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ストーカー、恋する乙女を応援する②
しおりを挟むメルローズ嬢は自棄酒ならぬ自棄茶をしていた。
メイドに泣きながら「フェリド様が浮気をなさっている。他の女の影がありますわ!」と騒いでいる。
恋する女の勘は侮れないものだ。
フェリドがそれとなくメルローズをリヴサーラたん寄りにしようとしていることに気づいたようだ。
そーいや、フェリド恋愛シミュレーションへたくそだったな。あれか。政略的に駒を動かすことは得意でも、私情や感情が絡むと途端にドヘタになるタイプか。
「わたくしに魅力がないから……っ! フェリド様の御心はリヴサーラなどというどこの者とも知れない女に取られたの……っ!?」
おーっと! メルローズにヤンデレフラグが立ちそうだ!
つーか、ロイヤル皇子うっかりリヴサーラたんの名前をこぼしたな! 馬鹿め!
メルローズはずっと自分を追い詰めてまで努力をしていた。才色兼備の天才肌のフェリドの隣に立とうと、優秀とは言え努力の秀才タイプのメルローズにはなかなかに難しい。
アヤネコとしては、あの人の心の分からないアホにお腹を捌いてもかまわんのだよ? と言ってやりたいが、あいつ一応王位継承権一位なんだよね。回りに回って推しに迷惑かかったら困る。
あれか? メルローズに心の浮気相手ことリヴサーラたんを超える自信を付けさせればいいんか?
アヤネコは考えました。
現実にいるならともかく、リヴサーラは二次元の令嬢だ。フェリドはリヴサーラたん推しだが、その辺の区別はついている。だからこそ、夢の中で思い切りだらけている。
最近じゃ、名前入りのゼッケンの体操服と小豆色ジャージの糞ダサコラボさえ受け入れているだらけっぷりだ。ちなみに奴はしっかりシャツはズボンにINタイプだ。糞ダセエ。
それは置いておいて!
ここはメルローズ嬢自体の自信が問題だ。
ゲームではヒロインの自信とかはテスト結果とかイベント結果。要はパラメータの高さだよね。
そもそもメルローズは生粋のご令嬢で基本パラメータも相当高いはず。本人努力家だし。
王宮や社交界の噂をかき集めたけど妬み嫉みは多いけど、それは彼女の淑女としての振る舞いや家柄に対する羨望の裏返し。
要は彼女の内面だ。
ゲームで云えば魅力とか? その辺か?
その辺の数値って社交やお洒落をすることによって上げるってやつだよな。あとはアルバイト……
魅力特化ってなんだっけな。ぽちぽちと神様からもらっている某電子端末に似たもので調べると出てきた。
『アイドル活動』
魅力があがり、裏パラメータの度胸、自信が上がる。
だが初期の収入は非常に低い上、費用が掛かる。
………
……………
私の中で一人の令嬢のプライドと良心、推しの安全という天秤が生まれた。しかし、一瞬のうちに推しへと傾く。
アヤネコの一番は不動の推し。
すまぬ、メルローズ。だが魅力がアップするように尽力するよ。
彼女の夢に現れて、霊験あらたかそうな後光を背負ってアドバイス。まあ、わしの姿は相変わらず潰れまんじゅうなんだけどな!
『アイドルです……アイドルになるのです、メルローズ。
そうすれば貴女の愛しい人は貴女のことを見るようになるでしょう』
公爵令嬢アイドル『ロイヤル☆ラヴァーズ・リヴサーラ』の爆誕の瞬間だった。
フィアンセでもいいけれど、アイドル的な印象がそっちの方がいいのでラヴァーズになったらしい。
なぜメルローズ嬢がリヴサーラという源氏名というか芸能名を使っているかといえば、フェリドの中にいる『最愛のリヴサーラ』という存在を自分が上回ってやるという向上心と野心からだった。
舞台用のメイクで顔立ちをきつめなほどしっかりと、さらに髪の毛を大きくドリッと巻き、そしてアイドルらしく大きなリボンや派手な色の衣装を纏うようになったメルローズ嬢改めリヴサーラ。
活動をし始めてひと月もしないうちに、どこから嗅ぎ付けたのかロイヤルオタが最前列でオタ芸をして応援をし出す。
なんか魔石で一生懸命ちまちま作っている気配がしたけど、才能の無駄使い。魔石のペンライトとLOVE♡リヴサーラのハチマキと法被が戦闘服のロイヤルオタ。
しかし、リヴサーラたんはトップアイドルの階段を突如現れた彗星ごとく颯爽と駆け上がる。そんなリヴサーラたんのあらゆるライブやイベントを追いかけるリヴサーラたんファンクラブ永久名誉会長F。
ちなみにメルローズは瓶底眼鏡にボサ髪のヤベーキレッキレのオタ芸野郎が自分の愛する婚約者とは知らない。
……何故だろう。
余計に大惨事になっている気がする。
アヤネコは円満な婚約者同士になって欲しいと願っただけのはずなのに。
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