そっと推しを見守りたい

藤森フクロウ

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ストーカーと宗教③

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 その夜、アヤネコはドートの夢に入ります。
 奴は今宵も年端もいかない未成年相手に酒池肉林を夢でも現実でも外道なパーリーナイトフィーバーしていました。
 うむ、酌量の余地なし。
 一応神様に聞いた。アンタを祭っているらしい聖職者が腐ってんだけど、しばいていいかと。
 神様は「やれ!! 徹底的にやれ!!」と強めのゴーサインをくれた。よし、御上のお許しは得た。そもそも、神様的にはそんな名前だけ使われて悪行をされると、逆に名誉棄損なんやてー。うん、確かに。


『ドートよ、聞こえますか。私は神の使いです』

「は? はー? どうみてもヌッコ……例の邪教か!」

『私は神使です。貴方には選ぶ権利があります。
 若いからだと美しい容姿、そして悪を倒す力を上げましょう。
 世の悪をくじき、弱きを助けるのです。そのために必要な力をあげましょう……」

「若さと美貌……!?」

 そこくいつくんかーい! まあ見てくれコンプレックスでもあったのかな、ガマガエルだし。
 でも痩せればだいぶましになるのでは? 努力の形跡は見えないけど。

『神の力をほんの一部ですが、差し上げましょう。ですがいきなりは大変かと思うので、まずは半年です。
 貴方の人生にときめきと情熱と、青春のきらめきを……』

「く、くれ! おお! 神よ感謝します! ワシの努力は報われたのだ……っ!
 ワシは田舎の司祭などという閑職に収まる器ではないのだ! フハハハハ! やった! やったぞー!」

 夢の中だからってはっちゃけすぎじゃねーか、この色爺。
 お前のやってることは貴族から金を巻き上げて不憫な少年少女を食い漁っているだけじゃねーか。
 神のギフトという名の力を上げると、ドートは大喜びして跳ねまわっていた。








 ドートは頭を抱えていた。
 傍に居る小姓は、生ぬるいような憐れむような視線をドートへ向けていた。
 小姓としてドートに仕えていた少年は、いち早く彼の異変――という名の天罰を知った一人である。

(おお、神よ。貴方はおわしたのですね……私の横暴な振る舞いを見ていたのですね)

 ドートを乗せた馬車の目の前で茶番が繰り広げられていた。

「ようよう、お姉ちゃん可愛いねー! ちょっと遊ぼうぜ!」

「きゃっ! やめてください!」

「きゃーだって、カーワイー。ほらこっち行こうぜ? 俺たちと楽しいことしようぜー?」

「いやーっ、だれかーっ」

 ドートはふぐぅ、と呻いてカーテンのきっちりと閉まった馬車に乗り込む。そして、きっちりと馬車の入り口を締めた。

 そして、数十秒後。

 現れたのはパステルグリーンのふわふわヘアーと純白の修道女風の衣装。胸にはロザリオと、華奢な肩を包むパフスリーブとふんわりと広がったミニスカート。裾から幾重にも重なったパニエとペチコート。
 うるうると羞恥で潤んだ瞳は円らであった。長い睫毛にほんのり雫が乗り、赤く染まった頬と目元が可憐だった。小作りな鼻とぷっくりとしたチェリーのような唇が何とも可愛らしい。
 文句なく美少女だった。
 十代前半の少女は華奢な足を包む編み上げブーツをもぞもぞとすり合わせている。

「うう……なんで、なんでワシがこんな姿に……」

「ご自身が若さと美しい容姿が欲しいなどといったからだと思います」

 達観した表情で小姓の少年は言う。
 いやじゃーっと喚くドートを不良と女性の前に突き出そうとする。

「解決しないと戻れませんよ。頑張ってください『プリンセス☩シスター・ハピネスエメロード』様」

「ええい! その名で呼ぶでない!」

「いや、どうせ不良に『なんだてめーは』とか言われたら条件反射でポーズ付きで名乗っちゃうんでしょう? さあ、さっさと行きましょう。普通に行けば馬車で10分の距離ですけど、毎度トラブルに巻き込まれるせいで一時間じゃたりないんですよ。
 巻いていきましょう、巻いて」

「おのれーっ!」

「早く行かないと『ラッキースケベ』が起こってまた赤っ恥かきますよ。
 つーか、まごついているとここ最近エメロードにご執心の商家の息子がまたすっとんできますよ? それとも騎士見習いが先ですかね? 領主の次男坊? 純潔が守られるといいですね」

「うわああああん! そこの悪者! やめなさーい!」






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