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連載
説明、求む
しおりを挟むカミーユは串に刺さったまま肉に齧り付き、ビャクヤは熱すぎて食べれないと箸で取り外しながらゆっくりと咀嚼する。
どっちが貴族子弟だ川かりゃしない光景である。
やっと話ができるまで精神が回復した二人に、シンは改めて聞く。
「で、なんかあったの?」
「ピコちゃんがピコさんやった」
「某の序列がますます下がったでござる」
カッと眼光鋭く二人は言うが、言っていることはとても情けない。
シンの二人を見る目が、非常に憐れむような呆れるような微妙なものとなる。
「え? いつからピコより上だと錯覚していたんだ?」
シンの中では大事な騎獣たちの方が、優先順位が上である。
魔馬たちはシンが庇護するべき存在であり、二人は学友――ただしちょっと面倒くさい――と注釈が付く。まだ若いが善悪の区別のつかない年齢でもないので、自分の尻は自分で拭えと常々思っている。主にカミーユは色々と物申したいところだ。
シンが半分冗談、半分本気であるがマジトーンで言ったものだから、騎士科コンビはショックを受ける。わあっと泣き喚き始めた。
「酷い! 酷いわシン君! ウチらのこと弄んだん!?」
「信じていたのに! この人でなしー!」
ギャアギャアとゴミ捨て場で残飯を奪い合うカラスのように煩く姦しく喚く二人。
シンは心底鬱陶しそうにカマ化しながら責め立ててくる同級生を見た。その視線の冷たさに、二人は「下手打った」と今更気付く。
「その言葉、現実にしてあげることもできるけど?」
家主様の強権を見縊るんじゃねぇ、と副音声が聞こえた。
余計な茶化しは悪手だと気づいた二人は、今更ながらに自分の知る限り、最高の非礼の詫び方をする。別名DOGEZAスタイルである。
「悪乗りし過ぎました。ごめんなさい」
カミーユが改まってござる口調を放り投げて、堅苦しい勢いで頭を下げる。
「伏してお詫び申し上げます」
同じように綺麗に指を揃えて平伏すビャクヤ。
二人はシンに追い出されたら野宿かタニキ村の少ない民宿に泊まるしかない。
当然、お金を取るか質を取るかという選択を迫られる。そして、基本温厚だとタニキ村の人々に認識されているシンに叩き出された自分たちがどんな目で見られるかとか考えたくない。
タダの謝罪で回避できるなら、安いものである。プライドでは腹が膨れないし、安眠も保障されない。二人はその辺の考えはシビアだった。
「ふざけるのも程々にしてよね。で? ちゃんと僕に分かるように説明して」
嘆息しながらシンが言う。先ほどの冷然とした視線は無くなったから、怒りの矛を収めてくれたようである。
ちょっとおふざけが過ぎた。ほっと胸をなでおろした二人は、ちゃんと今日の出来事を語りだす。
「ピコが滅茶苦茶強かったでござる! 角からビリビリしたのが出て狼たちをゴッシャーしたでござる!」
カミーユが一生懸命身振り手振りで説明しようとするが、内容が完全に小学校低学年と同レベルである。
シンは非常ではなかったので、その努力だけは認めた。うんうんと頷いて――だが、それ以上明細に聞く気はなかった。潔くカミーユから聞き出すのは諦め、ビャクヤの方に向き直る。
「簡潔に」
ビャクヤは同級生の残念な説明に頭痛がしそうな顔である。シンの説明の再要求に然もありなんと頷いた。
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