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第二章 王子様を探しますわ

15話 二人の好物を眺めますわ

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「てかなんでお前バレてないの?お嬢さん、こいつのこと知らないって世間知らずもいいとこよ?」


騒がしいのか賑やかなのか微妙なあのまま私たちはレイのオススメの店に来ていた。路地裏にある古風な喫茶店で、知る人ぞ知る店というのはこういう時に使うのがぴったりなんだろう。


メニューは分かるものが多くてたすかるが時々謎の名目がある。グロテスクな名前ばかりなので聞くことも難しい。


「聞いてる?」


レイに大丈夫ー?と手を振られて私に話が振られていたことに気付く。言い合いをしていたトリネは遠くを見つめて放心状態になっていた。予想でしかないがこれはトリネが負けたな。彼は行動力はありそうだが口喧嘩が得意なようには見えない。


「本当に知らないんです…」


トリネと会うまで彼のことを知らなかったのは当たり前の話だし、今さっきこんな馬車と家族の話を聞いて只者ではないと分かったばかりで、他は何も知らない。


「じゃあ、都合いいね。な、トリネ悪かったって…」


へそを曲げてしまったトリネの機嫌を取ろうとするが曲がりきったへそが直ぐに戻るわけは無い。もう閉店も近いのか陽の沈んだ外は人の流れも減ってきていた。


「こちら、ソーダフロートでございます」


この世界ではデザートから食べるのは当たり前なのかと考えもしたがそれは直ぐに私の中で却下された。レイも驚いている。行きつけと聞いていたからサービスかもと思ったがそれも違うらしい。


「いただきまーす!」


まだ夕飯も食べていないのになんと行儀の悪い人だ。さすがは父親さえも呆れる奇人だ。目を輝かせたトリネはソーダフロートにがっつこうとしたが隣のレイに奪われた。勢いの良いスプーンが宙を舞う。


「今日くらい良いじゃねぇかよ」


「いやいや、俺がお前の父さんに怒られるの。それにこれ、俺の好物って知ってて頼んだよな?」


仲が良いのか悪いのか。未だに私は理解が乏しい。申し訳なさそうにするトリネを横にレイもスプーンを構え始める。


「見て我慢できなくてさ…」


そうトリネが言う。どれだけ友達思いなのか、それが空回りしやすいのかレイはため息をついた。


「ちゃんと飯も食う?」


「もちろん」


レイがお母さんかと思うような質問をトリネに投げる。首を大きく縦に振って、満面の笑みをトリネに見せる。


「今日だけ、な。見苦しいとこを見せてしまって申し訳ありません。これからもっと見苦しいでしょうが、お許し下さい…」


ふざけだしたレイとがっつくトリネの絵は確かに見苦しいかもしれないがあまり嫌いではない。昔なら絶対に男臭いとかで毛嫌いしていたと思う。でも今はそんな事はない。


子供らしい彼の一面がまた私を狂わせだした。

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