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移住候補地

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「あら、どこか伝手があるの?」

「強要ではないのですが、タニキ村なら……。魔物の襲撃でバーチェ村が廃村になり合併したのもあり、村自体も改築新築ラッシュですし、人手は欲しいでしょう。鄙びた村なので土地自体は余っていますし」

 ミリアに問いかけられ、シンは言葉を選びながら答える。領主はパウエルなので、勝手なことを言うのは憚られた。
 人手が足りていないのは事実だ。山村ということを差し引いても過疎化が進んでおり、若者が少ない。若者が出稼ぎに出たまま帰ってこないこともある。
 村の中や、少し離れた場所にはかつては住民がいたはずの廃屋もあるのだ。

「でも、大規模の受け入れは無理ですよ?」

「そうねえ。下手をしたらタニキ村が乗っ取られちゃいそう」

 なんせタニキ村は小さい。数で押し負ける。パウエルは穏やかだが、いざこざが苦手だ。
 力を合わせて困難に立ち向かう気概はあっても、身内で激しく戦い合うのは嫌がりそうだ。

「いざこざ起きそうなら追い出してええんです。なんならテイランに叩き返してやりゃええんです! 受け入れてもらっておいて贅沢な話や! そんな我儘しくさるくらい元気が有り余ってるなら、自力で何とかするやろ。しばらくは兵士さんでも置いて、監視させときゃタニキ村の人たちも安心すると思います。
 血の気の多い若いのばっかじゃなくて、老人子供もおるから暴挙にはそうでんへんはずです」

 すっぱり切り捨てるように言い放つのはビャクヤだ。同じ獣人なのに、テイランに叩き返すなんてひどい良いようだ。
 だが、一人で狐獣人の集落から出て、ティンパインまで遥々やってきたビャクヤ。学園で勉学に励みながらも、冒険者として学費を捻出して生計を立てていた。
 最近、神子付きの聖騎士見習いになり定職ゲット。やっと生活基盤が安定してきたところだ。
若いながらに苦労の多いビャクヤからしてみれば、亡命してきた彼らは甘え過ぎに見えるのだろう。
 正式に受け入れてもらって、その待遇にケチをつけるとは何様だと憤慨している。

「あら、手厳しいのね」

「郷に入れば郷に従うべきです。我儘させたらあきまへん!」

 ふんわり笑っているミリアに、ビャクヤははっきり私見を述べた。

「なんなら、俺が行って説得してきます。全員一緒に面倒見て欲しいってのが甘ったれとる!」

 鼻息荒く宣言したビャクヤは、有言実行とばかりに午後は獣人たちのもとへ行った。
 色々と話し合ったところ、都会の音が気になると訴えていた一部の人だけがタニキ村に移住することになった。
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