27 / 61
第三章 害虫駆除
⑦
しおりを挟む
「お嬢、まずいことになった。斎藤が死んだ」
「え、マジ? あいつも死んだの。もしかしてあんたらのチーム、やばい事に足突っ込んじゃって助けてってこと? お父様、お金出してくれるかなぁ」
開口一番、阿久津はそう言うとゴクリとつばを呑んだ。桜井が死に、近藤が死に、斎藤までとなると一瞬、奇妙な偶然に違和感を感じるものだが、優花はそこまで、気が回らない様子だった。近藤と斎藤が死んだのは、アンダーグランド界隈でのトラブルが原因で、また自分に何かしら、助けを求めできたのだろうと思った。
「違う!」
「な、なに。もう、吃驚するじゃん」
阿久津は、ドンッと机を叩いて叫んだ。そしてガサゴソとポケットから何かを取り出すと、画面に向かって震える手で押し付けてきた。優花は、ぼやけて見えた写真のピントが合うにつれ、段々とテンションが下がっていき、ツインテールの髪をくるくると指でもて遊ぶと、ポツリと言った。
「それ、高階凛じゃん。なんであんたがそんなの持ってんの。まさか、金に困って優花たちのこと脅迫する気?」
「金……金なんていらねぇよ。斎藤の死体の側で見つけたんだ。体中、植物に寄生されて、近藤も死んで。あの渋谷の女もそうじゃねぇのか。復讐、復讐だよ」
阿久津は、ブツブツと暗い声でそう答えた。
その様子は冗談には思えず、本当に斎藤と近藤が桜井と同じ死に方をしているのならば、それが優花でも、異常事態だと感じた。
紛れもなく写真の女子高生は二年前の高階凛で、阿久津がこんな学生証に使うような写真を持っているはずがない。
「復讐って誰がするんだよ。警察じゃ、自殺ってことになってるでしょ。お父様が警察にもメディアにも、圧力かけてくれたし。あの動画だって、もうこの世には存在してない」
「そんなもん、消したって……ダークウェブに行けばコピーは残ってるかもしれないだろ。ふ、復讐なんだ……絶対、あ、あいつは、許さないよ……。お前も俺も凜花も殺しにやってくる。花が、花が、そう言うんだ」
阿久津の目は激しく動揺して動き、自分の服の袖を捲りあげると、掻きむしり血が滲み出していた。そして、ふと自分の腕に視線を向け、何かを見つけたのか絶望の奇声をあげる。
「ちょ、どうしたの阿久津! あいつって誰だよ。復讐なんてふざけ……え、いやだ」
「ああ、い、いやだ、ぎゃあああああ!」
阿久津は立ち上がろうとして失敗し、椅子に座り込むと、苦しげに自分の喉を掻きむしり、耳や目、鼻と口から鮮血と蔓が一斉に飛び出して急速に花が咲くと、優花は絶叫して椅子から転げ落ちた。
――――渋谷の公開処刑と同じだ。
あれはどこか、カメラを通して映画を見ているようだったのに、阿久津の様子は酷くリアルで、身近で、現実的だった。
凜花が駆け付ける前に、PCを消そうとして花の躯が椅子に座っている様子を見て優花は怯え、泣きながら、電源を落とす。
悲鳴を聞いた凛花が、ゆっくりとノックをして部屋に入ってくると、優花は怯えたように机の下に隠れていた。
「なぁに、どうしたの。優花」
「ふ、ふざけんなよ。復讐とか、マジでふざけんなよ、あいつ。高階の方から優花たちに盾突いてきたんだぞ!」
「え、マジ? あいつも死んだの。もしかしてあんたらのチーム、やばい事に足突っ込んじゃって助けてってこと? お父様、お金出してくれるかなぁ」
開口一番、阿久津はそう言うとゴクリとつばを呑んだ。桜井が死に、近藤が死に、斎藤までとなると一瞬、奇妙な偶然に違和感を感じるものだが、優花はそこまで、気が回らない様子だった。近藤と斎藤が死んだのは、アンダーグランド界隈でのトラブルが原因で、また自分に何かしら、助けを求めできたのだろうと思った。
「違う!」
「な、なに。もう、吃驚するじゃん」
阿久津は、ドンッと机を叩いて叫んだ。そしてガサゴソとポケットから何かを取り出すと、画面に向かって震える手で押し付けてきた。優花は、ぼやけて見えた写真のピントが合うにつれ、段々とテンションが下がっていき、ツインテールの髪をくるくると指でもて遊ぶと、ポツリと言った。
「それ、高階凛じゃん。なんであんたがそんなの持ってんの。まさか、金に困って優花たちのこと脅迫する気?」
「金……金なんていらねぇよ。斎藤の死体の側で見つけたんだ。体中、植物に寄生されて、近藤も死んで。あの渋谷の女もそうじゃねぇのか。復讐、復讐だよ」
阿久津は、ブツブツと暗い声でそう答えた。
その様子は冗談には思えず、本当に斎藤と近藤が桜井と同じ死に方をしているのならば、それが優花でも、異常事態だと感じた。
紛れもなく写真の女子高生は二年前の高階凛で、阿久津がこんな学生証に使うような写真を持っているはずがない。
「復讐って誰がするんだよ。警察じゃ、自殺ってことになってるでしょ。お父様が警察にもメディアにも、圧力かけてくれたし。あの動画だって、もうこの世には存在してない」
「そんなもん、消したって……ダークウェブに行けばコピーは残ってるかもしれないだろ。ふ、復讐なんだ……絶対、あ、あいつは、許さないよ……。お前も俺も凜花も殺しにやってくる。花が、花が、そう言うんだ」
阿久津の目は激しく動揺して動き、自分の服の袖を捲りあげると、掻きむしり血が滲み出していた。そして、ふと自分の腕に視線を向け、何かを見つけたのか絶望の奇声をあげる。
「ちょ、どうしたの阿久津! あいつって誰だよ。復讐なんてふざけ……え、いやだ」
「ああ、い、いやだ、ぎゃあああああ!」
阿久津は立ち上がろうとして失敗し、椅子に座り込むと、苦しげに自分の喉を掻きむしり、耳や目、鼻と口から鮮血と蔓が一斉に飛び出して急速に花が咲くと、優花は絶叫して椅子から転げ落ちた。
――――渋谷の公開処刑と同じだ。
あれはどこか、カメラを通して映画を見ているようだったのに、阿久津の様子は酷くリアルで、身近で、現実的だった。
凜花が駆け付ける前に、PCを消そうとして花の躯が椅子に座っている様子を見て優花は怯え、泣きながら、電源を落とす。
悲鳴を聞いた凛花が、ゆっくりとノックをして部屋に入ってくると、優花は怯えたように机の下に隠れていた。
「なぁに、どうしたの。優花」
「ふ、ふざけんなよ。復讐とか、マジでふざけんなよ、あいつ。高階の方から優花たちに盾突いてきたんだぞ!」
0
お気に入りに追加
67
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。

こちら御神楽学園心霊部!
緒方あきら
ホラー
取りつかれ体質の主人公、月城灯里が霊に憑かれた事を切っ掛けに心霊部に入部する。そこに数々の心霊体験が舞い込んでくる。事件を解決するごとに部員との絆は深まっていく。けれど、彼らにやってくる心霊事件は身の毛がよだつ恐ろしいものばかりで――。
灯里は取りつかれ体質で、事あるごとに幽霊に取りつかれる。
それがきっかけで学校の心霊部に入部する事になったが、いくつもの事件がやってきて――。
。
部屋に異音がなり、主人公を怯えさせる【トッテさん】。
前世から続く呪いにより死に導かれる生徒を救うが、彼にあげたお札は一週間でボロボロになってしまう【前世の名前】。
通ってはいけない道を通り、自分の影を失い、荒れた祠を修復し祈りを捧げて解決を試みる【竹林の道】。
どこまでもついて来る影が、家まで辿り着いたと安心した主人公の耳元に突然囁きかけてさっていく【楽しかった?】。
封印されていたものを解き放つと、それは江戸時代に封じられた幽霊。彼は門吉と名乗り主人公たちは土地神にするべく扱う【首無し地蔵】。
決して話してはいけない怪談を話してしまい、クラスメイトの背中に危険な影が現れ、咄嗟にこの話は嘘だったと弁明し霊を払う【嘘つき先生】。
事故死してさ迷う亡霊と出くわしてしまう。気付かぬふりをしてやり過ごすがすれ違い様に「見えてるくせに」と囁かれ襲われる【交差点】。
ひたすら振返らせようとする霊、駅まで着いたがトンネルを走る窓が鏡のようになり憑りついた霊の禍々しい姿を見る事になる【うしろ】。
都市伝説の噂を元に、エレベーターで消えてしまった生徒。記憶からさえもその存在を消す神隠し。心霊部は総出で生徒の救出を行った【異世界エレベーター】。
延々と名前を問う不気味な声【名前】。
10の怪異譚からなる心霊ホラー。心霊部の活躍は続いていく。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
『 ゆりかご 』 ◉諸事情で非公開予定ですが読んでくださる方がいらっしゃるのでもう少しこのままにしておきます。
設樂理沙
ライト文芸
皆さま、ご訪問いただきありがとうございます。
最初2/10に非公開の予告文を書いていたのですが読んで
くださる方が増えましたので2/20頃に変更しました。
古い作品ですが、有難いことです。😇
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
" 揺り篭 " 不倫の後で 2016.02.26 連載開始
の加筆修正有版になります。
2022.7.30 再掲載
・・・・・・・・・・・
夫の不倫で、信頼もプライドも根こそぎ奪われてしまった・・
その後で私に残されたものは・・。
・・・・・・・・・・
💛イラストはAI生成画像自作
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
二人称・短編ホラー小説集 『あなた』
シルヴァ・レイシオン
ホラー
普通の小説に読み飽きたそこの『あなた』
そんな『あなた』にオススメします、二人称と言う「没入感」+ホラーの旋律にて、是非、戦慄してみて下さい・・・・・・
※このシリーズ、短編ホラー・二人称小説『あなた』は、色んな"視点"のホラーを書きます。
様々な「死」「痛み」「苦しみ」「悲しみ」「因果」などを描きますので本当に苦手な方、なんらかのトラウマ、偏見などがある人はご遠慮下さい。
小説としては珍しい「二人称」視点をベースにしていきますので、例えば洗脳されやすいような方もご観覧注意、願います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる