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デバフは不人気、でも便利
しおりを挟む「麻痺や睡眠なら私も使える。これでもフィールドワークで戦うことがあるからな。この中で使える者はいるか?」
デバフ系の魔法は派手さないため、生徒には不人気だ。ほとんどの生徒は習得しない。
だが、実践においてはかなり有用な手段だ。圧倒的格上や、人数で不利な集団戦にも使える。
ダメもとで四人の生徒に聞くと、驚くことにシンとレニが挙手した。
シンはオウル伯爵家からのお詫び魔導書で習得し、レニは聖騎士として広範囲の魔法を片っ端から覚えていたからだ。
「二人も使えるのか」
期待していなかった分、グレゴリオの声が嬉しそうに弾む。
自分一人でやるか、良くて補助が受けられる程度だと思っていたのだ。
旧温室はそれなりの広さがある。満遍なく魔法を掛けるのは苦労すると思っていたが、これなら何とかなりそうだ。
中には効きが悪い個体もいるかもしれないし、取りこぼしに対応できる人数は多いほうがいい。
グレゴリオが薬による作戦を取らなかったのは、マンドレイクを取りに行く時の危険も考えてだ。ミイラ取りがミイラになり、あの中で倒れてしまってはとても危険である。
白マンドレイクは危険な魔法植物ではない。だが、あれだけ数と大きさが動くとなれば、踏まれたり圧し潰されたりという可能性もある。
「まずは温室を覆う補助の魔法陣を描こう。範囲を指定し、魔力を循環すれば魔力の消耗を押えながら重複効果が期待できる。
「まずは陣の基盤となる円ですか。かなり広範囲になりますね」
基本、魔法陣は円形の中に術式を織り込みながら図案を描くことが多い。
多角形も不可能背はないのだが、一部に力が偏りやすい。円系は安定しており魔力循環を良くするので、ムラなく術を展開できるのだ。
温室の周囲には木や建物が多いので、綺麗な円形を描くのも一苦労だ。レニは早速、難問にぶち当たったように顔を顰めていた。
グレゴリオはレニがちゃんと学んでいることに教師として喜ばしさを感じつつも、首を振る。
「いいや? 紙とペンを使い、魔法を描く。それを拡大し、空から覆う」
「「「「空から?」」」」
グレゴリオはにっこり笑った。生徒たちの目を丸くした表情が、予想以上の反応で面白かったのだろう。
「地上に描くのが一般的だが、何せここは障害物が多い。円が歪になると術が綻びやすいからな」
「あ、あの空に浮かべるとなると消費魔力は……」
「それはかかるが、状態異常は攻撃魔法に比べて魔力消費が少ない。魔法陣は大きさはこそあるが、生物でないし質量も大したことないから意外と簡単なんだ」
レニの疑問に丁寧に答えていくグレゴリオ。
さすが長年教師をしているだけあって、魔法関係の知識は豊富。教えるのだって得意中の得意だ。
彼は説明する間にも、手慣れた手つきでペンを動かす。さらさらと魔法陣を紙の上に描いていく。
教わるレニも新しい知識に、前のめり気味に聞いていた。
「では、早速実践してみようか」
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