151 / 229
連載
神々とのなれそめ
しおりを挟む「そこでのご縁から気にかけてくれたらしく、他の神々からもご加護をいただいたようなんですよ」
面識のある神々はフォルミアルカと四季の女神姉妹、そして獣神のキマイラだ。
しかもその気に入った理由が、戦神バロスを嵌めて失墜させる策を授けたこと。
ある種の神殺しである。
言えない。絶対に言えない。
実行犯は恨み節が炸裂した女神連合だし、契約をちゃんと確認しなかったバロスも悪い。
唆したのはシンだが「運よく弱体化したらいいな~。生きている間は大人しくしてほしいな~」くらいの考えだった。それがまさかの消滅である。
「……テイラン王国、本当に見る目ないんやな」
ドン引きした顔で、呆れ交じりに本音を漏らすビャクヤ。
今のシンは、どの国も喉から手が出るほど欲しい強力な加護持ちの神子様だ。
「巻き込まれってことは、他にもいたんだろう? 全然噂は聞かないけど」
意外と鋭いところを付いてくるのはティルレインだ。怪訝そうに首を傾げている。
「正確な人数は知らないけど、十人はいたかな? でも、目当ての勇者は召喚事故で死んじゃってたけど」
「事故って? 魔王を打ち倒し、最強と呼ばれる勇者がそう簡単に死ぬとは思えないんだぞぅ?」
「時空やらの狭間でミンチというか、引き裂かれたというか……」
最初からチート爆裂して強かったならともかく、初期の初期は一般人より少し頑丈で強い程度だったのかもしれない。
もしくは、完全に召喚済みの時点で能力付加がされる場合だった可能性もある。
シンは子供になっていたからむしろ能力ダウンだったかもしれない。若さゆえの健康や疲労回復や吸収力の速さはあったが筋力は低下していただろう。
しかも、シンが持つ『成長力』は、時間経過という経験とともに真骨頂を発揮するタイプである。
(そう考えると、子供化との相性はよかったのか? あの幼女女神がそこまで計算したとは思えないけど)
幼く見られることはあったものの、ぎりぎり冒険者登録はできたし、周囲に質問しても不自然でない年齢だったので動きやすかった。
話題から思考がそれ始めていることに気づいて、シンは口を開く。
「フォルミアルカ様によれば、異世界人の召喚は世界と世界に穴を空けるそうなんだ。テイランは異世界人を騙して戦わせようとしていた。戦争兵器目当てだから、やり方が乱雑になっていたと思うよ」
本来、異世界召喚は世界を滅ぼすような魔王を倒すための最終手段。
世界の存続に一縷の望みをかけた大魔法を、戦争を有利に進めるために頻繁に行っていた。
最初はまっとうに使われていたようだが、魔王の危機が過ぎた後は便利魔法扱いされていて、フォルミアルカも頭を抱えていた。
現在は様々な処置を施し、二度と召喚できないようにしてある。
なんかもう対応が遅いとか、今更だとは思う。フォルミアルカ的には、自主的に慎んでほしかったそうだが、テイラン王国は弱肉強食の思想。国力が下がることは絶対しなかった。
シンはティーカップを持ち上げて、一口飲む。
しゃべり続けて喉が渇いていたし、自信を落ち着かせるためでもあった。
紅茶の良し悪しはよくわからないシンでも、高級なお味であると感じられた。
視線だけで周囲を見ると、ティルレインは「へー」とワクワク顔をしている。ルクスは真っ青になってやや挙動不審。多分、上層部へ報告などを考えているのだろう。アンジェリカとレニも驚愕を隠せていない。カミーユとビャクヤは虚無だ。きっと「あの国ならやる」と出身者は分っているのだろう。
「相変わらずだね、あの国は。こっちに逃げてきて正解だよ!!」
深く深く頷き、首肯しすぎて首がもげそうなカリン。
「あの国にそのままいたら、死ぬまで騙されるか、搾取され続けるからね!」
「カリンさんは聖女様ですからヒーラー要員ですか?」
「そうだよ! 私が治せば不死身の戦団ができるとか笑ってたんだ! あそこの王族はゴミクズさ!」
嫌なことを思い出して憤慨しているカリン。
シンはすぐにテイラン王国を出たが、カリンは長く滞在していたようだ。
『聖女カリン』は、利用価値があるものだったのだろう。
騙されて引き止められていた可能性も十分あった。
1,658
お気に入りに追加
30,791
あなたにおすすめの小説
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
妹がいなくなった
アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。
メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。
お父様とお母様の泣き声が聞こえる。
「うるさくて寝ていられないわ」
妹は我が家の宝。
お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。
妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
お姉ちゃん今回も我慢してくれる?
あんころもちです
恋愛
「マリィはお姉ちゃんだろ! 妹のリリィにそのおもちゃ譲りなさい!」
「マリィ君は双子の姉なんだろ? 妹のリリィが困っているなら手伝ってやれよ」
「マリィ? いやいや無理だよ。妹のリリィの方が断然可愛いから結婚するならリリィだろ〜」
私が欲しいものをお姉ちゃんが持っていたら全部貰っていた。
代わりにいらないものは全部押し付けて、お姉ちゃんにプレゼントしてあげていた。
お姉ちゃんの婚約者様も貰ったけど、お姉ちゃんは更に位の高い公爵様との婚約が決まったらしい。
ねぇねぇお姉ちゃん公爵様も私にちょうだい?
お姉ちゃんなんだから何でも譲ってくれるよね?
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。