花の檻

蒼琉璃

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第二章 プロファイリング

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 凛の葬儀が終わり、学校側にいじめがなかったかどうか問い合わせてみたが、理事長からはそのような報告は、担当から受けておらず、いじめの事実はないとの一点張りだった。
 偏差値が高く、優等生ばかりが通うお嬢様学校のせいなのか、まったくと言っていいほど外部に情報が漏れない。
 学生たちは、一歩外に出ても『聖南女子』という鎧を全身に纏って、世間を拒絶しているのだろう。SNSや掲示板を見ても、不気味なほど学校の評判は良いものしか書かれておらず、それも当たりさわりのないものばかりだった。
 しかし、鬼頭の情報は葵にとって、すでに過去のものとなっている。この一年間でようやく、ありとあらゆる手を使い、黒幕だと思われる双子の存在まで、辿りつけたのだから。
 鬼頭に求めるのは、警察がどこまでこの事件を把握しているかだ。

「自殺で処理された事件を、覆すことは難しいだろうが、必ず真犯人に行き着く情報を手に入れる」
「鬼頭さん。ありがとうございます。どんな些細ささいなことでもいいんです、凛を殺したと思われる犯人の情報があれば、俺に教えてください」

 葵は、それでも鬼頭には利用価値があると判断していた。下僕は愚かでも女王蜂は悪知恵が働くだろうし、手札は多いに越したことはない。奴らの悪事が世間に知れ渡るほど、死してもなお、容疑者たちを苦しめる事ができる。深々と頭を下げる葵の肩を、席を立った鬼頭がポンと叩くと、会計をして出ていく。
 葵は、店から出ていく鬼頭を目で追いながら薄笑いを浮かべた。
 
✤✤✤

「葵くん、もし用事がないなら、みんなでご飯でもどうだい?」
「そうそう。新しいイタリアン居酒屋がこの辺りでできて、皆で食べに行かないって、話してたの。店長の奢りだって」
「いつも、がんばってくれているからね」

 更衣室で私服で着替える葵を、マスターが引き止めた。従業員の女性三人も、コートを羽織り、葵に声をかける。何度か彼らに誘われたが、妹を亡くしてから、他人と深く関わることが億劫おっくうになった。
 単純に人間に対しての不信感もあるが、誰かと親しくなっても、突然消えて二度と会えなくなるという経験を、葵は短い人生の中で何度も味わってきた。それなら、初めから誰とも心を通わせない方がいい。
 葵は、ポケットから取り出したスマホの通知を見ると、ふりむく。

「誘ってくれて、ありがとうございます。今日は友人が家に遊びに来てくれることになっていて。すみません」
「ああ、そうか。急に誘ってしまって悪いね。また今度飲みに行こう。さぁさ、みんな不満そうな顔しないで」
「残念、また今度ね。葵くん、お疲れ様」

 女性陣は、付き合いの悪い葵に不満そうだったが、それ以上無理に葵を誘うようなことはなかった。


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