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連載
温室での奮闘
しおりを挟む温室の中は敵の真っただ中だ。音を立てぬように慎重に扉を開くと、中には土の上に無数のマンドレイクたちが転がっている。
畝の中にお行儀よく収まっているマンドレイクもいるが、それは少数派だ。数が多すぎて地中に潜れなくかったマンドレイクが好き勝手な場所にいる。
魔法の効果で大人しいものだ。それを確認した後、グレゴリオは懐から白い布袋のようなものを取り出す。
「先生、それは?」
レニが質問すると、グレゴリオは頷く。
「これは魔法科で使われている、魔法植物専用の収穫袋だ。マジックバッグだから、見かけより容量がずっと大きい。配布するから、片っ端からマンドレイクを入れるように。とにかく収穫優先で、分別は後だ。では、ここからは別行動! とにかくとるぞ!」
それを合図に、一斉に駆け出す。
全然楽しくない白マンドレイク狩りの始まりだ。
目についた白マンドレイクから掴んでは入れて、掴んでは入れて。
少し移動すれば新たな白マンドレイクがこんにちは状態なので、最初は闘志を燃やしていても、だんだんと目が死んでいく。
「お、終わりが見えない……!」
確かに数は減っている。それなのに、時間が経つにつれて疲労と絶望が増えていく。
「諦めんなやー! シン君がやるって言ったんやでええー!!」
カミーユと協力しながら、自分より大きな白マンドレイクを袋詰めしているビャクヤが吠え猛る。
しかし、二人で白マンドレイクを押していると、袋まで動いて上手に入らない。
将来有望なイケメン二人は、白マンドレイクの豊満ボディに大苦戦。重さに汗だくだ。
それに気づいたレニが、自分の作業を止めて袋を持って入り口を広げて、二人のフォローをする。
「思ったより大変ですね……」
レニも美少女フェイスを土で汚しながら、眉を下げる。
「これ、五人で何とかなるのでござるかー!?」
カミーユが半べそで叫ぶ。誰しもが口に出さなかったが思ったことだが、誰も言わなかった。
温室に入った時点で、薄々感じつつも作業に没頭して現実逃避をしていた。
言ったらなんかダメな気がする。変に空気を読んでしまったのがこの結果。
戦略的撤退も大事かもしれない。今日中にけりをつけるにはあきらめムードが漂い始める。
「……そういや、グレゴリオ先生は?」
ついさっきまで鬼気迫る勢いで、マンドレイク狩りをしていた初老教師がいない。
「どこいったんでしょうか」
「まさか白マンドレイクに襲われとったりはせんやろな」
「いやいや、まさかんそんなわけない……で、ござる?」
普通サイズの白マンドレイクならともかく、成人サイズ越えの白マンドレイクもごろごろしている。それなりに時間も経ったし、魔法が切れ始めるかもしれない。規格外サイズが収穫に抵抗したら、もしもなコトもあり得えるかも――と、皆が不安な想像に駆られる。
四人が揃っているのだから、当然グレゴリオはソロ作業である。
そんな中、のそりと白マンドレイクが寝ぼけ眼で起き上がる。
まだ眠いのか、麻痺が残っているのか、ぎこちなく動き始めた。
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