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ビャクヤの悩み
しおりを挟む「大粒ですね! これは見栄えがするのでジャムやソースにするより、タルトやケーキの上にあったら素敵~!」
職員はホクホク顔で計量し、十万ゴルドで引き取ってもらえた。
シンはぎょっとしたが「このベリー類は、この辺りではとっくに旬が終わって採れないんです」と理由を説明してくれた。
これだけの大きさの粒と量をそろえるのは難しいらしい。
そういえば、夏休みの初めあたりに収穫した分だ。
劣化しない異空間バッグに保存していたので、摘みたての鮮度で見るからに色艶も良いのが高評価のポイントになったようだ。
それにタニキ村は標高が高いので、若干涼しい。熟れる時期も遅れ、旬の初めの特に美味しいベリーだ。
「小粒なら多少……ってところですね。甘くて美味しいから鳥や動物にあっという間に食べられちゃうんです」
「確かに目敏いですからね」
どこから見つけてくるのか、熟れた瞬間にかっさらっていくのだ。
シンの育てていた野菜も、鳥や昆虫にやられたことがある。
レニと一緒に苦労して対策を考えたものだ。学園の温室の小さな穴をどこからか見つけて鳥は侵入するし、虫は何時の間にかくっついている。
(あ、そうだ。少しレニのお土産にとっとこう)
レニは果物が好きだし、異空間バッグにはまだ在庫がある。
ギルド職員に冒険者カードを渡して以来達成の手続きをする。継続して引き受けているが、今のところクレームが入ったことはないし実入りはいいし美味しい依頼である。
(特に珍しいとは思わないけど……うーん、プロの視線はわからない)
シンは気づいていないが、冒険者の採取品は結構傷物が多い。
基本的に荒くれ者が多いし、奇麗なものを納品する意識がシンより低いのだ。
食品には生ものも少なくない。鮮度が良く、傷の少ないものが歓迎される。慎重で丁寧な扱いが求められる。
薬草の採取依頼をはじめ、高品質な納品の多いシンだから任せられるのだ。
まめな日本人らしい気質の表れだが、シンにとってはデフォルトである――が、この世界ではかなり几帳面といえる。
当然のことをしただけなのにお金を一杯もらえた。
シンは嬉しいけどちょっと後ろめたいような気後れするような感情を持ちつつ、取引を終えるのだった。
「お待たせ。なんかいい依頼あった?」
「うーん、手堅いところでボアやな」
「そろそろランクアップしたいところでござるが、難しいでござる」
ビャクヤとカミーユは腕組をしながら、微妙な顔だ。
護衛とは別に冒険者業も続ける気満々の二人。シンはすでにCランクだし、二人も追いつきたいところだがなかなか昇格しない現状である。
「お前はええやん。ちょっと前に上がったやろ」
特にビャクヤはランクを気にしていた。長らくEランクのまま停滞しているのだ。夏休み中にランクアップしたカミーユに追いつかれてしまったし、伸び悩んでいる。
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