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雇用説明はお食事とともに

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 止まることなく皿の上の料理が無くなっていく。三人の堂々たる食べっぷりにミリアは嬉しそうだ。
 最初は緊張していたが、美味しい料理に舌鼓を打つうちにすっかり夢中になっている。
 それが可愛らしく、拙さや若さを感じられた。
 何気に三人ともマナーが良いのも高評価だ。美味しそうに食べつつも、がっついてガチャガチャ食器の音を鳴らしたり、大きな咀嚼音を立てたりしない。


「三人も若い子がいるなんて、にぎやかになりそうね~」

 うきうきしながら言ったミリアに、スープを口から噴きかけるビャクヤ。

「あの、ドーベルマン夫人。僕らもええんですか?」

「大丈夫、大丈夫。お部屋ならいっぱいあるわよ~。ついでにちゃっちゃと貴方たちの聖騎士にするために手続きしなきゃ」

 久方に現れたティンパイン公式神子の護衛に、元他国――しかもテイラン王国出身者を雇用することに対しては問題ないのだろうか。
 ビャクヤは少し心配したが、シンを見て考えを改めた。
 我儘ではないが頑固なところがあるシン。ティンパイン側が一方的に押し付けた護衛を素直に受け入れる気がしない。
 人となりを納得すれば受け入れるだろうけれど、シンは心の壁は結構厚い。
 しかも目立つのは嫌いだから、不自然に年の離れた屈強な護衛をつけられるのは嫌がるだろう。

「あ、そうそう。これが契約書で、ここが使用期間中のお給料ね。これが本採用後のお給料。使用期間は三か月で、守秘義務とか細かいのは後ろに書いてあるから、後で確認してね」

 壮年の執事から冊子を受け取ると、それをぱらぱらとめくって説明するミリア。
 カラーンと銀食器が落ちる音がした。ビャクヤの手から、スプーンが落ちたのだ。
「おきゅ、試用期間で二十万ゴルド!?」

「もごおごおおおー!?」

 頬袋いっぱいに肉を詰めたカミーユが言語にならない雄たけびを上げている。

「これでも安いくらいなんだけれど、採用後は当然もっとアップするわよ? あと、貴方たちにどれくらい教養があるかで価値も変わるから、ちゃんと勉強しなさい。ティンパイン公式神子は王族相当の身分なの。会談とか、各国の要人がいる場所に連れていけないと困るもの」

 ビャクヤは頬を紅潮させて、嬉しそうに首肯している。だが、隣のカミーユは真っ青な顔をしてそうっと視線をそらした。
 座学の授業にも俄然やる気をだしているビャクヤに対し、現状でもぎりぎりのカミーユは渋い表情だ。
 二人のベクトルは違うが、わかりやすい態度である。

「いい? 騎士は長物をぶん回していればいい脳筋なだけじゃダメなのよ?」

 ミリアは笑顔だが、凄まじい圧がある。
 そして、その言葉にはどんな含蓄のある言葉より重かった。
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