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第六章 虚構の女
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パーティー会場には、すでに多くの神部グループの重役や、子会社の社長、取引先の大手会社に、マスコミなどが招待されている。
会場に入るまでにも、いくつか警官と警備員が立っていて、不審者に目を光らせていたが、この会場の入り口は、さらに厳重な警備になっていて、葵を警戒している
フォーマルなスリーピーススーツを着こなす佐伯の後ろに、珍しくきっちりとしたフォーマルな格好をする、鬼頭の姿があった。
「佐伯。さすがに、会場の中に入るのは止められるんじやねぇか。入り口は、なんとかお前がいたから通れたけどよ」
「心配するな。今ここに君がいるのは、プライベートの範囲だよ。僕が君を同伴者として連れてきたからね。なんとかさまになっているな、鬼頭」
佐伯は、そう言って鬼頭を上から下まで見て、少し笑った。もちろん、レセプションパーティーに行くような洒落たブランドのスーツは持っていないので、急遽購入し大きな出費になった。髪を整え、髭を綺麗に剃った。居心地が悪そうに見える鬼頭を、佐伯は面白がっている。
「お待ち下さい!」
案の定、会場の入口で不審そうに顔をしかめる同僚に鬼頭は遮られる。公務員とはいえ、勤務外や休日の行動を制限することはできない。
単独か共同経営者、または伴侶を同伴者として、連れてきている中で、佐伯はこの事件から降ろされた刑事を、会場に連れてきているのだから、周囲には異様に見えていた。
「佐伯様、恐れ入りますが、招待状をご提示下さい。こちらの方は……、少々問題が」
「僕の連れだよ。神部グループは多様性を重んじているだろう? それに彼は退職した後に、僕と共同経営するつもりだからね」
「佐伯先生、鬼頭。勝手なことをしてもらっては困りますよ!」
「ご心配なく。彼はプライベートで、僕の誘いを受けただけだ。警察手帳も拳銃も取り上げられている」
そう言われてしまえば、警備員も刑事も黙りこむしかなかった。渋々、彼らは鬼頭と佐伯の持ち物チェックと、身体検査をした。
勝手にパートナーにされたあげく、警察を辞めて、共同経営するなどと嘘まで並べた佐伯に呆れた。しかし、神部グループと関係のある、御曹司がいなければ、現場に潜入することは叶わなかった。
内心、苦虫を噛み潰したような顔をして、鬼頭は辛抱する。
「お前の親父さんや、お袋さんに知れたら、勘当されるんじゃないか。老舗なんだろ」
「いや、今日は両親は来ていないよ。僕が代わりに行くことになったからね。それに、君を連れてきたことを知ったら、間違いなくここで何か、犯罪が起こると察する。僕が好き好んでこんな場所に行くなんて、それしかないからな」
「お前は、どういう育て方をされているんだよ」
会場の内部は、かなり広い。
立食パーティーの形式で、夜景をバックにしてマイクが置かれている。招待客が揃えばここで神部凜花による、新事業の説明や商品の紹介などが、催されるのだろう。
鬼頭が視線を、周囲に向けると数人の警官が全ての扉の前に立ち、注意深く、周囲を見渡しているのが見える。それとなく、自分も視線を向けてしまうのは、もはや職業病のようなものだ。
「神部凜花の精神力には驚かされるな。命を狙われているのに。まだ若いが、肝だけは座っている。それともサイコパスか?」
「トップクラスの経営者は、サイコパス度が強いんだ。断っておくが、サイコパスはイコール、殺人犯というわけじゃないぞ。まぁ、彼女の場合は、それにも当てはまってしまうが」
そういう話は、なにかの番組で見たことがある。神部凜花の場合は、間違いなく高階凛の殺人に関与しているが。しばらくすると、神部明彦と、彼に連れられた清楚なワンピース姿の凜花が現れる。
彼女は髪をアップし、赤いルージュを引いて、花のイヤリングをしていた。
会場に入るまでにも、いくつか警官と警備員が立っていて、不審者に目を光らせていたが、この会場の入り口は、さらに厳重な警備になっていて、葵を警戒している
フォーマルなスリーピーススーツを着こなす佐伯の後ろに、珍しくきっちりとしたフォーマルな格好をする、鬼頭の姿があった。
「佐伯。さすがに、会場の中に入るのは止められるんじやねぇか。入り口は、なんとかお前がいたから通れたけどよ」
「心配するな。今ここに君がいるのは、プライベートの範囲だよ。僕が君を同伴者として連れてきたからね。なんとかさまになっているな、鬼頭」
佐伯は、そう言って鬼頭を上から下まで見て、少し笑った。もちろん、レセプションパーティーに行くような洒落たブランドのスーツは持っていないので、急遽購入し大きな出費になった。髪を整え、髭を綺麗に剃った。居心地が悪そうに見える鬼頭を、佐伯は面白がっている。
「お待ち下さい!」
案の定、会場の入口で不審そうに顔をしかめる同僚に鬼頭は遮られる。公務員とはいえ、勤務外や休日の行動を制限することはできない。
単独か共同経営者、または伴侶を同伴者として、連れてきている中で、佐伯はこの事件から降ろされた刑事を、会場に連れてきているのだから、周囲には異様に見えていた。
「佐伯様、恐れ入りますが、招待状をご提示下さい。こちらの方は……、少々問題が」
「僕の連れだよ。神部グループは多様性を重んじているだろう? それに彼は退職した後に、僕と共同経営するつもりだからね」
「佐伯先生、鬼頭。勝手なことをしてもらっては困りますよ!」
「ご心配なく。彼はプライベートで、僕の誘いを受けただけだ。警察手帳も拳銃も取り上げられている」
そう言われてしまえば、警備員も刑事も黙りこむしかなかった。渋々、彼らは鬼頭と佐伯の持ち物チェックと、身体検査をした。
勝手にパートナーにされたあげく、警察を辞めて、共同経営するなどと嘘まで並べた佐伯に呆れた。しかし、神部グループと関係のある、御曹司がいなければ、現場に潜入することは叶わなかった。
内心、苦虫を噛み潰したような顔をして、鬼頭は辛抱する。
「お前の親父さんや、お袋さんに知れたら、勘当されるんじゃないか。老舗なんだろ」
「いや、今日は両親は来ていないよ。僕が代わりに行くことになったからね。それに、君を連れてきたことを知ったら、間違いなくここで何か、犯罪が起こると察する。僕が好き好んでこんな場所に行くなんて、それしかないからな」
「お前は、どういう育て方をされているんだよ」
会場の内部は、かなり広い。
立食パーティーの形式で、夜景をバックにしてマイクが置かれている。招待客が揃えばここで神部凜花による、新事業の説明や商品の紹介などが、催されるのだろう。
鬼頭が視線を、周囲に向けると数人の警官が全ての扉の前に立ち、注意深く、周囲を見渡しているのが見える。それとなく、自分も視線を向けてしまうのは、もはや職業病のようなものだ。
「神部凜花の精神力には驚かされるな。命を狙われているのに。まだ若いが、肝だけは座っている。それともサイコパスか?」
「トップクラスの経営者は、サイコパス度が強いんだ。断っておくが、サイコパスはイコール、殺人犯というわけじゃないぞ。まぁ、彼女の場合は、それにも当てはまってしまうが」
そういう話は、なにかの番組で見たことがある。神部凜花の場合は、間違いなく高階凛の殺人に関与しているが。しばらくすると、神部明彦と、彼に連れられた清楚なワンピース姿の凜花が現れる。
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