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第五章 銃弾
②
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「死ぬ前に自分で消去したとは思えんな。誰かが侵入したのか……」
そう言いながら鬼頭は、阿久津のスマホを探す。佐伯のプロファイリング通り、彼はスマホを、二台所持していた。それを鑑識に渡す前に鬼頭が中身を確かめようとすると、赤坂が神妙な顔付きで部屋に入ってきた。
「鬼頭さん、大変です。どうやら神部優花が乗った車が交通事故に合ったようです」
「なんだって……? あの後に事故に合ったのか?」
「神部優花、どこかで聞いたことがある名前だな。ああ、そうか。神部凜花の双子の妹か。二人共神部グループの当主、神部明彦氏の娘だね」
佐伯は意外なことに、神部優花と凜花のことを知っていた。神部グループは日本でも有名な財閥の一つだ。けれど、海外のセレブとは異なる。インフルエンサーや芸能人、父親の跡を継いで、彼女たちが経営者にでもならない限りは、娘の名など、一般人が知る由もないだろう。
特に、佐伯のように他人に全く興味がないタイプの男は。
「なんで、お前が神部姉妹を知ってるんだ? 大学の教え子でもないだろう」
「一度だけ会ったことがある。僕の父が、神部明彦氏と交流があってね。もちろんビジネスの繋がりさ。父の会社の創立30周年の記念パーティーの時に、彼女たちも招待されていたんだ。僕にはつまらない立食会だったが、彼女たちは実に興味深い存在だったよ」
そう言えば、佐伯は某大手企業の御曹司だったことを、鬼頭は思い出した。
佐伯でなければ、誤解を招きそうな表現だが、彼から見た神部姉妹には、引っ掛かる部分がいくつかあったようだ。
「興味深い、ねぇ。この場の全員が、お前の発言を誤解するぞ」
「僕はセックスを、単なる大人のスポーツだと思っているから、子供に興味はないよ。二面性のある双子だ。特に姉の方は、自分が神部の血を色濃く継いでいると信じ込んでいるようだった。鬼頭、君が二人のことを調べているということは、この連続種子殺人事件と、彼女たちが関係しているのかい?」
「さぁな。それを、これから知らべる。少なくとも、二人は桜井鳴海とは同じ出身校でクラスメイトだ」
鬼頭と佐伯は、あれから監視カメラに映った葵と思われる『重要参考人』について話し合あったことはない。佐伯が、あえて黒いパーカーフードを被った葵の正体に触れないのは、鬼頭を試しているようにも思える。それとも、決定的な証拠が出るの待っているのか。
鬼頭もまた、佐伯や赤坂に男の正体に目星がついたと言わないのは、無意識のうちにどこかで葵を庇いたいという、気持ちがあるのかもしれない。
「で、赤坂。神部優花の状態はどうなんだ」
「分かりませんが、命に別条はないようです。それにしても、あんな田園調布の閑静な高級住宅街でも、大きな事故が起こるんですね。しかも単独事故のようですし、運転手の居眠りかな」
赤坂の言葉に、鬼頭は嫌な予感がした。
優花が話せる状態なら、事故の状況を詳しく知りたい。シークレトサービスを二人つけるぐらいなので、優花も自分の命が狙われていることに、薄々勘付いていたのか。
それにしても、あまりにも出来すぎた事故なので、何者かによって、あの事故が引き起こされたような気さえしてしまう。葵の店に寄る前に彼女や、姉の凜花に話を聞くべきか。
「――――鬼頭。裏切りは、なしだぞ」
部屋を出ようとした瞬間。
佐伯から意味深な言葉を投げかけられ、一瞬固まった鬼頭は、肩越しに彼を見るとヒラヒラと手を振った。
そう言いながら鬼頭は、阿久津のスマホを探す。佐伯のプロファイリング通り、彼はスマホを、二台所持していた。それを鑑識に渡す前に鬼頭が中身を確かめようとすると、赤坂が神妙な顔付きで部屋に入ってきた。
「鬼頭さん、大変です。どうやら神部優花が乗った車が交通事故に合ったようです」
「なんだって……? あの後に事故に合ったのか?」
「神部優花、どこかで聞いたことがある名前だな。ああ、そうか。神部凜花の双子の妹か。二人共神部グループの当主、神部明彦氏の娘だね」
佐伯は意外なことに、神部優花と凜花のことを知っていた。神部グループは日本でも有名な財閥の一つだ。けれど、海外のセレブとは異なる。インフルエンサーや芸能人、父親の跡を継いで、彼女たちが経営者にでもならない限りは、娘の名など、一般人が知る由もないだろう。
特に、佐伯のように他人に全く興味がないタイプの男は。
「なんで、お前が神部姉妹を知ってるんだ? 大学の教え子でもないだろう」
「一度だけ会ったことがある。僕の父が、神部明彦氏と交流があってね。もちろんビジネスの繋がりさ。父の会社の創立30周年の記念パーティーの時に、彼女たちも招待されていたんだ。僕にはつまらない立食会だったが、彼女たちは実に興味深い存在だったよ」
そう言えば、佐伯は某大手企業の御曹司だったことを、鬼頭は思い出した。
佐伯でなければ、誤解を招きそうな表現だが、彼から見た神部姉妹には、引っ掛かる部分がいくつかあったようだ。
「興味深い、ねぇ。この場の全員が、お前の発言を誤解するぞ」
「僕はセックスを、単なる大人のスポーツだと思っているから、子供に興味はないよ。二面性のある双子だ。特に姉の方は、自分が神部の血を色濃く継いでいると信じ込んでいるようだった。鬼頭、君が二人のことを調べているということは、この連続種子殺人事件と、彼女たちが関係しているのかい?」
「さぁな。それを、これから知らべる。少なくとも、二人は桜井鳴海とは同じ出身校でクラスメイトだ」
鬼頭と佐伯は、あれから監視カメラに映った葵と思われる『重要参考人』について話し合あったことはない。佐伯が、あえて黒いパーカーフードを被った葵の正体に触れないのは、鬼頭を試しているようにも思える。それとも、決定的な証拠が出るの待っているのか。
鬼頭もまた、佐伯や赤坂に男の正体に目星がついたと言わないのは、無意識のうちにどこかで葵を庇いたいという、気持ちがあるのかもしれない。
「で、赤坂。神部優花の状態はどうなんだ」
「分かりませんが、命に別条はないようです。それにしても、あんな田園調布の閑静な高級住宅街でも、大きな事故が起こるんですね。しかも単独事故のようですし、運転手の居眠りかな」
赤坂の言葉に、鬼頭は嫌な予感がした。
優花が話せる状態なら、事故の状況を詳しく知りたい。シークレトサービスを二人つけるぐらいなので、優花も自分の命が狙われていることに、薄々勘付いていたのか。
それにしても、あまりにも出来すぎた事故なので、何者かによって、あの事故が引き起こされたような気さえしてしまう。葵の店に寄る前に彼女や、姉の凜花に話を聞くべきか。
「――――鬼頭。裏切りは、なしだぞ」
部屋を出ようとした瞬間。
佐伯から意味深な言葉を投げかけられ、一瞬固まった鬼頭は、肩越しに彼を見るとヒラヒラと手を振った。
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