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連載
飼い主の心、馬知らず
しおりを挟む朝になり、厩舎の掃除をしに来たビャクヤ。
シンとカミーユは畑の手入れや朝ごはんの用意をしている。
主人以外には高圧的なグラスゴーだが、ビャクヤに対して横柄さはあるものの、敵意剥き出しなわけではない。
無暗に触り、近づこうとしなければ安全である。
「ん?」
厩舎の掃除中は、馬房から二頭を出す。入り口には普段、木の板で外に出られないようにしてある。それが若干ずれていたのだ。
(変やな。少し偏っとる)
そう思いながら板を取り外し、二頭を庭に出す。
二頭とも賢いので、この程度の板は自分で取り外し位できる。だが、シンの住居と近いこの厩舎を気に入っているので脱走などしない。
(カミーユの奴か? アイツ、ずぼらやからな。飯で呼ばれると農具とかもほっぽることあるしな)
ちなみに、野ざらしになった農具を家主に見つかると怒られて片付け+αを命じられる。
きっとガサツなカミーユの仕業だろうと見当をつけたビャクヤ。しれっとした顔で外に出たグラスゴーの蹄の裏に、やけに真っ黒な土がついていたことなど気が付かない。
「ふぁあ……今日もええ天気になりそうやねぇ」
朝の眠気をかみ殺しながら、馬房の藁の交換に取り掛かるのだった。
グラスゴーに弄ばれた兵士ことセドリックが保護されてすでに三日経過した。
今のところ、タニキ村は平和である。
シンのポーションによるチート栽培法により、夏野菜や香草や薬草などでたくさん採れる。塩の備蓄はまだあるし、村の井戸も枯れていないので水不足などもない。
ブラッドウルフはたまにちらほらと姿を見せるものの、襲撃を仕掛ける気配はなかった。
警戒しているように、うろうろとしているがどこか怯えている節がある。
「この前、シンのとこの馬にボコボコにされたからじゃねー?」
「一回じゃないですか。そもそも無駄にしつこさに定評がある、食欲的なガッツのあるブラッドウルフが怯えるとかあるんですか?」
櫓の上からハレッシュが言えば、シンは反論する。
シンからすれば、あんな心臓に悪い光景は二度と見たくない。ついでに言えば、悪童丸出しみたいな煽り癖や、脱走癖も覚えて欲しくなかった。
「グラスゴーだけじゃなく、そのうちピコまで盗んだバイクならぬ人を盗んで走り出す様にならなきゃいいけど……!」
不本意ながら、あの時のグラスゴーはとても楽しそうだった。
必死に食らいつこうとする狼たちを千切っては投げ千切っては投げと言わんばかりに蹴り飛ばし、おちょくっていた。
「あーもう! 本当に狼どもがさっさとどこかに行けばいいのに! 遠乗りは難しくても、狩りに連れて行けばそんなにストレスもたまらないはずなのに!」
ちなみにシンの言う狩りは魔物や獣とバトルが付いてくる山登りコースなのでかなりハードである。
唸りながらシンは櫓の柱に頭を付けて項垂れる。
その時、項がチリッと焦げ付くような違和感を覚えた。本能的な何かを察し、顔を上げる。
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