れることを知る。彼女は庭の隅の離れ住まいを強いられているのに。アリスは嘆き悲しむが、フーに強く諌められてうなだれて受け入れた。 「ご実家への援助はご心配なく。ここでの悪くないお暮らしも保証しましょう」 そういう経緯を仲良しのはとこに打ち明けた。晩餐に招かれ、久しぶりに心の落ち着く時間を過ごした。その席にははとこ夫妻の友人のロエルもいて、彼女に彼の掘った珍しい鉱石を見せてくれた。しかし迎えに現れたフーが、和やかな夜をぶち壊してしまう。彼女を庇うはとこを咎め、フーの無礼を責めたロエルにまで痛烈な侮蔑を吐き捨てた。 厳しい婚家のルールに縛られ、アリスは外出もままならない。 それから五年の月日が流れ、ひょんなことからロエルに再会することになった。金髪の端正な紳士の彼は、彼女に問いかけた。 「お幸せですか?」 アリスはそれに答えられずにそのまま別れた。しかし、その言葉が彼の優しかった印象と共に尾を引いて、彼女の中に残っていく_______。 世間知らずの高貴な姫とやや強引な公爵家の子息のじれじれなラブストーリーです。 古風な恋愛物語をお好きな方にお読みいただけますと幸いです。 ハッピーエンドを心がけております。読後感のいい物語を努めます。 ※小説家になろう様にも投稿させていただいております。

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

死ぬはずだった令嬢が乙女ゲームの舞台に突然参加するお話

みっしー
恋愛
 病弱な公爵令嬢のフィリアはある日今までにないほどの高熱にうなされて自分の前世を思い出す。そして今自分がいるのは大好きだった乙女ゲームの世界だと気づく。しかし…「藍色の髪、空色の瞳、真っ白な肌……まさかっ……!」なんと彼女が転生したのはヒロインでも悪役令嬢でもない、ゲーム開始前に死んでしまう攻略対象の王子の婚約者だったのだ。でも前世で長生きできなかった分今世では長生きしたい!そんな彼女が長生きを目指して乙女ゲームの舞台に突然参加するお話です。 *番外編も含め完結いたしました!感想はいつでもありがたく読ませていただきますのでお気軽に!

処理中です...