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第三章 害虫駆除
①
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カラーライトが鮮やかな閃光を放ち、DJの掛け声に合わせて、盛り上がった男女が両手を天に伸ばすと、ハイになってその場でジャンプする。エレクトロニック・ダンス・ミュージックに合わせて、体を揺らす女をナンパする仲間の様子を見て、斎藤と阿久津が下品に笑いながら酒を煽った。
「あいつ、百発百中でお持ち帰り成功してるな」
「あーー、あの女ね。やべぇ病気持ち。俺の連れがあいつとやって酷ぇ目にあったらしい」
「はっは、あれじゃねぇの? お前の言ってるその連れが、近藤だったりしねぇよな、阿久津」
その言葉に、酒に酔った斎藤はゲラゲラと笑う。ちょうど一週間前、共通の悪友である近藤晃が、歌舞伎町の路地で死んだ。近藤と彼らは同じ準暴力団組織、いわゆる半グレと言われる人間だった。近藤は、元暴走族で斎藤と阿久津は元格闘家。二人は同じグループに属しているが、近藤は横つながりだ。
近藤は、薬物絡みで金を稼いでいたので、暴力団のチンピラとトラブルになることも多く、死んだと聞かされても、驚かなかった。
血の気が多いのは、阿久津も斎藤も同じだったが、虚勢を張る近藤は、自分から喧嘩を吹っかけては、傷だらけになるのが日常であり、自分の勲章だと思っていたようだ。
「はっは、ちげーよ。しかし、あいつは相当エグい死に方したみてぇだな」
「渋谷で公開処刑された女と一緒だって聞いたが、見てねぇから知らね。それも、フェイクだって話だしな」
「ま、近藤は馬鹿だったから、いつ死んでもおかしくねぇよ。墓参りくらいはしてやるか」
公開処刑の動画は、誰もが知るようないくつかの有名動画サイトでアップされていたようだが、ショッキングな内容なので、すぐに削除されたらしい。グロ動画を見る趣味はないので、二人は特に話題にすることもなかった。
女の身元にも興味はなく、公開処刑をやるようなやばい奴らは、東南アジア系のマフィアだろうと思っていた。どうせ、女の方は不法滞在の売春婦か何かで、見せしめに殺されたのだろう。近藤は、やばい彼らとなにかしらトラブルになり、殺されたのだと漠然と考えていた。
この裏社会ではよくある。友人とはいえ横繋がりのグループにいる近藤が、どんなトラブルを抱えているかは、よく知らなかったし、さして興味もない。殺害した相手さえ分かれば、近藤のチームのリーダーが、落とし前をつけるだろう。
「今日は『お嬢』来る予定ねぇの」
「凜花様に外出禁止されてんじゃね。単位落とすかも知れねぇって、こないだわめいてたし。俺、しょんべん行ってくるわ」
「はっは。親父の力で、何とかなるんじやねぇの」
阿久津の質問に斎藤は、笑って手を振るとブルッと体を震わせた。
このクラブも、阿久津と斎藤が所属する『ランボチーム』が経営している。ここに来る前に、六本木のキャバクラに寄って、好みの嬢と過ごしていたお陰で、斎藤はもうすでにけっこう酒が入っていた。
尿意を催すと、カラーライトと盛り上がる客達を押しのけるようにして、トイレへと向かう。
「あいつ、百発百中でお持ち帰り成功してるな」
「あーー、あの女ね。やべぇ病気持ち。俺の連れがあいつとやって酷ぇ目にあったらしい」
「はっは、あれじゃねぇの? お前の言ってるその連れが、近藤だったりしねぇよな、阿久津」
その言葉に、酒に酔った斎藤はゲラゲラと笑う。ちょうど一週間前、共通の悪友である近藤晃が、歌舞伎町の路地で死んだ。近藤と彼らは同じ準暴力団組織、いわゆる半グレと言われる人間だった。近藤は、元暴走族で斎藤と阿久津は元格闘家。二人は同じグループに属しているが、近藤は横つながりだ。
近藤は、薬物絡みで金を稼いでいたので、暴力団のチンピラとトラブルになることも多く、死んだと聞かされても、驚かなかった。
血の気が多いのは、阿久津も斎藤も同じだったが、虚勢を張る近藤は、自分から喧嘩を吹っかけては、傷だらけになるのが日常であり、自分の勲章だと思っていたようだ。
「はっは、ちげーよ。しかし、あいつは相当エグい死に方したみてぇだな」
「渋谷で公開処刑された女と一緒だって聞いたが、見てねぇから知らね。それも、フェイクだって話だしな」
「ま、近藤は馬鹿だったから、いつ死んでもおかしくねぇよ。墓参りくらいはしてやるか」
公開処刑の動画は、誰もが知るようないくつかの有名動画サイトでアップされていたようだが、ショッキングな内容なので、すぐに削除されたらしい。グロ動画を見る趣味はないので、二人は特に話題にすることもなかった。
女の身元にも興味はなく、公開処刑をやるようなやばい奴らは、東南アジア系のマフィアだろうと思っていた。どうせ、女の方は不法滞在の売春婦か何かで、見せしめに殺されたのだろう。近藤は、やばい彼らとなにかしらトラブルになり、殺されたのだと漠然と考えていた。
この裏社会ではよくある。友人とはいえ横繋がりのグループにいる近藤が、どんなトラブルを抱えているかは、よく知らなかったし、さして興味もない。殺害した相手さえ分かれば、近藤のチームのリーダーが、落とし前をつけるだろう。
「今日は『お嬢』来る予定ねぇの」
「凜花様に外出禁止されてんじゃね。単位落とすかも知れねぇって、こないだわめいてたし。俺、しょんべん行ってくるわ」
「はっは。親父の力で、何とかなるんじやねぇの」
阿久津の質問に斎藤は、笑って手を振るとブルッと体を震わせた。
このクラブも、阿久津と斎藤が所属する『ランボチーム』が経営している。ここに来る前に、六本木のキャバクラに寄って、好みの嬢と過ごしていたお陰で、斎藤はもうすでにけっこう酒が入っていた。
尿意を催すと、カラーライトと盛り上がる客達を押しのけるようにして、トイレへと向かう。
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