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最終章 掴んだ幸せは離しませんわ
49話 新国王様の彼と結婚ですわ
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「さあ、行ってこい!」
大きな扉の前に立たされたまではよかった。その扉が開いた先が問題だった。いつもの幼さが嘘みたいに佇む彼は私と同じく、いやそれ以上に白に身を包んで待っていた。横にはタキシードをバッチリ決めたレイが護衛についている。
「驚かせて、ごめん」
レイの忠告も耳にせず私の元にトリネが駆け寄ってくる。衣装でいつもの数倍かっこよく見えていたのに無邪気に走る彼を見ればどこかほっとする。私の求めるトリネはこれだ、と今はもう確信がもてる。
やっとレイの制止の声が届いた彼は私の前に立つと顔を赤くしてあまりにもぐっちゃりしていた白を整える。
「バレバレかもだし、俺やっぱカッコつけられないけどさ」
だからなんて言うつもりなのだろう。私は完璧じゃない彼が好きなのに。そんなところは気にしなくていい。そう言いたかったがそれより前に彼の口が動く。
「俺と、一生一緒にいてください」
そう、トリネは小さく輝く光を差し出してくる。その光を掴む前に私は思慮してしまう。本当に私が受け取っていいのかな、と。でも、もう悩まない。決めたことは突き通してみせる。本物のリースは今や私なのだから。
「……はい。ずっと一緒に――」
彼がのしかかってくる。この幼さはやっぱり可愛い。なのに私を守ってくれるその強さを掛け持っている。そんな彼には頭が上がらない。
それに大好き、と今なら正直に言えるかもしれない。
「なあ、いつまで俺らは目を閉じとけばいい?」
冷静な声がして声の主を見ればふざけているのか目を手で覆っている。その声は冷ややかではありながらも笑いで震えが止まっていない。レイがあまりにも笑うので隣でクイナが口を抑えるがそれでも笑っている。それどころか彼までクイナといちゃつき始める。
完全に笑いものにされているのにトリネは私から離れない。混沌とし始めたこんな結婚式をリアスはうっとりとした目で私たちを見つめている。今回ばかりはリアスが変わり者で助かる。
もうさすがに苦しくてトリネの胸を叩けばやっと解放される。ぬくもりがなくなって残念だと思ってしまう私ももう相当イかれている。
「そーだ!めっちゃ沢山作ってもらったから食べよー!」
気になってはいたが誰も手を出さなかった食卓に向かおうとするトリネをレイが丁寧に制止する。
「その前に、挨拶ですよ。国王様」
国王…?彼が王に……?また聞かされてない情報に脳がついていけない。それにしても挨拶なんて誰にするのだろうか。無知がバレてしまいそうになる。
「ああ。そうだな」
そう言って連れ出される。ベランダのようなところに行けば、下には大量の民衆が待っていた。
「ご結婚おめでとうございます!我らの新しい国王様!」
そう叫ばれると彼はえへへと王には似つかわしくない笑みをこぼした。
大きな扉の前に立たされたまではよかった。その扉が開いた先が問題だった。いつもの幼さが嘘みたいに佇む彼は私と同じく、いやそれ以上に白に身を包んで待っていた。横にはタキシードをバッチリ決めたレイが護衛についている。
「驚かせて、ごめん」
レイの忠告も耳にせず私の元にトリネが駆け寄ってくる。衣装でいつもの数倍かっこよく見えていたのに無邪気に走る彼を見ればどこかほっとする。私の求めるトリネはこれだ、と今はもう確信がもてる。
やっとレイの制止の声が届いた彼は私の前に立つと顔を赤くしてあまりにもぐっちゃりしていた白を整える。
「バレバレかもだし、俺やっぱカッコつけられないけどさ」
だからなんて言うつもりなのだろう。私は完璧じゃない彼が好きなのに。そんなところは気にしなくていい。そう言いたかったがそれより前に彼の口が動く。
「俺と、一生一緒にいてください」
そう、トリネは小さく輝く光を差し出してくる。その光を掴む前に私は思慮してしまう。本当に私が受け取っていいのかな、と。でも、もう悩まない。決めたことは突き通してみせる。本物のリースは今や私なのだから。
「……はい。ずっと一緒に――」
彼がのしかかってくる。この幼さはやっぱり可愛い。なのに私を守ってくれるその強さを掛け持っている。そんな彼には頭が上がらない。
それに大好き、と今なら正直に言えるかもしれない。
「なあ、いつまで俺らは目を閉じとけばいい?」
冷静な声がして声の主を見ればふざけているのか目を手で覆っている。その声は冷ややかではありながらも笑いで震えが止まっていない。レイがあまりにも笑うので隣でクイナが口を抑えるがそれでも笑っている。それどころか彼までクイナといちゃつき始める。
完全に笑いものにされているのにトリネは私から離れない。混沌とし始めたこんな結婚式をリアスはうっとりとした目で私たちを見つめている。今回ばかりはリアスが変わり者で助かる。
もうさすがに苦しくてトリネの胸を叩けばやっと解放される。ぬくもりがなくなって残念だと思ってしまう私ももう相当イかれている。
「そーだ!めっちゃ沢山作ってもらったから食べよー!」
気になってはいたが誰も手を出さなかった食卓に向かおうとするトリネをレイが丁寧に制止する。
「その前に、挨拶ですよ。国王様」
国王…?彼が王に……?また聞かされてない情報に脳がついていけない。それにしても挨拶なんて誰にするのだろうか。無知がバレてしまいそうになる。
「ああ。そうだな」
そう言って連れ出される。ベランダのようなところに行けば、下には大量の民衆が待っていた。
「ご結婚おめでとうございます!我らの新しい国王様!」
そう叫ばれると彼はえへへと王には似つかわしくない笑みをこぼした。
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