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第四章 復讐の時間ですわ

32話 大切な形見ですわ

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私の気持ちは一向に晴れないが、外は騒がしい太陽が顔をのぞかせていた。トリネに手を握ってもらっているがやっぱり不安は取り除けない。このぬくもりさえもいつか消えちゃうんじゃないかと怖くなる。


「やっぱ裏道は人通りが少ないよな」


トリネは私の気を紛らわせようとしてくれているのか外の景色を見せてくれる。裏道って、一体どこを通っているのだろう。地図は見せてもらったが、残念なことに土地勘が全くないのでどこか分からない。来た道とは違うのだろう。それくらいしか分からない。


「警備薄いよな。ほら、あそことか」


古びた門がそびえ立っていた。しかも門としての機能は成しておらず、開けっ放しだ。横にいたであろう警備の衛兵のための槍があるが、さびている。城内の様子を知ってはいたが、ここまで国として終わってるなんて驚いてしまう。


「でも油断出来ねぇよなー。絶対こういう国って城の周りだけヤベェやつで固めてるんだよ」


「まさか、何度も国相手に…?」


疑問は喉でとどまらずにすぐに言葉になった。こういうって、トリネは常習犯なのか。思い返せばこの復讐を決めた時だって乗り気だったし、レイもそうだった。


「もちろん!そのおかげで今は俺たちの国もでかくなったしな」


ゲームの世界線だって中世の戦いが絶えない頃だったのだから、当たり前なのかもしれないとこの世界の道理を理解した気になる。トリネの話し方的に他国を攻めることを悪いと思っていない。現代ならもってのほかだがこの世界では常識が違う。


「これ、俺のお気に入りなの」


トリネが急に話を変えたと思えば彼が私に差し出して来たのは大剣だった。どこに仕込ませていたのだろうか。難なく馬車の足元から大きな鉄の塊は出現した。


「俺の死んだ母さんが先祖代々から伝わるものなんだって渡してくれた形見なんだ」


そこからのトリネは変わって辛そうだった。トリネの年齢を深く聞いたことはないが見るからに私と同じくらいでまだ若い。お母さんを亡くしたなんて辛い経験に決まっている。


「これで何度も戦ってきた。大きいから結構扱うの大変でさ」


馬車の中で身動きも取れないくらいになと付け足す。確かにこれは振り回すのにある程度スペースが必要だ。


「その時に母さんから冗談みたいに言われたんだよ。これを振るう時は何か大切なものを守る時だけだって。例えば彼女とかね、って」


彼は私の手に込める力を強める。


「だから、もう何も心配しないでくれ。俺がリースを見捨てたりとか、絶対に無いから」


彼に私の心は知らぬ間に見透かされていたらしい。

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