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しおりを挟む「アレは七割強が肋骨ごと締め上げたコルセットと寄せ挙げた胸パットで作り上げた根性鳩胸みたいなもんだ」
「どうしてわかるの?」
「あ? この前、すり寄りすぎて胸が落ちてたぞ」
胸を腕に押し当てすぎて、ズルっとずれたのがポーンとテーブルの上に打ち上げられて紅茶を蹴散らかして落下した。それをみた隣の公爵令嬢と、侯爵子息が「ぐげほっ」ってきたねえマーライオンになった。
つーか、妹のオトコに粉かけるとかどーいう頭と股の緩さなんだ。普通にキルシュタイン翁に怒られてたけど。
俺は一応、外見は気怠いお色気たっぷりのちょい悪王子みたいな方向性になっている。
いや、俺が疲れているのは育児疲れみたいなもんだ。俺をママと呼ぶ婚約者の朝昼晩の飯づくり。アイツ、俺の飯じゃなきゃ食わねえって勢いで食を疎かにしやがる。
「あーっ! お前、またフリルシャツ着てカレーうどん食べただろ!? やめろっていったよな!? 白は止めろっていったよな!? ふりじゃなくやめろって!」
「白のフリルシャツを着てカレーうどんを食べたかったんじゃない。カレーうどんを食べたかった日に、たまたま白のフリルシャツだったんだ!」
「いい話っぽくキメ顔してんじゃねーよ。これ、絶対落ちない奴じゃん……どうすんだよ、これキルシュタインのじじいからの贈り物だろ……」
「王子を信じてます!」
「ぶん投げんな! クッソ、ぜってー落とす!」
メッチャごしごしとんとんした。めっちゃ手が痛い。ルッツがハンドクリーム塗ってくれた。
あれ? 俺の婚約者ってルッツだっけ?
あのカレー染みのせいで、あの汚部屋を掃除できなかった! 何とか布団は干してシーツは洗えたし本の虫干しは出来た。クッソ、アイツなんなの!? 普通ブラとパンツとかのランジェリーは手洗いだろ!? なんで食器洗浄機(開発中)の中に入ってんだよ!?
洗えるって言っても用途ちげーし……あとサイズ違うのつけんな! 垂れるぞ! あと体にも悪い!
キルシュタインのじーさんに愚痴ったら、なんだかすごく微妙な顔された。おめーのとこのお嬢様だぜ?
外見はお美しいお姉様がたの教育の賜物か、メイドすら警戒するエリアーデ。
イライザおねーさまとウェンディおねーさまは、ダメ王子というハズレ籤を引いたはずの末妹が成長した結果セクシー美男子が婚約者なったのが気に食わないらしい。
まあ昔の俺は小汚い黒猫だが、今は黒獅子だからな。
一応ダメ王子路線だから、いつも気だるげに振る舞い服を着崩して遊んでますよアピールはしているけど清童だ。要するにチェリーボーイだ。他所に胤をばらまく趣味はねえ。
最近、飯炊きをしているとエリーとルッツだけでなく、キルシュタイン翁まできやがる。あのジジイ、いい年してピーマンを食いたがらねえ。むかつくからみじん切りしてハンバーグに練りこんで食わせた。たっぷりのデミグラスソースと彩のブロッコリーと人参のグラッセに騙され、気づかないでご機嫌にハンバーグにかじりついている。
バーカバーカ、気づかないで食ってやんの!
後でネタばらししたら、杖をもって追いかけ回して来やがった。あのジジイ、なんであんなに元気なんだよ。だけど家宰のロバーツさんにバレて、二人とも説教。
でも、俺が先に解放された。そして野菜嫌い克服レシピの横流しをお願いされた。あのじーさんの偏食は筋金入りらしい。
エリーも結構偏食だしな……変なところが似ている。
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