真実の愛に目覚めた伯爵令嬢と公爵子息

藤森フクロウ

文字の大きさ
上 下
22 / 43

愚妹の後始末は大変ですわ!2

しおりを挟む
 

「ごめん、セシリア。もう貴女の尻拭いに疲れた。
 貴女が良い縁談を探して婚活するのはいいけれど、婚約者のいる方に節度を疑う距離で接するのは困るの。本当にやめて。
 マルベリーを使って伯爵令嬢を名乗れなくなってしまうわよ?」

「酷いわ! お異母姉様!」

「じゃあ自分で謝りに行って。もう私知らないから。ファブニル公爵家と、ダルダニャン公爵家と、コノート侯爵家と、シルバニア侯爵家と、デリデン辺境伯家と、ガスタニア伯爵家と、マルイルク伯爵家と、ロンバット伯爵家と、クライスト伯爵家と、ミリダウ子爵家とボルドール子爵家と、アブシア男爵家と」

「し、知らないわ! どこの家よ!?」

 あ。これはいくつかは覚えがあるな。顔色が変わった。
 途中で遮られたが、ここはきっちり言わせてもらう。何なら、後で謝罪一覧を贈りつけてやります!

「セシリアが匂わせ発言やデートして貢がせた家と、その婚約者の家。破談になったところもある」

「酷いですぅ、異母姉様。セシリアは知らない……」

 うるんうるんの目で品を作って「よよよ」と言わんばかりに気弱ぶったセシリア。
 酷い、知らないは通らないわよ。金をはたいて探偵雇ったり、舎弟どもを走らせ、うちの部下に特別ボーナスを握らせて調べさせたわ。
 転々と寄生先を変えるもんだから、追跡するのが面倒だったわ。
 顔だけ見れば本当に今も天使だもの。泣き顔でコロッと騙される男の多いこと。

「あ、デート基準はキス以上をした人だけだから。ただのお出かけやショッピングや、手を繋いだ程度はノーカンにしておいてあげているのは慈悲よ。貴方が引っかけた男の家や、婚約者の家が被害に耐えかねて訴えてきてからの謝罪行脚は面倒だから、ここ数か月ずっとセシリアに人を付けていたの」

 ぶっちゃけ、貴族は同じ馬車に男女が二人きりで入った時点でアウトだ。密室系はアウト。
 それを入れたらもう両手足で足りなくなる。
 セシリアのせいで破談になった場合、浮気男の被害女性が有利になるように情報を回して違約金や賠償金をふんだくるお手伝いをすれば、色々やりやすいのよね。
 婚約続行にしても、首根っこを掴む材料になるし。
 金と情報は天下の周りものだわ。
 愛と情熱があればどうにでもなるという非現実的なヒロイズムを持ったセシリアには理解できていないようだけれど……

「酷いわ、異母姉様! 私を疑っていたの!?」

「ううん、疑ってないわよ」

「じゃあなぜ?! どうして信じてくれなかったの!?」

 おうおう、エゴヒロイズム全開だな。セシリアよ。だがもう遅い。
 タチアナに続き、貴様の男癖の悪さは既にケッテンベル――つまりはクロード様の御実家にご迷惑をかけたのだ。
 貴様のお涙頂戴は私には効かぬ! そして貴様には媚びぬ! 靡かぬ! 容赦はせぬ!
 だが怒りは出さず、貴族らしく刃を微笑に変えて打ち返す。

「信じていたもの、セシリアが複数の男性と関係を持っていたのを」

「そんな……! 酷い! お異母姉様なんて知らない!」

 旗色が悪くなったのか、真珠のような涙を散らしながらセシリアは去っていった。
 どんなに趣向を変えてもお得意の泣き落としは効かないからな!
 クロード様に出会う前ならぎりぎり効いたが、今のアンタのお涙頂戴一人演劇に騙されるのは糞親父くらいだ!
 ちなみにタチアナとルビアナは自分に都合が悪いと途端に判定がシビアになる。

「待って、セシリア! アンタがビッチだろうが非処女だろうがどーでもいいからクロード様をはじめご迷惑をかけた方々に平伏して誠心誠意謝罪しなさいよ、ゴルァ! お前のパツキン頭を全部剃髪して尼寺にぶち込むぞ! 逃げんな! 授業でろや、この万年赤点女が! 去年みたいに私のノートを盗んだらマジしばくぞ!」

 あら嫌だわ。内なるパッションがでてしまった!
 だけど、なぜか周囲からパチパチと拍手を頂きました。
 その後、私と顔を合わせるのが嫌なのか外泊の増えたセシリア。でも請求書は家に来るから生きてはいるのでしょう。
 舎弟とローゼスに「あの糞アマを見つけたら報告しろ」と厳命しておいた。何故か返事は「イエッス、マム!!!」だった。軍隊か。
 セシリアは小賢しく逃げるので、恥を忍んで友人やかつてセシリアがご迷惑をかけた方にも平伏して「あの小娘がいたら教えて欲しい」とお願い申し上げた。
 クロード様にご迷惑をお掛けしたらどうしよう……
 ボロボロと泣いていると、同情してくれたのか美味しいお菓子とお茶を頂いた。


しおりを挟む
感想 39

あなたにおすすめの小説

職業『お飾りの妻』は自由に過ごしたい

LinK.
恋愛
勝手に決められた婚約者との初めての顔合わせ。 相手に契約だと言われ、もう後がないサマンサは愛のない形だけの契約結婚に同意した。 何事にも従順に従って生きてきたサマンサ。 相手の求める通りに動く彼女は、都合のいいお飾りの妻だった。 契約中は立派な妻を演じましょう。必要ない時は自由に過ごしても良いですよね?

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

【完結】旦那様、わたくし家出します。

さくらもち
恋愛
とある王国のとある上級貴族家の新妻は政略結婚をして早半年。 溜まりに溜まった不満がついに爆破し、家出を決行するお話です。 名前無し設定で書いて完結させましたが、続き希望を沢山頂きましたので名前を付けて文章を少し治してあります。 名前無しの時に読まれた方は良かったら最初から読んで見てください。 登場人物のサイドストーリー集を描きましたのでそちらも良かったら読んでみてください( ˊᵕˋ*) 第二王子が10年後王弟殿下になってからのストーリーも別で公開中

愛されていたのだと知りました。それは、あなたの愛をなくした時の事でした。

桗梛葉 (たなは)
恋愛
リリナシスと王太子ヴィルトスが婚約をしたのは、2人がまだ幼い頃だった。 それから、ずっと2人は一緒に過ごしていた。 一緒に駆け回って、悪戯をして、叱られる事もあったのに。 いつの間にか、そんな2人の関係は、ひどく冷たくなっていた。 変わってしまったのは、いつだろう。 分からないままリリナシスは、想いを反転させる禁忌薬に手を出してしまう。 ****************************************** こちらは、全19話(修正したら予定より6話伸びました🙏) 7/22~7/25の4日間は、1日2話の投稿予定です。以降は、1日1話になります。

【完結】欲しがり義妹に王位を奪われ偽者花嫁として嫁ぎました。バレたら処刑されるとドキドキしていたらイケメン王に溺愛されてます。

美咲アリス
恋愛
【Amazonベストセラー入りしました(長編版)】「国王陛下!わたくしは偽者の花嫁です!どうぞわたくしを処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(にっこり)」意地悪な義母の策略で義妹の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王女のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯? 

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

王家の面子のために私を振り回さないで下さい。

しゃーりん
恋愛
公爵令嬢ユリアナは王太子ルカリオに婚約破棄を言い渡されたが、王家によってその出来事はなかったことになり、結婚することになった。 愛する人と別れて王太子の婚約者にさせられたのに本人からは避けされ、それでも結婚させられる。 自分はどこまで王家に振り回されるのだろう。 国王にもルカリオにも呆れ果てたユリアナは、夫となるルカリオを蹴落として、自分が王太女になるために仕掛けた。 実は、ルカリオは王家の血筋ではなくユリアナの公爵家に正統性があるからである。 ユリアナとの結婚を理解していないルカリオを見限り、愛する人との結婚を企んだお話です。

処理中です...