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連載
テイランのやらかし、そして余波
しおりを挟むシンはカレーを食べている。具材がゴロッと大きめにカットされた、ボリューミーなビーフカレーだ。
異世界にもカレーがあるのに驚いたが、今更である。テイランのやらかしは酷いが、恩恵もあった。
このカレーもそうだ。日本の定番の味が再現されている。本場のスパイシーさより、まろやかさやコクを重視したとろみのあるカレールー。もちろん白米の上にかけられている。
ふとしたところにシンの故郷の味が発見される。
原因は過去にテイランが乱発した異世界人の召喚。本来なら世界の危機レベルに使われるものを、戦力欲しさに使いまくっていた。今は主神フォルミアルカにより使用できないようにしている。
最後の召喚――シンが召喚された時は、バスに同乗していた全員がまとめて召喚されていた。正確な人数は不明だが、軽く十人はいたはず。
あのように一度に複数人召喚されることが何度もあったのなら、シンが考えているより異世界人の残した文化はたくさんあるのだろう。
(そういえば、ビャクヤの伝手でめんつゆの材料が手に入るかもなんだよな)
あの話はどれくらい進んでいるだろうか。
考えていると、ビャクヤが戻ってくる。手に持っている盆には、たっぷりのレタスと炒めた挽肉がぎっしり入ったパンがあった。
皿の隅にはプチトマトやポテトフライが小山になっている。
「やっぱ手軽に食えるとがええやろ」
そう言って着席すると、大きく口を開けてパンにかぶりついた。
「んぁ!? 人参のピクルス? これは……甘酢やろか? まあ、うん、結構いけるわ」
なかなか好みの味だったらしく、ふわふわと尻尾が揺れている。
次に同じものがあったらシンも頼んでみようかと思うくらいに、ビャクヤは美味しそうに食べている。
「そういえば、ビャクヤの知り合いってこれそう? カツオブシとか作れそうな人」
「ああ、この前の! テイランの王都付近は酷いありさまらしいけど、獣人の集落の被害はそない酷くないらしいで。俺んとこの実家は話ついとるし、その伝手で集めとる最中らしい」
「そっか。まだかかりそうかー」
「主要街道が結構やばいらしい。迂回ルートを探しながら亡命予定なんやて。連絡とっている中にはとっくにテイランに見切りをつけて出てった集落もあるみたいで、その辺の確認が遅れとるんよ」
神罰は王侯貴族の集中砲火なのは予想が付いた。バロスの恩恵を一番受けており、異世界人召喚を一番悪用していたのは上流階級だ。
女神連合も、そちらに怒りが向いていたのだろう。無辜の人々が巻き込まれなかったのは良かった。
それから数日後、テイランからの亡命者が国境沿いで保護されたという連絡を貰った。
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