32 / 50
第四章 復讐の時間ですわ
32話 大切な形見ですわ
しおりを挟む
私の気持ちは一向に晴れないが、外は騒がしい太陽が顔をのぞかせていた。トリネに手を握ってもらっているがやっぱり不安は取り除けない。このぬくもりさえもいつか消えちゃうんじゃないかと怖くなる。
「やっぱ裏道は人通りが少ないよな」
トリネは私の気を紛らわせようとしてくれているのか外の景色を見せてくれる。裏道って、一体どこを通っているのだろう。地図は見せてもらったが、残念なことに土地勘が全くないのでどこか分からない。来た道とは違うのだろう。それくらいしか分からない。
「警備薄いよな。ほら、あそことか」
古びた門がそびえ立っていた。しかも門としての機能は成しておらず、開けっ放しだ。横にいたであろう警備の衛兵のための槍があるが、さびている。城内の様子を知ってはいたが、ここまで国として終わってるなんて驚いてしまう。
「でも油断出来ねぇよなー。絶対こういう国って城の周りだけヤベェやつで固めてるんだよ」
「まさか、何度も国相手に…?」
疑問は喉でとどまらずにすぐに言葉になった。こういうって、トリネは常習犯なのか。思い返せばこの復讐を決めた時だって乗り気だったし、レイもそうだった。
「もちろん!そのおかげで今は俺たちの国もでかくなったしな」
ゲームの世界線だって中世の戦いが絶えない頃だったのだから、当たり前なのかもしれないとこの世界の道理を理解した気になる。トリネの話し方的に他国を攻めることを悪いと思っていない。現代ならもってのほかだがこの世界では常識が違う。
「これ、俺のお気に入りなの」
トリネが急に話を変えたと思えば彼が私に差し出して来たのは大剣だった。どこに仕込ませていたのだろうか。難なく馬車の足元から大きな鉄の塊は出現した。
「俺の死んだ母さんが先祖代々から伝わるものなんだって渡してくれた形見なんだ」
そこからのトリネは変わって辛そうだった。トリネの年齢を深く聞いたことはないが見るからに私と同じくらいでまだ若い。お母さんを亡くしたなんて辛い経験に決まっている。
「これで何度も戦ってきた。大きいから結構扱うの大変でさ」
馬車の中で身動きも取れないくらいになと付け足す。確かにこれは振り回すのにある程度スペースが必要だ。
「その時に母さんから冗談みたいに言われたんだよ。これを振るう時は何か大切なものを守る時だけだって。例えば彼女とかね、って」
彼は私の手に込める力を強める。
「だから、もう何も心配しないでくれ。俺がリースを見捨てたりとか、絶対に無いから」
彼に私の心は知らぬ間に見透かされていたらしい。
「やっぱ裏道は人通りが少ないよな」
トリネは私の気を紛らわせようとしてくれているのか外の景色を見せてくれる。裏道って、一体どこを通っているのだろう。地図は見せてもらったが、残念なことに土地勘が全くないのでどこか分からない。来た道とは違うのだろう。それくらいしか分からない。
「警備薄いよな。ほら、あそことか」
古びた門がそびえ立っていた。しかも門としての機能は成しておらず、開けっ放しだ。横にいたであろう警備の衛兵のための槍があるが、さびている。城内の様子を知ってはいたが、ここまで国として終わってるなんて驚いてしまう。
「でも油断出来ねぇよなー。絶対こういう国って城の周りだけヤベェやつで固めてるんだよ」
「まさか、何度も国相手に…?」
疑問は喉でとどまらずにすぐに言葉になった。こういうって、トリネは常習犯なのか。思い返せばこの復讐を決めた時だって乗り気だったし、レイもそうだった。
「もちろん!そのおかげで今は俺たちの国もでかくなったしな」
ゲームの世界線だって中世の戦いが絶えない頃だったのだから、当たり前なのかもしれないとこの世界の道理を理解した気になる。トリネの話し方的に他国を攻めることを悪いと思っていない。現代ならもってのほかだがこの世界では常識が違う。
「これ、俺のお気に入りなの」
トリネが急に話を変えたと思えば彼が私に差し出して来たのは大剣だった。どこに仕込ませていたのだろうか。難なく馬車の足元から大きな鉄の塊は出現した。
「俺の死んだ母さんが先祖代々から伝わるものなんだって渡してくれた形見なんだ」
そこからのトリネは変わって辛そうだった。トリネの年齢を深く聞いたことはないが見るからに私と同じくらいでまだ若い。お母さんを亡くしたなんて辛い経験に決まっている。
「これで何度も戦ってきた。大きいから結構扱うの大変でさ」
馬車の中で身動きも取れないくらいになと付け足す。確かにこれは振り回すのにある程度スペースが必要だ。
「その時に母さんから冗談みたいに言われたんだよ。これを振るう時は何か大切なものを守る時だけだって。例えば彼女とかね、って」
彼は私の手に込める力を強める。
「だから、もう何も心配しないでくれ。俺がリースを見捨てたりとか、絶対に無いから」
彼に私の心は知らぬ間に見透かされていたらしい。
0
お気に入りに追加
177
あなたにおすすめの小説
親友、婚約者、乳姉、信じていた人達に裏切られて自殺を図りましたが、運命の人に助けられました。
克全
恋愛
「15話3万8026字で完結済みです」ロッシ侯爵家の令嬢アリア、毒を盛られて5年間眠り続けていた。5年後に目を覚ますと、婚約者だった王太子のマッティーアは、同じ家門の親友ヴィットーリアと結婚していた。さらに自分を毒殺した犯人は、家族以上に信頼していた、乳姉のマルティナだと、助けてくれた叡智の精霊ソフィアに聞かされるた。更に追い討ちをかけるように、全てを仕組んだのは家門の代表だった父が最も信頼していたヴィットーリアの父親モレッティ伯爵だった。親友のヴィットーリアも乳姉のマルティナも婚約者のマッティーアも、全員ぐるになってアリアに毒を盛ったのだと言う。真実を聞かされて絶望したアリアは、叡智の精霊ソフィアに助けてもらった事を余計なお世話だと思ってしまった。生きていてもしかたがないと思い込んでしまったアリアは、衝動的に家を飛び出して川に飛び込もうとしたのだが……
王太子が悪役令嬢ののろけ話ばかりするのでヒロインは困惑した
葉柚
恋愛
とある乙女ゲームの世界に転生してしまった乙女ゲームのヒロイン、アリーチェ。
メインヒーローの王太子を攻略しようとするんだけど………。
なんかこの王太子おかしい。
婚約者である悪役令嬢ののろけ話しかしないんだけど。
トカゲ令嬢とバカにされて聖女候補から外され辺境に追放されましたが、トカゲではなく龍でした。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
リバコーン公爵家の長女ソフィアは、全貴族令嬢10人の1人の聖獣持ちに選ばれたが、その聖獣がこれまで誰も持ったことのない小さく弱々しいトカゲでしかなかった。それに比べて側室から生まれた妹は有名な聖獣スフィンクスが従魔となった。他にもグリフォンやペガサス、ワイバーンなどの実力も名声もある従魔を従える聖女がいた。リバコーン公爵家の名誉を重んじる父親は、ソフィアを正室の領地に追いやり第13王子との婚約も辞退しようとしたのだが……
王立聖女学園、そこは爵位を無視した弱肉強食の競争社会。だがどれだけ努力しようとも神の気紛れで全てが決められてしまう。まず従魔が得られるかどうかで貴族令嬢に残れるかどうかが決まってしまう。
殿下、あなたが借金のカタに売った女が本物の聖女みたいですよ?
星ふくろう
恋愛
聖女認定の儀式をするから王宮に来いと招聘された、クルード女公爵ハーミア。
数人の聖女候補がいる中、次期皇帝のエミリオ皇太子と婚約している彼女。
周囲から最有力候補とみられていたらしい。
未亡人の自分でも役に立てるならば、とその命令を受けたのだった。
そして、聖女認定の日、登城した彼女を待っていたのは借金取りのザイール大公。
女癖の悪い、極悪なヤクザ貴族だ。
その一週間前、ポーカーで負けた殿下は婚約者を賭けの対象にしていて負けていた。
ハーミアは借金のカタにザイール大公に取り押さえられたのだ。
そして、放蕩息子のエミリオ皇太子はハーミアに宣言する。
「残念だよ、ハーミア。
そんな質草になった貴族令嬢なんて奴隷以下だ。
僕はこの可愛い女性、レベン公爵令嬢カーラと婚約するよ。
僕が選んだ女性だ、聖女になることは間違いないだろう。
君は‥‥‥お払い箱だ」
平然と婚約破棄をするエミリオ皇太子とその横でほくそ笑むカーラ。
聖女認定どころではなく、ハーミアは怒り大公とその場を後にする。
そして、聖女は選ばれなかった.
ハーミアはヤクザ大公から債権を回収し、魔王へとそれを売り飛ばす。
魔王とハーミアは共謀して帝国から債権回収をするのだった。
追放された聖女の悠々自適な側室ライフ
白雪の雫
ファンタジー
「聖女ともあろう者が、嫉妬に狂って我が愛しのジュリエッタを虐めるとは!貴様の所業は畜生以外の何者でもない!お前との婚約を破棄した上で国外追放とする!!」
平民でありながらゴーストやレイスだけではなくリッチを一瞬で倒したり、どんな重傷も完治してしまうマルガレーテは、幼い頃に両親と引き離され聖女として教会に引き取られていた。
そんな彼女の魔力に目を付けた女教皇と国王夫妻はマルガレーテを国に縛り付ける為、王太子であるレオナルドの婚約者に据えて、「お妃教育をこなせ」「愚民どもより我等の病を治療しろ」「瘴気を祓え」「不死王を倒せ」という風にマルガレーテをこき使っていた。
そんなある日、レオナルドは居並ぶ貴族達の前で公爵令嬢のジュリエッタ(バスト100cm以上の爆乳・KかLカップ)を妃に迎え、マルガレーテに国外追放という死刑に等しい宣言をしてしまう。
「王太子殿下の仰せに従います」
(やっと・・・アホ共から解放される。私がやっていた事が若作りのヒステリー婆・・・ではなく女教皇と何の力もない修道女共に出来る訳ないのにね~。まぁ、この国がどうなってしまっても私には関係ないからどうでもいいや)
表面は淑女の仮面を被ってレオナルドの宣言を受け入れたマルガレーテは、さっさと国を出て行く。
今までの鬱憤を晴らすかのように、着の身着のままの旅をしているマルガレーテは、故郷である幻惑の樹海へと戻っている途中で【宮女狩り】というものに遭遇してしまい、大国の後宮へと入れられてしまった。
マルガレーテが悠々自適な側室ライフを楽しんでいる頃
聖女がいなくなった王国と教会は滅亡への道を辿っていた。
みんなで追放令嬢を監視しよう!
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
王太子ジョージは、太陽神殿が聖別した魔封の聖女メグを虐めた罪で、婚約者の公爵令嬢オリビアを処刑しようとした。だが父王と重臣達の反対で追放刑に止めることになった。聖女メグに恋する王太子ジョージと若者世代は、オリビアを恐れる聖女メグを安心させるため、重臣達と遠見の鏡でオリビアを監視し、その罪を明らかにして処刑しようとする
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる