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第四章 復讐の時間ですわ

43話 未知の力ですわ

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目の前、いや、正しく言うなら私たちの周りに大きなバリアが出現した。他に斬りかかってきていた衛兵たちがバリアに弾かれて尻もちをつく。衛兵たちは私たちが見えているのに触れられないことに混乱して誰もが剣を一振りするが全員同じように転んだり吹っ飛んだりしていく。


「っあ、」


気を取り戻し始めたトリネが軽く唸る。私は自分のした事に理解が追いつかないがそれでも反射的にトリネの体を起こす。


「さすが、聖女様」


トリネはいたずらっ子みたいに笑う。彼はまだ傷は痛むようだが全然大丈夫!とまた笑顔を見せる。


「じゃあ、行きますか。リースはここで待ってて。色々、ありがとう。…弱い所、見られちまったな」


笑顔の後、彼の顔は歪んだ。多分、さっきの会話の本心は最後にしか詰まっていないんだろうな。笑顔も今となっては若干引きつっていたように思う。


彼はバリアから出た。このバリア、トリネを見て発動した自分自身初めて知ったが中からなら簡単に出られるらしい。なかなか奇妙なものだなとも思う。それは兵士たちも同じだったのかより顔には混乱の色が濃く出た。


「なあお前ら、気、抜いてていいと思ってるの?」


混乱し過ぎてトリネに意識が薄れていた衛兵たちが身構える。トリネはさっきまでの疲れなんて全く見せないと言うかのように大きなその鉄の塊を衛兵目掛けて振り下ろす。


「あーあ、もう終わっちまった」


聞き慣れた声がしてバリアの中からトリネと真反対にいたその存在を見つける。その足元には恐れ、戦慄する衛兵たちが身を寄せあっている。きっと彼が始末したヤツらだろう。


「お!聖女様やるね。え、なんで殺してないかって?だってその後がめんどくさいじゃん。それに俺はこいつらみたいな極悪人じゃないっての」


そう自信満々に話すレイは楽しそうにトリネの戦いぶりを見張る。俺も大剣使いたいなーと愉快なことまで話し出す。この人、戦場に出ると人格が変わるのかもしれない。もはやこの場所を楽しんでいる。


「それより、こんなバリアどうやって作ったの?」


聞かれたくない質問を出される。トリネを守りたい。その一心が今の状況にしたと言うのは嘘じゃない。でも、どう説明すればいいのか分からない。レイは口を開かない私を不審に思うだろう。でもこの修羅場に私が持つ打つ手はない。強い風が鬱陶しい程に吹く。


「もしかして、よく分からずって感じか?」


「……うん」


そうか、と言えば彼の視線は一度怯える衛兵たちに向き逃げる気がないことを知ると一人で戦うトリネの方へと戻った。

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