そっと推しを見守りたい

藤森フクロウ

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ストーカー、同類を生む①

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 アヤネコのモットーは推しの役に立つこと。
 影ながら全力で推しを愛で、慈しみ、サポートをするのが生きがいにしてライフワーク。
 思いのたけが滾りすぎて、軽率にドラゴンをうっかり殴り殺すこともあるけれど、基本は平和主義です。


 私が思うに、推しは賢くて家族思いなのにクールで時に偽悪的に振舞うけれど、根は結構善良な方だと思うの。
 性格のヤバさなら推しのきょうだいたちのほうがよっぽどヤベー。
 なんでもできちゃうオールラウンダーな天才肌の第一皇子。
 家柄、血筋、教養、知能、美貌、魔法、身体能力などなど様々にハイスペック。
 母親は超名門貴族、婚約者は公爵令嬢。皇帝陛下からも目を掛けられて、将来を有望視されている。
 だけど恵まれまくったそのせいで何にも執着心がなく、自分の命にも実は祖国や玉座にも大して興味も関心もない。
 ヒロインのルートによっては遥か昔勇者が賢者や聖女らの仲間と封印した異界の扉をぶち抜いてしまったりする。しかもその理由というのが、彼にとってこの世界が詰まんないから。
 とんだクレイジーサイコパス野郎である。
 そんなん他所でやれ。推しに迷惑かからないなら、別に国が亡ぼうと大陸爆散しようが構わない。推しに迷惑の掛からない場所でやってくれ。

 ………今なら性格とか矯正できるのかな?

 いや、三つ子の魂なんとやらと云います。
 ちなみにそのサイコパス皇子の名はフェリド・エル・ダルシア。
 確か推しより10~12位年上だから、二十代前半だよな。
 もう人格というか、性格出来上がってるんじゃね? 無理じゃね?
 ですが、今からでも世の中詰まんないからぶっこわそーぜ! を掲げているなら、あいつなら多少の作戦というか下準備練っていても可笑しくない。

 というわけで、アヤネコは帝都に行ってきます。

 幸い季節は現在冬。
 フェルゼン領、夏は暖かく冬は寒いという非常に寒暖差の激しい土地である。
 メッチャ雪が積もりまくり、暗殺者もここにたどり着く前に雪に埋もれて死んでいるのを数人見つけました。
 ちなみにその死体を目当てに狼が来たら困るので遠くに投げ捨てましたが。
 推しの生活が寒くわびしいものにならないように、薪をしこたま備え、火の魔石をしこたまサラマンダーや火龍から毟り取ってきて、暖かそうな毛皮を狼や熊といった動物類から狩りまくりました。バランスの悪い食事はいけないと思い、日持ちするように魚の干物、干し肉や干した野菜や果物をたくさん備えました。
 王都に行くついでに、新鮮な食糧を確保できればいいと思います。
 あと、推しは読書が好きだし、お勉強がとても良くできる子なので本をお土産に入手したいです。
 股間がしょっちゅう小爆発している推しの腐れ父は大層な蔵書コレクターだそうです。
 ケツの穴まで毟り取る勢いで根こそぎ奪ってやりたいですが、推しに盗品を与えて万一があったら大変なのでやめておく。
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