14 / 29
ストーカー、恋する乙女を応援する②
しおりを挟むメルローズ嬢は自棄酒ならぬ自棄茶をしていた。
メイドに泣きながら「フェリド様が浮気をなさっている。他の女の影がありますわ!」と騒いでいる。
恋する女の勘は侮れないものだ。
フェリドがそれとなくメルローズをリヴサーラたん寄りにしようとしていることに気づいたようだ。
そーいや、フェリド恋愛シミュレーションへたくそだったな。あれか。政略的に駒を動かすことは得意でも、私情や感情が絡むと途端にドヘタになるタイプか。
「わたくしに魅力がないから……っ! フェリド様の御心はリヴサーラなどというどこの者とも知れない女に取られたの……っ!?」
おーっと! メルローズにヤンデレフラグが立ちそうだ!
つーか、ロイヤル皇子うっかりリヴサーラたんの名前をこぼしたな! 馬鹿め!
メルローズはずっと自分を追い詰めてまで努力をしていた。才色兼備の天才肌のフェリドの隣に立とうと、優秀とは言え努力の秀才タイプのメルローズにはなかなかに難しい。
アヤネコとしては、あの人の心の分からないアホにお腹を捌いてもかまわんのだよ? と言ってやりたいが、あいつ一応王位継承権一位なんだよね。回りに回って推しに迷惑かかったら困る。
あれか? メルローズに心の浮気相手ことリヴサーラたんを超える自信を付けさせればいいんか?
アヤネコは考えました。
現実にいるならともかく、リヴサーラは二次元の令嬢だ。フェリドはリヴサーラたん推しだが、その辺の区別はついている。だからこそ、夢の中で思い切りだらけている。
最近じゃ、名前入りのゼッケンの体操服と小豆色ジャージの糞ダサコラボさえ受け入れているだらけっぷりだ。ちなみに奴はしっかりシャツはズボンにINタイプだ。糞ダセエ。
それは置いておいて!
ここはメルローズ嬢自体の自信が問題だ。
ゲームではヒロインの自信とかはテスト結果とかイベント結果。要はパラメータの高さだよね。
そもそもメルローズは生粋のご令嬢で基本パラメータも相当高いはず。本人努力家だし。
王宮や社交界の噂をかき集めたけど妬み嫉みは多いけど、それは彼女の淑女としての振る舞いや家柄に対する羨望の裏返し。
要は彼女の内面だ。
ゲームで云えば魅力とか? その辺か?
その辺の数値って社交やお洒落をすることによって上げるってやつだよな。あとはアルバイト……
魅力特化ってなんだっけな。ぽちぽちと神様からもらっている某電子端末に似たもので調べると出てきた。
『アイドル活動』
魅力があがり、裏パラメータの度胸、自信が上がる。
だが初期の収入は非常に低い上、費用が掛かる。
………
……………
私の中で一人の令嬢のプライドと良心、推しの安全という天秤が生まれた。しかし、一瞬のうちに推しへと傾く。
アヤネコの一番は不動の推し。
すまぬ、メルローズ。だが魅力がアップするように尽力するよ。
彼女の夢に現れて、霊験あらたかそうな後光を背負ってアドバイス。まあ、わしの姿は相変わらず潰れまんじゅうなんだけどな!
『アイドルです……アイドルになるのです、メルローズ。
そうすれば貴女の愛しい人は貴女のことを見るようになるでしょう』
公爵令嬢アイドル『ロイヤル☆ラヴァーズ・リヴサーラ』の爆誕の瞬間だった。
フィアンセでもいいけれど、アイドル的な印象がそっちの方がいいのでラヴァーズになったらしい。
なぜメルローズ嬢がリヴサーラという源氏名というか芸能名を使っているかといえば、フェリドの中にいる『最愛のリヴサーラ』という存在を自分が上回ってやるという向上心と野心からだった。
舞台用のメイクで顔立ちをきつめなほどしっかりと、さらに髪の毛を大きくドリッと巻き、そしてアイドルらしく大きなリボンや派手な色の衣装を纏うようになったメルローズ嬢改めリヴサーラ。
活動をし始めてひと月もしないうちに、どこから嗅ぎ付けたのかロイヤルオタが最前列でオタ芸をして応援をし出す。
なんか魔石で一生懸命ちまちま作っている気配がしたけど、才能の無駄使い。魔石のペンライトとLOVE♡リヴサーラのハチマキと法被が戦闘服のロイヤルオタ。
しかし、リヴサーラたんはトップアイドルの階段を突如現れた彗星ごとく颯爽と駆け上がる。そんなリヴサーラたんのあらゆるライブやイベントを追いかけるリヴサーラたんファンクラブ永久名誉会長F。
ちなみにメルローズは瓶底眼鏡にボサ髪のヤベーキレッキレのオタ芸野郎が自分の愛する婚約者とは知らない。
……何故だろう。
余計に大惨事になっている気がする。
アヤネコは円満な婚約者同士になって欲しいと願っただけのはずなのに。
36
お気に入りに追加
668
あなたにおすすめの小説
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
悪役令嬢にざまぁされた王子のその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
王子アルフレッドは、婚約者である侯爵令嬢レティシアに窃盗の濡れ衣を着せ陥れようとした罪で父王から廃嫡を言い渡され、国外に追放された。
その後、炭鉱の町で鉱夫として働くアルフレッドは反省するどころかレティシアや彼女の味方をした弟への恨みを募らせていく。
そんなある日、アルフレッドは行く当てのない訳ありの少女マリエルを拾う。
マリエルを養子として迎え、共に生活するうちにアルフレッドはやがて自身の過去の過ちを猛省するようになり改心していった。
人生がいい方向に変わったように見えたが……平穏な生活は長く続かず、事態は思わぬ方向へ動き出したのだった。
悪役令嬢の独壇場
あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。
彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。
自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。
正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。
ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。
そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。
あら?これは、何かがおかしいですね。
私を裏切った相手とは関わるつもりはありません
みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。
未来を変えるために行動をする
1度裏切った相手とは関わらないように過ごす
魔道具作ってたら断罪回避できてたわw
かぜかおる
ファンタジー
転生して魔法があったからそっちを楽しんで生きてます!
って、あれまあ私悪役令嬢だったんですか(笑)
フワッと設定、ざまあなし、落ちなし、軽〜く読んでくださいな。
糞ゲーと言われた乙女ゲームの悪役令嬢(末席)に生まれ変わったようですが、私は断罪されずに済みました。
メカ喜楽直人
ファンタジー
物心ついた時にはヴァリは前世の記憶を持っていることに気が付いていた。国の名前や自身の家名がちょっとダジャレっぽいなとは思っていたものの特に記憶にあるでなし、中央貴族とは縁もなく、のんきに田舎暮らしを満喫していた。
だが、領地を襲った大嵐により背負った借金のカタとして、准男爵家の嫡男と婚約することになる。
──その時、ようやく気が付いたのだ。自分が神絵師の無駄遣いとして有名なキング・オブ・糞ゲー(乙女ゲーム部門)の世界に生まれ変わっていたことを。
しかも私、ヒロインがもの凄い物好きだったら悪役令嬢になっちゃうんですけど?!
当て馬の悪役令嬢に転生したけど、王子達の婚約破棄ルートから脱出できました。推しのモブに溺愛されて、自由気ままに暮らします。
可児 うさこ
恋愛
生前にやりこんだ乙女ゲームの悪役令嬢に転生した。しかも全ルートで王子達に婚約破棄されて処刑される、当て馬令嬢だった。王子達と遭遇しないためにイベントを回避して引きこもっていたが、ある日、王子達が結婚したと聞いた。「よっしゃ!さよなら、クソゲー!」私は家を出て、向かいに住む推しのモブに会いに行った。モブは私を溺愛してくれて、何でも願いを叶えてくれた。幸せな日々を過ごす中、姉が書いた攻略本を見つけてしまった。モブは最強の魔術師だったらしい。え、裏ルートなんてあったの?あと、なぜか王子達が押し寄せてくるんですけど!?
家族内ランクE~とある乙女ゲー悪役令嬢、市民堕ちで逃亡します~
りう
ファンタジー
「国王から、正式に婚約を破棄する旨の連絡を受けた。
ユーフェミア、お前には二つの選択肢がある。
我が領地の中で、人の通わぬ屋敷にて静かに余生を送るか、我が一族と縁を切り、平民の身に堕ちるか。
――どちらにしろ、恥を晒して生き続けることには変わりないが」
乙女ゲーの悪役令嬢に転生したユーフェミア。
「はい、では平民になります」
虐待に気づかない最低ランクに格付けの家族から、逃げ出します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる