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 実は恐々入学してきたけど、やってきたヒロインちゃんは普通にいい子だった。
 ミアナ・リリアンタールはリリアンタール伯爵家に養子入りしたけれど、慣れずに困っている感じだった。あー、庶民ルールと貴族ルールって違うもんね。
 彼女は俺にコスパ最強の美味しいレシピを教えてくれた。しかも、行き倒れているエリーを助けてくれたいい子だった。何か奢るよ、と言ったら「お肉! できればうっすいのじゃなくてガッツリ塊の!!」って。
 可愛らしい女の子なんだが、嗜好は結構ガッツリ系らしい。
 だがそんなもん、王侯貴族基準が染みついた学園の学食にそうそうない。基本、メニューがお貴族向けのお上品なもんばっかだから。
 なのでリクエストにお応えして、スペアリブや漫画肉みたいなのを作ったら大はしゃぎしていた。可愛いなー。うちの妹たちって俺のこと見下して高飛車だからなー。
 ……ガチ目にルッツと肉戦争してなければ、もっと可愛かったんだ。
 ちなみにエリーはすぐに負けて、俺の皿から大人しく盗っていた。ちがくねー?
 まあいいか。いっぱいおあがり。でも野菜も食べなさい。ぷいってしない! 口を開けなさい!




 だが二年に入ると変な女がやってきた。うっわ、テンプレ電波ヒロイン過ぎ? みたいなあざとい感じ。あれだな、ちょっと恋に恋する女の子の持っていた小説そっくり。
 巷というか、平民に流行っているシンデレラ系ロマンス小説だよな。
 実は貴族の隠し子でしたってのが発覚して令嬢デビュー。そこで見初められるシンデレラガールって感じの。えーっと、タイトル何だっけ?

「『星乙女は運命に溺愛される』通称、ホシデキです」

 ちょっとミアナちゃんの出生と被るもんがあるが、ミアナちゃんは恋にキラキラってタイプじゃない。肉にギラギラはしているけど。
 そんな肉天使ミアナちゃんはルッツの恋人になった。解せぬ。俺はエリーとちっともラブラブできていないのに、デリカシーも甲斐性もないルッツに先に春が来るなんて。
 しかも! なんで俺が他所のカップルの弁当作ってんだよ!? アーンしてんじゃねえ! そこのバカップル! エリー! ご飯食べるか寝るかどっちかにしなさい! こぼすぞ!
 その頃、電波ちゃんは兄上たちの婚約者と修羅場っていた。
 おい、あーいうロマンスノベルは娯楽ならいいが、リアルでアウトだ。
 電波ちゃんは俺にも粉掛けてきたけど「俺、王位継承権低いし金ないよ」っていったらすぐ消えた。わかり易い。
 俺に金があると母上が全部使っちまうから、キルシュタイン翁に預けてる。まあ、ほぼほぼエリーのプレゼントにしか使わない。
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