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連載
貸し借りの考え方は人それぞれ
しおりを挟む「醤油……無かったら魚醤で耐えます」
トーンダウンしたシンは、明らかに落ち込んでいる。
ないと思っていた時なら平気だった。一度めんつゆを手にしてしまった以上、抗えない魅力がある。味もそうだが、便利さにおいても素晴らしいのだ。
「……もしかしたら、俺んとこの実家なら手に入れられるかもしれへん」
「え? 本当? ビャクヤの実家で作っているの?」
差し込んだ希望の光に、シンはすぐさま反応した。
顎に手を当てて思案するビャクヤは、言葉を選んで発言をした。ぬか喜びさせるのもかわいそうだと、彼なりの配慮である。
「めんつゆは俺んとこは作っとらんけど、獣人亜人は独自のネットワークがあるんや。テイランの王侯貴族につかんと、他所に落ち着いた異世界人の知識は色んなところに散らばっとる。連絡を取れば、職人をティンパインに呼び込めるかもしれへん」
「故郷を離れて?」
「今のテイランはヤバのヤバやろ? 最初から獣人亜人には厳しい場所やし、就職先付きで大手を振って安全地帯に行けるならアリやろ」
そういえばそうだ。
ティンパインは平和そのものだが、美しくとも恐ろしい女神連合による神罰は猛威を振るっている。
バロスの加護を失い、今までのしっぺ返しを食らっているテイランは天災が起こりまくり、隣国には難民や亡命希望者が殺到していた。
「……僕の一存でできることじゃないじゃん」
「何いうてんの。今、加護持ちの価値は爆上がり中やで? 宰相宅での扱いもそうやけど、シン君のめっずらしいお願いならOKやろ」
「えー、なんか後で請求されそうで嫌だ」
にやりした悪巧みの笑みを浮かべて調子が良いことを言うビャクヤに対し、シンの表情は苦々しい。
警戒心が顔に出ている彼を見て、ルクスが慌ててフォローをする。
「シ、シン君。きっと陛下や宰相閣下はそんなことなさいません! ただでさえ、こちらがお世話になって、ティンパイン公式神子になってもらっているのに!」
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