花の檻

蒼琉璃

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第二章 プロファイリング

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「はぁぁぁ、キクゥ!」

 粉末を鼻から吸引すると、金髪のツインテールの美少女が空に向かって叫び、ソファーに持たれ掛かった。防音の部屋には、子宮に響く重低音の音楽が鳴り響いて、気分がだんだんとハイになり、視界がキラキラと光に包まれてすべての感覚が研ぎ澄まされていく。
 その様子を気にとめることもなく、イヤホンでクラッシックの曲を流しながら、勉学に励む綺麗な黒髪のストレートの美少女が隣に座っていた。

「ねぇ、凜花りんかぁ。凜花ってばぁ。ちょっと、話聞いてる?」

 ツインテールの美少女は舌っ足らずな口調で凜花の肩に手を置くと、片方のイヤホンを引っ張る。そこから微かに聞こえるのは、G線上のアリアの美しい旋律。凜花と呼ばれた少女は、少々迷惑そうな表情で、自分とそっくりな双子の妹を見る。

「なぁに、優花ゆうか。またクスリ決めてるの? もうすぐテストなんだし、真面目に勉強しなさい。お父様にまた迷惑がかかってしまうでしょ」
「つれないなぁ~~。あんたはお父様の前で、いっつも猫被るから、双子なのにどうしてこんなに違うんだって言われるんだよ。凜花だってクスリ決める時あるでしょ? 試験勉強の時とかさぁ」

 二人とも、芸能人のように整った顔をしてるが、彼女たちの雰囲気は正反対だ。ピアスを幾つも開け、金髪のツインテールの優花と、黒髪を清楚に流し、いかにも優等生のお嬢様というような凜花は、全く同じ顔なのに完全に別人に見える。
 お互いの顔は瓜二つでも、彼女たちを並ばせて姉妹と気付く人は一体何人いるだろう、と思うくらい正反対の姉妹だ。凜花は抱きついてくる双子の妹を、押し退けることもなく、そのまま好きなようにさせて、ソファーに寝転がった。優花は凜花の背中に両手を回して顔を近づける。

「それで、なんで優花はそんなにテンション高いの? クスリのせいだけじゃないよね」
「ほら、やっぱり凜花ってば話を聞いてなかったんだねぇ。あのね、桜井と近藤が死んだの」
「ふぅん。近藤だったらいつ死んでもおかしくないな。この間、臥城会のヤクザと揉めたって優花から聞いたもの。だけど、桜井はどうしてなの?」

 凜花は、二人の死の報告を聞いても、特に興味がない様子だった。桜井も近藤も、普通では考えられないような異常な死に方をしているのに、彼女たちは猟奇的なニュースに興味がないのだろうか。
 優花は呆れたようにして、彼女の体から退くとスマホを取り出し、公開処刑の動画を見せた。

「凜花は株や世界情勢のニュースにしか興味ないもんねぇ。桜井はね、渋谷のスクランブル交差点で公開処刑されたんだよ!」
「いやだわ……。なんなのこれ、気持ち悪い。こんな死に方するなんて、無様ね」

 優花は興奮したように笑い、凜花は眉を顰めたものの、人間の体を突き破って植物に寄生される死に方は興味深く、おもしろそうに動画をマジマジと見つめる。


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