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20話 樹海での焚き火

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「ここら辺にしますか」


リアムが樹海の奥深くまで歩くと私にやっと振り向いた。さっきの会話をしてから当分こちらを見なかった。きっと意地を張って涙目の己を見せたくなかったのだろう。


「けど、こんな所でどうやって焚き火を?」


見渡す限りは火を焚くことなんて到底無理な気がして、彼に尋ねてみる。


「簡単ですよ?」


だから、どのようにどこがだって話でしかないのに一言で返されては困る。だが、思えばリアムは守護神とやらで何かと簡単に火ぐらい焚けるのだろう。


「まずは、そうですね…簡単に落ちているそこら辺の木でも拾いますか」


思っているよりも原始的だった。それくらい魔法かなんかでして欲しいけど、ダメなのだろうか。


「守護神様なら、なにかと力でどうにかならないんですか?」


つい聞いてみる。リアムはそれまで足元を見渡していたが、私の方に振り返って私の唇に人差し指を当てた。


「力は大切な時にしか使いません」


「私の心は何時でも読むのに?」


リアムは私の悪戯な一言に肩をビクッとさせて、無言でまた木を探しに足元へ目線を落としてしまった。相変わらずだが、態度に出やすいタイプの人だと再認識する。


そんな適当な想像は後にして、私も薪探しを手伝うために足元見ながら歩き出した。


「こんなことしてると、思い出すな。あの時のことを…」


珍しく話し方を崩したリアムの口から出た言葉は含みがあって、ただの呟きには感じられなかった。まだ彼には隠していることもあるのだろう。あまり気にすると自分も彼にとっても悪影響でしかないので、深読みはしないようにしておくのが今は一番の選択肢だろう。


ただ、こうやって地を見つめて木を探す。こんな作業をこの歳になってまでするとは思ってもなかったし、むしろこの世界がどこであるかも気にせずになりふり構わず生きようとする自分にも不信感さえもが生まれる直前だった。今日はここで野宿になるとは思うが、もうこの異世界に飛ばされただけでも人生諦めた同然なので、動じない自信がある。


「ふぅ、こんなもんですかね」


リアムが彼と私で集めた多分適量な薪で火を焚こうと汗を拭いた。


「で、これでどうやって火を?」


「まあ、急ぎですし、これくらいならね」


彼は私の目を両手で塞いで見えないようにしてから、何かと不思議な力を使った。私も体がふわふわする感覚になるくらいの力で火を一瞬で熾した。こんなにも大きな力を使わなくても火は熾せるだろうけど、何故わざわざ、と思っていた時にトレイターの言葉を思い出した。


“まあ、単刀直入に言うと、リアム君は誰にも制御しきれないような力を体に秘めてる”

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