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9話 王子専属の医者
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「あ、起きたんだ。どーも」
重い体を起こすと、絶対にリアムではない男の声が聞こえた。初対面の人に声をかけるには少しラフすぎない?まあ、この世界のことはまだよく分かってないしそういうものなのか?
「ねー、名前ぐらい教えて貰えないかなお嬢さん?」
教えていいのだろうか?よく自分を見ればあの派手な服装のままベットに寝かせて頂いていたようだ。
「サ、じゃなくて、フライアです」
「へー、フライアさんね。リアム君も大きくなったもんだね。女の人に興味なんて全く無いタイプって国中に知られた王子だったのに。」
自分は名乗らせておいて名乗らないなんてやっぱりちょっと変な人なのか?
「名乗り忘れてたね。俺はトレイター。王子ことリアム君の専属の医者って言ったらわかりやすいかな?あの子、生まれた時から病弱でさ。自分で言うのもなんだけど国内一の医者の俺がずっと彼についてたってわけ。」
思っていたより真面目な人だった。話し方とかはチャラ男そのものだが、もし彼が言うことが本当ならかなり腕の良い医者なんだろう。個人的にはリアムが女性に興味が無いのを簡単に国民に知られていることが面白くて仕方ないが、今はそれどころではないだろう。リアムはどこにいるのか。
「あの、リアムさんはどこに?」
「ああ、君の愛しの王子様なら隣の部屋で寝てるから心配しなくていいよ。なんも、来るなら一報ぐらいくれてもいいのにさ。勝手にここにワープして挙句の果て二人とも倒れてたからね。流石の俺さえも医者も驚くよ」
「申し訳ないです」
「別に謝らなくてもいいよ。それよりもリアム君のこと気になるんでしょ。見てきな。多分フライアさんは体調見る気限りもう大丈夫そうだしね」
まあ、体の強さが売りの私からすればお手の物だ。気軽に話してくれるトレイターと名乗るその医者は茶髪で少しボサボサヘアの男で、リアムと比べれば私個人の見解だが十は歳上だろう。彼は座っていた椅子から立ち上がり、私を隣の部屋に手招いた。
「ここにリアム君いるから、会ってあげて。俺は他の部屋で色々やってるからなんかあったら呼んでね。それじゃ!またあとで」
相変わらず軽い人だなと思いながらも、リアムが心配になって部屋へと入る。私とは取って代わって軽装のリアムがベットに横たわっている。吐息も荒く、どう見ても気持ちよさそうに寝てはいなかった。大変だったんだろうな。今は苦しそうでも寝かせておいてあげよう。うるさくならないように戸を閉めて部屋を出た。
部屋を出て、トレイターを探す。きっとここはこの世界の病院なんだろう。診察室のような部屋が廊下にずっと続いている。歩き進めるとひとつの部屋からカリカリとペンでなにか書く音が聞こえた。
「トレイターさん、ここですか?」
「ん、合ってるよ。入っていいよ」
静かに戸を開け、中に入ると何やら難しい本が沢山並ぶ部屋でトレイターが仕事をしている最中だった。
「リアム君どうだった?」
「辛そうに寝てました。」
「そーだよねー。リアム君、よっぽど無理したみたいだからさ。力使うのも体力いるっていうのに」
「力?」
「まさか、知らないの?リアム君に宿ってる不思議な強い力」
私が見たあの光はそれだったのかもしれない。
「教えてあげるよ。彼の力。だけど、俺が教えた事は内緒ね?」
リアムはやっぱり普通の人じゃないみたいだ。
重い体を起こすと、絶対にリアムではない男の声が聞こえた。初対面の人に声をかけるには少しラフすぎない?まあ、この世界のことはまだよく分かってないしそういうものなのか?
「ねー、名前ぐらい教えて貰えないかなお嬢さん?」
教えていいのだろうか?よく自分を見ればあの派手な服装のままベットに寝かせて頂いていたようだ。
「サ、じゃなくて、フライアです」
「へー、フライアさんね。リアム君も大きくなったもんだね。女の人に興味なんて全く無いタイプって国中に知られた王子だったのに。」
自分は名乗らせておいて名乗らないなんてやっぱりちょっと変な人なのか?
「名乗り忘れてたね。俺はトレイター。王子ことリアム君の専属の医者って言ったらわかりやすいかな?あの子、生まれた時から病弱でさ。自分で言うのもなんだけど国内一の医者の俺がずっと彼についてたってわけ。」
思っていたより真面目な人だった。話し方とかはチャラ男そのものだが、もし彼が言うことが本当ならかなり腕の良い医者なんだろう。個人的にはリアムが女性に興味が無いのを簡単に国民に知られていることが面白くて仕方ないが、今はそれどころではないだろう。リアムはどこにいるのか。
「あの、リアムさんはどこに?」
「ああ、君の愛しの王子様なら隣の部屋で寝てるから心配しなくていいよ。なんも、来るなら一報ぐらいくれてもいいのにさ。勝手にここにワープして挙句の果て二人とも倒れてたからね。流石の俺さえも医者も驚くよ」
「申し訳ないです」
「別に謝らなくてもいいよ。それよりもリアム君のこと気になるんでしょ。見てきな。多分フライアさんは体調見る気限りもう大丈夫そうだしね」
まあ、体の強さが売りの私からすればお手の物だ。気軽に話してくれるトレイターと名乗るその医者は茶髪で少しボサボサヘアの男で、リアムと比べれば私個人の見解だが十は歳上だろう。彼は座っていた椅子から立ち上がり、私を隣の部屋に手招いた。
「ここにリアム君いるから、会ってあげて。俺は他の部屋で色々やってるからなんかあったら呼んでね。それじゃ!またあとで」
相変わらず軽い人だなと思いながらも、リアムが心配になって部屋へと入る。私とは取って代わって軽装のリアムがベットに横たわっている。吐息も荒く、どう見ても気持ちよさそうに寝てはいなかった。大変だったんだろうな。今は苦しそうでも寝かせておいてあげよう。うるさくならないように戸を閉めて部屋を出た。
部屋を出て、トレイターを探す。きっとここはこの世界の病院なんだろう。診察室のような部屋が廊下にずっと続いている。歩き進めるとひとつの部屋からカリカリとペンでなにか書く音が聞こえた。
「トレイターさん、ここですか?」
「ん、合ってるよ。入っていいよ」
静かに戸を開け、中に入ると何やら難しい本が沢山並ぶ部屋でトレイターが仕事をしている最中だった。
「リアム君どうだった?」
「辛そうに寝てました。」
「そーだよねー。リアム君、よっぽど無理したみたいだからさ。力使うのも体力いるっていうのに」
「力?」
「まさか、知らないの?リアム君に宿ってる不思議な強い力」
私が見たあの光はそれだったのかもしれない。
「教えてあげるよ。彼の力。だけど、俺が教えた事は内緒ね?」
リアムはやっぱり普通の人じゃないみたいだ。
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