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連載
ティンパイン上層会議
しおりを挟む神子に下った神託――それは神子の危機を案ずるものだった。
神子付きの聖騎士レニから聖騎士団長アンジェリカに、アンジェリカから宰相のチェスターに、チェスターから国王にと伝令は一気に玉座まで届いた。
万が一にも初公務で神子を失えば、王家も国も莫大な損害を受ける。
もともとテイランを危険視する声もあった。テイランは神罰による災害で内部は崩壊しているも同然。国王夫妻だって僅かな蓄えで虚勢を張りながらティンパインに来ているようなものだ。
そんな状態のテイランにって、神子は喉から手が出るほど欲しい存在のはず。
当然だがティンパインは認めない。そんな義理もない。
しかしテイランは素知らぬ顔をして救援を求めるついでに神子の身柄も要求しそうな厚顔無恥な連中だ。
近隣国がテイランに攻め込まないのは、いまだにテイラン国土を苛む神罰に巻き込まれたくないからだ。
異常気象は続いているので、進軍したらとばっちりを食らう。
そうでなかったら、テイランの国土はとっくに割譲されて近隣国に吸収されていただろう。
王宮の会議室に、重鎮が集められていた。
お祭り気分も消し飛び、巨大な円卓を囲う錚々たる顔触れには緊張が張り詰めている。
各部門の大臣たちに、要護衛に当たる騎士団長たち、宰相に王子に国王と揃い踏みだ。
「魅了の力ですか。俄かに信じがたいですが、神子様のご神託とあらば看過できませんね」
チェスターは疑う発言をしているが、それは本当に真偽を判断しかねているのではなく、信じたくないという意味合いだった。
魅了と言えば、最近第三王子が酷い精神干渉が発見されて王宮魔術師と聖女が全力を挙げて治療にとりかかっていた。今では完治しているものの、事件としては記憶に新しい。
「きっと、神々は必ずや神子様を守れと仰りたいのでしょう。加護持ちの中でも特に寵愛めでたきお方です」
財務大臣のサモエド伯爵が、顔立ちを険しくさせて言う。
サモエド伯爵はルクスと同じホワイトブロンドに柔和そうな顔立ち。整っているというより、愛嬌がある。それでいて、だいぶ輪郭も恰幅もふくよかである。
彼と皆も意見は同じなのか、首肯するか黙っている。反対意見は出てこない。
神罰だけは食らいたくない。あれだけ大国として猛威を振るっていたテイランはズタボロだ。人の手でどうにかできる域ではない。
「警備を増やしたほうが良いでしょうか? 神子様の公務参加もあり、厳戒態勢を布いてはいますが……」
緊張した面持ちの第二王子のトラディスの発言に首を振ったのは、第一王子のフェルディナンドだった。
「一理ありますが、兵を集中させると危険です。どこで何があろうと、すぐに動かせる待機数は残しておくべきでしょう」
皆の視線は誰がタイミングを合わせたわけでもなく、窓側の一番大きな椅子で座る国王へと向かった。
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