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異母妹の善意

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 こういうことは何度もあった。
 タチアナ異母姉様は「つまらない子」と私を小ばかにする。ある意味こちらの方が害もない。
 でも、セシリアは善意で人の物を滅茶苦茶にする。そして、それをやめてというとお父様は「シシィの優しさが分からないのか!」と憤慨するのはよくあること。
 私の言い分など、聞いてくれないの。
 だけれど、その『優しさ』からくる施しのせいでお母様の形見のブローチをどこかになくされて、代わりにゴテゴテした少女趣味のダサいブローチを寄越された。や
 あれは地味だけれど、一級品のスタールビーだったのに。
 大事な思い出の絵本は、汚いと言われて好みじゃない少女趣味の恋愛小説に本棚の中身を変えられた。
 お母様のドレスを仕立て直したお気に入りのワンピースは「可愛くしてあげる」と言われて、似合わない玉虫色や蛍光色のリボンを付けられた。
 しかも、針子に頼んだのではなくセシリア自らやったのであちこち布が破れて引き攣れて、血の跡が点々と残った。折角の白絹が小汚い布になってしまった。
 お父様は、私とセシリアが泣いていると有無を言わさず私が悪いと決めつける。
 倉庫に反省しているように閉じ込められたことすらあった。
 従僕たちや執事たちやメイドたちから非難轟轟で、挙句お父様の代わりに仕事をやっている家宰すらカンカンに怒って経緯を説明したら渋々出してくれたのは半日後。
 しかも、お父様のお言葉は「シシィには悪気はないんだ」ですって。
 お父様に対する期待が消えて、ますます落ち込んだ。
 しかも、セシリアは泣いていたからって新しいドレスを数着貰っていた。
 こんなことを繰り返しているうちに、お父様はからどんどん使用人たちの心は離れていく。
 こんなこともあり、一見平和に見えるマルベリー家はすべての仕事を回している使用人たちVSお父様と義家族たちという構図。
 お父様は伯爵だけれど、仕事はできないし把握していない伯爵。張りぼて当主。それを何とかしているのは家宰をはじめとする使用人たち。
 古参であり、辺境伯の祖父母からのバックアップのある使用人勢は強かった。
 ルビアナお義母様やタチアナお異母姉様、セシリアだって使用人たちにストライキを起こされたら困る。新しい使用人を雇って、それらに任せて社交場に出て何度か大恥をかいたそう。
 流石にそれで懲りたみたい。




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