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玖 朧狐のピロトーク
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さすがにもう、あれだけ眠ってしまったから、意識はしっかりしてるけど、昨日と今日でめちゃくちゃ朧さんとえっちしちゃったな。
はぁ。避妊してなかったし、よほどでないと妊娠しないって聞いたから、安心したけど。
でも、これでも朧さんは『神様のお使い』で、契約しちゃったから、この変態狐に逆らえないわけで。うん、決して朧さんが、えっちが上手だからって付き合ってもないのに、何回も流されてるわけじゃない。
えっちしてから好きになっちゃうとか、あるんだろうか……。体から始まる恋とかあるのかな?
「お、朧さん。同棲って……。契約した女子は全員そういう流れになってるの? まさかずーっとえっちしてる訳にもいかないし。なにか私にもお仕事とか……、お役目とかそういうのある?」
朧さんは、肩からずりおちた着物を直す様子もなく、私の髪を弄びながら頰杖をついて、私を眺めている。
もう、顔が近い。近すぎる。
こんな近くで色っぽい表情をされたら、目のやり場に困るよ。できるだけ理性的に、冷静に朧さんと話そうとするんだけど、静かな声で色っぽく囁かれた。
『なんや色気あらへんなぁ、つむぎちゃん。夜伽した後は睦言するもんやろ? 他に俺と契約した女なんて、おらへんで。つむぎちゃんが初めてやさかいなぁ。どないしよか。俺はずーっと昼も夜も、あんたとどろどろな、交尾しときたいんやけど』
「~~~~っっ 正気なんですかっ!?」
本当か嘘か分からないようなことを、ニコニコしながら言わないで欲しい。心臓に悪い。
この狐、絶対他の女にも言ってそうなのに、そういう顔をされるとちょっと、本気にしちゃいそうになるからたちが悪い!
朧さんは、足を警戒する私の足に絡めるようにすると抱き寄せた。狐目がキュッと細くなると、クスクスと笑う。
『昼間は好きなようにしてええで。魅久楽の門さえ、くぐらへんかったら芝居見るなり、買物するなり、好きなようにしたらええわ。せやけど、着るもんはこっちで見繕うわ』
「え……? でも、お金持ってないよ。う、この格好はやっぱり許されないんだ」
『銭やったら、なんも心配することあらへん。あんたにお駄賃くらいあげたるわ。ええやん、その格好、俺の女ってようわかりはるやろ。この魅久楽には俺の他にも、悪い男がおるさかいなぁ』
俺の女、て言われると意識しすぎて心臓が口から出そうになる。でも、心のどこかで本気で朧さんを信じたら、また元カレみたいに裏切られるんじゃないかって、不安になるんだよ。
足先を絡めて、手慣れた手付きで太腿を撫でられるとまた息が上がってきた。朧さんは恋愛の達人だけど、私はヒヨコみたいなものだし……すごく弄ばれてる感じがする。
「そ、そういうのずるいから辞めて下さい……。本気にするしっ。私は朧さんのことまだ全然知らないし……。お昼間とかなに……んんっ………ぁ」
朧さんは、太腿を撫でながら短いスカートの足の付根までマッサージするように、指を動かすと、キスしてきた。
私は、温かい朧さんの胸板に手を添えながら抵抗することもなく、深く舌が絡まる感覚に頭がぼうっとした。温かい朧さんの舌先が私の口腔内をなぞると、舌をやんわりと絡める。口移しにわずかな唾液が流れ込んできて飲み込むと……興奮してしまった。なんか、熱い。
朧さんはそっと離れ、自分の唇を舐めて微笑むと言う。
『つむぎちゃん、おぼこいこと言わんと、本気にしたらええ。俺かて、夜は本気で遊ぶけどちゃあんと、昼間はきばって仕事してるで』
「ひぁっ……ちょ、ちょっとだめ。今日はもう、本当に、無理だからっ」
『なんや、つむぎちゃん。もう一回俺とやることを想像したん? かなんなぁ、つむぎちゃん。そないえろいと、何度も抱きたくなるで』
「ち、ちがっ……ひゃあ!」
胸元にキスされて、私が真っ赤になって慌てると、朧さんは顔を上げて、意地悪な笑みを浮かべる。まるで狐が獲物を牙で弄んでるかのように、しっかりと首筋にキスマークをつけた。少しでも気を許したら、絡め取られて戻れない所まで溺れちゃいそうで怖い。
手を伸ばそうとして、朧さんはふと私から離れると起き上がり、胡座をかいた。そして、傍らから煙管を取り出すと、吸い始める。なんとなく朧さんが私の手からすり抜けてしまったようで、寂しい気持ちになった。
『つむぎちゃん、喉乾いたんとちゃう? 冷やし飴でも、用意したろか』
『冷やし飴……??』
『せや、冷たくて甘いで。それとも、ひやこい宇治茶のほうがええ?』
冷やした飴が飲み物になるのかな? そういえば京都の駅に、売っていたような気がする。
なんとなくそっちが気になって、冷やし飴を頼むと、朧さんは乱れた服を整え『ええ子にしときや』と言って、下りていった。
私は、汗ばんだ体を起こすと気怠い空間が恋人同士の事後みたいで恥ずかしくなる。胸にこぼれたお酒も、全部朧さんが舐め取ってくれたみたい。
しばらくすると、盆を持ってきた朧さんがニッカリと笑って、部屋に入ってきた。
『ほら、冷やし飴や。つむぎちゃん。それ飲んだら、俺と風呂でも行こか』
「う、うん。え、い、い、一緒に?」
『せや。また、今度魅久楽の混浴の温泉でも連れて行ったるさかい。今日は、ここで我慢してや』
お風呂にも混浴にも突っ込みを入れたかったけど、とりあえずあまりドキドキしていることを悟られたくない。悟られたら、朧さん調子に乗りそうだし……お風呂くらい平気。
冷やし飴は、不思議な味をしていた。生姜の後味が体にいい気がする。温めたら風邪の時に良さそうだな。
✤✤✤
翌日、朧さんは魅久楽から伏見稲荷大社まで出掛けていった。あの大きな稲荷神社で、稲荷山をスタートに小さな祠や社、絵馬を一つ一つ吟味して神様に持っていくのは結構大変そう。
さすがに、昨日はお風呂でいたずらはされなかったけど、すごく恥ずかしかったな……だって、頭ははっきりしてるから、その。
えっちのときとは違ってすごく意識してしまう。温泉も『貸し切りの混浴にしたるさかい、心配せんでええよ』なんて言うけど。もうあの笑顔が嘘くさい。
でも、優しいところもあるし朧さんって、掴みどころなくて良くわかんないなぁ。
『つむぎはん。これ、坊からのお駄賃どす。ぎょーさん、買物しはり。今日は、お外行きはったら、ええもんが見れるさかい』
「お梅狐さん、ありがとうございます」
『昼間の魅久楽やったら、安全やさかい坊が帰るまで、いろいろ見はったらどうえ』
少しきつい感じの面持ちのお梅さんが、はんなりとそう言うと、西陣織の可愛らしい巾着を渡してくれた。なんとなくやんわり、屋敷に居られたら邪魔だから、外に出て欲しいと京都っぽく言われたような気もしないでもない。
まぁ、朧さんはなんとなくいいお家の若旦那って感じだし、どこの馬の骨かもわからない人間の私がいると、煙たいのかな。でも、仲良くしたいんだけど。
「お梅狐さん、色々とありがとうございます。朝食のおばんざいも、とっても美味しかったです」
『よろしいおあがりでしたわ。ほな、気をつけて』
年配の方だし、軽い女だと思われたくないので、私は深々とお辞儀をし、できるだけ丁寧にお礼した。お梅さんもにっこり笑ってお辞儀をしてくれたので大丈夫そうかな……。
私は、昨日の夜とは違って観光気分で、魅久楽を回ることにする。たしかにお昼間の魅久楽は、夜とは別の活気があるなぁ。
朧さんのお話だと、神社の大きさや人気によって、祈願の数が変わるようだから、ひっそりとした小さな社や祠では、すぐに仕事が終わる。そこに仕える神使は時間が余ってしまうので、ここで副業としてお商売をするらしい。
ということは、朧さんは人間の世界でいうと大企業の会社に勤める、エリートみたいなものなのかな。
そんなことを考えながら歩いていくと、みえを切った狐耳の歌舞伎役者と、犬の耳をした女形の歌舞伎役者の絵が飾ってある大きな建物が見えた。外観は木造だけど京都の四条にある、南座の建物に似ている。
「わぁ、歌舞伎もあるんだぁ。人気の方なのかな。あそこに芝居小屋もあるし……。本当に見る所がたくさんありそうだから、飽きなさそう」
夜と昼では、見せる顔は違うけれどここは本当に娯楽に特化した街みたい。お団子屋さんや、かんざし、小物を売る店もあって目移りしてしまう。
ふと、店先で座るハチマキをした赤ら顔の年配のお猿さんと、目が合う。このお店の店主なのか、にっこりと笑って手招きした。
『そこの、お嬢さん。かんざしや、可愛い紅はどうだい?』
「こんにちは。ちょっと見てみようかな」
『この紅は、あの藤屋の遊女たちにも人気なんだよ。ああでも、菖蒲屋の人間の遊女にはこっちの方が人気がある。かんざしはこれが流行りだ。あんたはこっちの方が好きかい』
そういえば、遊郭は女性にとって生き地獄というくらい辛い場所だけれど、吉原や島原で見世や花魁道中で練り歩いていた位の高い遊女たちは、女性たちのファッションリーダーの側面もあったって聞いたことがある。数人の人外の女性たちが、楽しそうにかんざしや、可愛い巾着袋を手に取り、おしゃべりしている。
『おや、あんた。東雲の朧さんのコレかい。昨日は、そりゃあもう呑み屋で噂の的になってたよ。だってあの朧さんの隣に、女がいるんだもん!』
「へ……?」
お猿さんのおじさんは、声を潜めると小指を立てた。見ず知らずの人に知られていることも驚いたけど、朧さんの隣に女の人が居るってそんなに不思議なのかな。
むしろ朧さんって、毎晩違うの女を連れてそうな、イメージなんだけど。
はぁ。避妊してなかったし、よほどでないと妊娠しないって聞いたから、安心したけど。
でも、これでも朧さんは『神様のお使い』で、契約しちゃったから、この変態狐に逆らえないわけで。うん、決して朧さんが、えっちが上手だからって付き合ってもないのに、何回も流されてるわけじゃない。
えっちしてから好きになっちゃうとか、あるんだろうか……。体から始まる恋とかあるのかな?
「お、朧さん。同棲って……。契約した女子は全員そういう流れになってるの? まさかずーっとえっちしてる訳にもいかないし。なにか私にもお仕事とか……、お役目とかそういうのある?」
朧さんは、肩からずりおちた着物を直す様子もなく、私の髪を弄びながら頰杖をついて、私を眺めている。
もう、顔が近い。近すぎる。
こんな近くで色っぽい表情をされたら、目のやり場に困るよ。できるだけ理性的に、冷静に朧さんと話そうとするんだけど、静かな声で色っぽく囁かれた。
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朧さんは、足を警戒する私の足に絡めるようにすると抱き寄せた。狐目がキュッと細くなると、クスクスと笑う。
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「え……? でも、お金持ってないよ。う、この格好はやっぱり許されないんだ」
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俺の女、て言われると意識しすぎて心臓が口から出そうになる。でも、心のどこかで本気で朧さんを信じたら、また元カレみたいに裏切られるんじゃないかって、不安になるんだよ。
足先を絡めて、手慣れた手付きで太腿を撫でられるとまた息が上がってきた。朧さんは恋愛の達人だけど、私はヒヨコみたいなものだし……すごく弄ばれてる感じがする。
「そ、そういうのずるいから辞めて下さい……。本気にするしっ。私は朧さんのことまだ全然知らないし……。お昼間とかなに……んんっ………ぁ」
朧さんは、太腿を撫でながら短いスカートの足の付根までマッサージするように、指を動かすと、キスしてきた。
私は、温かい朧さんの胸板に手を添えながら抵抗することもなく、深く舌が絡まる感覚に頭がぼうっとした。温かい朧さんの舌先が私の口腔内をなぞると、舌をやんわりと絡める。口移しにわずかな唾液が流れ込んできて飲み込むと……興奮してしまった。なんか、熱い。
朧さんはそっと離れ、自分の唇を舐めて微笑むと言う。
『つむぎちゃん、おぼこいこと言わんと、本気にしたらええ。俺かて、夜は本気で遊ぶけどちゃあんと、昼間はきばって仕事してるで』
「ひぁっ……ちょ、ちょっとだめ。今日はもう、本当に、無理だからっ」
『なんや、つむぎちゃん。もう一回俺とやることを想像したん? かなんなぁ、つむぎちゃん。そないえろいと、何度も抱きたくなるで』
「ち、ちがっ……ひゃあ!」
胸元にキスされて、私が真っ赤になって慌てると、朧さんは顔を上げて、意地悪な笑みを浮かべる。まるで狐が獲物を牙で弄んでるかのように、しっかりと首筋にキスマークをつけた。少しでも気を許したら、絡め取られて戻れない所まで溺れちゃいそうで怖い。
手を伸ばそうとして、朧さんはふと私から離れると起き上がり、胡座をかいた。そして、傍らから煙管を取り出すと、吸い始める。なんとなく朧さんが私の手からすり抜けてしまったようで、寂しい気持ちになった。
『つむぎちゃん、喉乾いたんとちゃう? 冷やし飴でも、用意したろか』
『冷やし飴……??』
『せや、冷たくて甘いで。それとも、ひやこい宇治茶のほうがええ?』
冷やした飴が飲み物になるのかな? そういえば京都の駅に、売っていたような気がする。
なんとなくそっちが気になって、冷やし飴を頼むと、朧さんは乱れた服を整え『ええ子にしときや』と言って、下りていった。
私は、汗ばんだ体を起こすと気怠い空間が恋人同士の事後みたいで恥ずかしくなる。胸にこぼれたお酒も、全部朧さんが舐め取ってくれたみたい。
しばらくすると、盆を持ってきた朧さんがニッカリと笑って、部屋に入ってきた。
『ほら、冷やし飴や。つむぎちゃん。それ飲んだら、俺と風呂でも行こか』
「う、うん。え、い、い、一緒に?」
『せや。また、今度魅久楽の混浴の温泉でも連れて行ったるさかい。今日は、ここで我慢してや』
お風呂にも混浴にも突っ込みを入れたかったけど、とりあえずあまりドキドキしていることを悟られたくない。悟られたら、朧さん調子に乗りそうだし……お風呂くらい平気。
冷やし飴は、不思議な味をしていた。生姜の後味が体にいい気がする。温めたら風邪の時に良さそうだな。
✤✤✤
翌日、朧さんは魅久楽から伏見稲荷大社まで出掛けていった。あの大きな稲荷神社で、稲荷山をスタートに小さな祠や社、絵馬を一つ一つ吟味して神様に持っていくのは結構大変そう。
さすがに、昨日はお風呂でいたずらはされなかったけど、すごく恥ずかしかったな……だって、頭ははっきりしてるから、その。
えっちのときとは違ってすごく意識してしまう。温泉も『貸し切りの混浴にしたるさかい、心配せんでええよ』なんて言うけど。もうあの笑顔が嘘くさい。
でも、優しいところもあるし朧さんって、掴みどころなくて良くわかんないなぁ。
『つむぎはん。これ、坊からのお駄賃どす。ぎょーさん、買物しはり。今日は、お外行きはったら、ええもんが見れるさかい』
「お梅狐さん、ありがとうございます」
『昼間の魅久楽やったら、安全やさかい坊が帰るまで、いろいろ見はったらどうえ』
少しきつい感じの面持ちのお梅さんが、はんなりとそう言うと、西陣織の可愛らしい巾着を渡してくれた。なんとなくやんわり、屋敷に居られたら邪魔だから、外に出て欲しいと京都っぽく言われたような気もしないでもない。
まぁ、朧さんはなんとなくいいお家の若旦那って感じだし、どこの馬の骨かもわからない人間の私がいると、煙たいのかな。でも、仲良くしたいんだけど。
「お梅狐さん、色々とありがとうございます。朝食のおばんざいも、とっても美味しかったです」
『よろしいおあがりでしたわ。ほな、気をつけて』
年配の方だし、軽い女だと思われたくないので、私は深々とお辞儀をし、できるだけ丁寧にお礼した。お梅さんもにっこり笑ってお辞儀をしてくれたので大丈夫そうかな……。
私は、昨日の夜とは違って観光気分で、魅久楽を回ることにする。たしかにお昼間の魅久楽は、夜とは別の活気があるなぁ。
朧さんのお話だと、神社の大きさや人気によって、祈願の数が変わるようだから、ひっそりとした小さな社や祠では、すぐに仕事が終わる。そこに仕える神使は時間が余ってしまうので、ここで副業としてお商売をするらしい。
ということは、朧さんは人間の世界でいうと大企業の会社に勤める、エリートみたいなものなのかな。
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「わぁ、歌舞伎もあるんだぁ。人気の方なのかな。あそこに芝居小屋もあるし……。本当に見る所がたくさんありそうだから、飽きなさそう」
夜と昼では、見せる顔は違うけれどここは本当に娯楽に特化した街みたい。お団子屋さんや、かんざし、小物を売る店もあって目移りしてしまう。
ふと、店先で座るハチマキをした赤ら顔の年配のお猿さんと、目が合う。このお店の店主なのか、にっこりと笑って手招きした。
『そこの、お嬢さん。かんざしや、可愛い紅はどうだい?』
「こんにちは。ちょっと見てみようかな」
『この紅は、あの藤屋の遊女たちにも人気なんだよ。ああでも、菖蒲屋の人間の遊女にはこっちの方が人気がある。かんざしはこれが流行りだ。あんたはこっちの方が好きかい』
そういえば、遊郭は女性にとって生き地獄というくらい辛い場所だけれど、吉原や島原で見世や花魁道中で練り歩いていた位の高い遊女たちは、女性たちのファッションリーダーの側面もあったって聞いたことがある。数人の人外の女性たちが、楽しそうにかんざしや、可愛い巾着袋を手に取り、おしゃべりしている。
『おや、あんた。東雲の朧さんのコレかい。昨日は、そりゃあもう呑み屋で噂の的になってたよ。だってあの朧さんの隣に、女がいるんだもん!』
「へ……?」
お猿さんのおじさんは、声を潜めると小指を立てた。見ず知らずの人に知られていることも驚いたけど、朧さんの隣に女の人が居るってそんなに不思議なのかな。
むしろ朧さんって、毎晩違うの女を連れてそうな、イメージなんだけど。
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