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第四章 復讐の力を手に入れて
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SKY EDGEの眼下に広がる、眠らない街、東京。その美しい夜景と渋谷のスクランブル交差点を眺めながら、葵は晴れた夜空の下でフードを脱ぐと、座り込んでいた。
ふと、自分の手のひらに視線を落とすと、そこから植物の茎が伸び、みるみる間に一輪の美しい花へと変わる。
「――――今日は、凛の命日だったな」
妹が死んだ日を、一度たりとも忘れたことはない。彼女のための復讐劇なのに、喪に服すよりも、穢れた奴らの血を纏って、妹の死を悲しんでやれなかったことを申し訳なく思う。だが、復讐を全てを終わらせるまで、凛の墓前に立たないと葵は決心していた。
葵は、手のひらに咲いた儚い花を見ながら、過去を思い出すように目を閉じる。
✤✤✤
凛が廃工場で『自殺』してから、葵は凛が通っていた聖南女子で、いじめがあったんじゃないかとクラス担当の教師に問い合わせた。担当の教師の回答は予想通り『クラスではいじめは把握していない』というもの。
あきらかに凛は、何かに悩んで塞ぎ込んでいたが、バイト先の友人や先輩に当たってみても、職場ではなんのトラブルもなく、みんなと楽しくやっていた様子で、そこに嘘があるようには思えない。
凛が学校を休みがちになってからは、職場も突然辞めてしまったようだ。彼らは凛が死んだことを知らず、心配していたので、葵はやはり原因は学校にあると考え、とうとう聖南女子まで乗り込むと、教頭に詰め寄った。
もちろん、一度ではない。尻尾を出すまで何度も通った。
『俺は、凛が自殺にしろ他殺にしろこの学校が関わっているんじゃないかと思っています。学校を休みがちになっていたのは、いじめがあったからじゃないんですか?』
『高階さん、生徒にまで、凛さんのことを聞きまわっているそうですね。神部グループがいじめを許すはずがないでしょう。理事長がそういったいじめ防止の福祉にも、力を入れていることはご存知でしょう?』
教頭は呆れたような様子で、葵に苦言した。事実、探偵に頼むことなく自分の足で葵は生徒や、凛の周辺、友人に聞きまわっていた。彼女たちは口ごもるばかりで、いじめはなかったと言う。まるで、何かを恐れ、口止めされているような態度を見せる生徒もいた。
『理事長がいじめの実態まで、把握しているのか? それとも悪い噂が立つのを恐れて』
『いい加減になさって下さい。何度こられても同じです。遺書がないなら、我々とは関係ありません。妹さんのことは私どもも胸を痛めておりますが、もうできることはない。お引取り下さい』
いよいよ警備員を呼ぶぞ、という所まできて、葵は机をドンッと叩くと出ていくしかなかった。誰が凛を殺したのか。
鬼頭は他殺を疑っていたが、一般人の葵が殺人の捜査ができる範囲は限られていた。高額な金銭を払って探偵を雇い、学園を訴えるべきだろうか。けれど凛の同級生たちは、頑なに口をつぐんで当時のクラスの様子を語ろうとしない。
葵は、袋小路に迷い込んでマンションに戻ると、もう一度彼女の部屋で、なにか証拠がないか探すことにする。
警察から遺品として返されたスマホには、不自然なくらいなんの痕跡もなかった。すべて消されていたので、なんの手がかりもない。
『そう言えば……。凛が中学の時に俺の古いPCを譲ってやったことがあったな。捨ててなければまだあるか』
ふと、自分の手のひらに視線を落とすと、そこから植物の茎が伸び、みるみる間に一輪の美しい花へと変わる。
「――――今日は、凛の命日だったな」
妹が死んだ日を、一度たりとも忘れたことはない。彼女のための復讐劇なのに、喪に服すよりも、穢れた奴らの血を纏って、妹の死を悲しんでやれなかったことを申し訳なく思う。だが、復讐を全てを終わらせるまで、凛の墓前に立たないと葵は決心していた。
葵は、手のひらに咲いた儚い花を見ながら、過去を思い出すように目を閉じる。
✤✤✤
凛が廃工場で『自殺』してから、葵は凛が通っていた聖南女子で、いじめがあったんじゃないかとクラス担当の教師に問い合わせた。担当の教師の回答は予想通り『クラスではいじめは把握していない』というもの。
あきらかに凛は、何かに悩んで塞ぎ込んでいたが、バイト先の友人や先輩に当たってみても、職場ではなんのトラブルもなく、みんなと楽しくやっていた様子で、そこに嘘があるようには思えない。
凛が学校を休みがちになってからは、職場も突然辞めてしまったようだ。彼らは凛が死んだことを知らず、心配していたので、葵はやはり原因は学校にあると考え、とうとう聖南女子まで乗り込むと、教頭に詰め寄った。
もちろん、一度ではない。尻尾を出すまで何度も通った。
『俺は、凛が自殺にしろ他殺にしろこの学校が関わっているんじゃないかと思っています。学校を休みがちになっていたのは、いじめがあったからじゃないんですか?』
『高階さん、生徒にまで、凛さんのことを聞きまわっているそうですね。神部グループがいじめを許すはずがないでしょう。理事長がそういったいじめ防止の福祉にも、力を入れていることはご存知でしょう?』
教頭は呆れたような様子で、葵に苦言した。事実、探偵に頼むことなく自分の足で葵は生徒や、凛の周辺、友人に聞きまわっていた。彼女たちは口ごもるばかりで、いじめはなかったと言う。まるで、何かを恐れ、口止めされているような態度を見せる生徒もいた。
『理事長がいじめの実態まで、把握しているのか? それとも悪い噂が立つのを恐れて』
『いい加減になさって下さい。何度こられても同じです。遺書がないなら、我々とは関係ありません。妹さんのことは私どもも胸を痛めておりますが、もうできることはない。お引取り下さい』
いよいよ警備員を呼ぶぞ、という所まできて、葵は机をドンッと叩くと出ていくしかなかった。誰が凛を殺したのか。
鬼頭は他殺を疑っていたが、一般人の葵が殺人の捜査ができる範囲は限られていた。高額な金銭を払って探偵を雇い、学園を訴えるべきだろうか。けれど凛の同級生たちは、頑なに口をつぐんで当時のクラスの様子を語ろうとしない。
葵は、袋小路に迷い込んでマンションに戻ると、もう一度彼女の部屋で、なにか証拠がないか探すことにする。
警察から遺品として返されたスマホには、不自然なくらいなんの痕跡もなかった。すべて消されていたので、なんの手がかりもない。
『そう言えば……。凛が中学の時に俺の古いPCを譲ってやったことがあったな。捨ててなければまだあるか』
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