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13、エピローグ 最愛の君に捧げる永遠(※アルノー視点)
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俺はヘイミル王の形見である獣人王の鎧を着て、鏡の前に立っていた。
結婚式を前にして、男の準備などたかが知れているだろう。
スルティナ地方の風習として、新郎は豊穣の女神エルザの御前で、新婦に出逢うまでその姿を見ることが許されない。
聞けば、女神の祝福を受ける前に花嫁の命を取られないために、という由来があるそうだ。
だが、俺はオリーヴィアが『エルザの金獅子』と謳われた、ギルベルトと政略結婚しリーデンブルク城に戻る、花嫁姿の彼女を目撃している。
俺は獣人として卑下され、結婚式への参列も許されず、教会から戻る彼女を待っていた。
あの日のオリーヴィアは、この国の誰よりも美しかったが、表情は雪雲のように曇り、俺に助けを求めていた。
今の俺なら、さんざん彼女を傷付けた、外面だけはいいあの最低な男を殴り倒して、オリーヴィアを連れ去っていただろう。
オリーヴィアは、子供の頃から俺しか見ていなかった。
きっと、あの政略結婚は彼女にとって人生でもっとも辛く、最悪な日だったろうと思う。
そう言えば、どんなに獣人である俺と、人族であるオリーヴィアとは結婚できないと諭しても、オリーヴィアは俺と結婚すると言って聞かなかったな……。
「ディートリヒ陛下? どうかなされましたか」
「いいや。昔のことを思い出していた。彼女は執事の俺と結婚すると言ってきかなかったんだ。彼女は子供の時から本当に頑固で一途なお嬢様だった。あれから……、本当に彼女と結婚することになるなんて思いもよらなかったよ。ゲオルク、俺は彼女を殺すつもりでいたが、誰よりも愛してしまったんだ」
「それは……、きっと女神エルザのお導きでしょう。陛下とオリーヴィア様は運命の赤い糸で結ばれていたのでは?」
背後に控えていた側近のゲオルクに、俺は懐かしむように思い出話を聞かせた。
今のは、色恋に疎いゲオルクにしては、優秀な答えだったな。
運命の赤い糸なんぞ、俺は一度も信じたこともなかったが、今ならそれを実感できる。
「これから、王妃になるオリーヴィアより王の俺がはしゃいでいては、格好がつかんな。さぁ、聖域に向かおう。俺の最愛の人が待っている」
✤✤✤
澄んだ空気に白い吐息が交じった。
この地方では雪解けの頃、恋人たちは女神エルザの前で永遠の愛を誓うのが好ましいと言われている。
夫婦で新しい春を迎えるというのが、縁起が良いのだろう。
俺たちを祝ってくれる親族はもういないが、今は多くの民と、信頼できる仲間が俺たちを見守ってくれていた。
そして、ありがたいことにヴェードル国のグンヒルド王と王妃のみならず、友好関係にある小国の王までも、俺たちの結婚式に駆けつけてくれている。
雲の切れ間から、まるで俺たちを祝福するかのように差し込む光が、雪と華、そしてオリーヴィアの清楚なウエディングベールを照らした。
俺はオリーヴィアが赤い絨毯の上を歩いて、女神像の前で落ち合うまで、その美しさに目を奪われていた。
ベール越しに見える、オリーヴィアの長い睫毛と、木苺のような唇。
華奢な彼女の手を取ると、俺はオリーヴィアの手の甲に口付ける。
「本当に綺麗だ……オリーヴィア。俺の愛しい人」
「陛下、この日が来るのをずっと待っていたわ」
俺は、巫女に促されるままに聖なる泉から指輪を取り出すと、彼女の薬指にはめた。
そして今度は、彼女が交代で俺の薬指に指輪をはめる。
俺は、早る気持ちを抑え花嫁のウェディングベールをめくりあげた。
今日はいつにもまして、オリーヴィアが輝いて見えるな。
なんて愛しい人なのだろう。
そして、俺は雪の結晶が太陽の光に反射して魔法のように輝くのを見る。
そして、オリーヴィアの白い吐息を飲み込むように、甘く唇を重ねた。
これが永遠の愛を誓う儀式の、締めくくりになる。
「誰よりも貴方を愛してるわ、アルノー」
「それはこちらの台詞です。私は貴女のものですよ、オリーヴィアお嬢様」
俺たちは昔のように執事とお嬢様に戻って、永遠の愛を誓った。小さく笑って愛を囁やき合っていると、巫女に軽く窘められる。
永遠の愛を誓う厳粛な儀式で、戯れなど不真面目だと思われたかもしれない。
申し訳ないが、今日はそんなこと構うものか。
俺とオリーヴィアは、女神エルザによって導かれたのだから、きっと仲睦まじくしている様子を見て、女神も喜んでいるだろう。
俺は巫女のことなどお構いなしに、オリーヴィアの体を軽々と抱き上げると、彼女は可愛らしい悲鳴をあげた。
そして、そのまま彼女を馬車に乗せる。
「さぁ、城に帰ろう……オリーヴィア。もうこれで、君は正式に俺の、最愛の妻だ」
「ええ。私の最愛のディートリヒ陛下。今夜は私を、とびっきり甘やかして離さないでね」
「――――またそうやって私を困らせるんですから、お嬢様は。いつも鳴くのは君の方だろ」
城下町には、俺とオリーヴィアを心待ちにする民がいる。
雪解けを待って行われた、春の訪れを告げる結婚式は、ルサリィとして建国し、同時にヴェードルから独立して、記念すべき最初の祝祭となった。
ゲオルクが言うには、どうやら出店や催し物まであるらしいが、彼女を連れて見に行けないのが残念だ。
馬車に乗り、城に戻るまで教会の出口から待ち伏せる人々の祝福の声はやまず、俺たちの幸せを祈るように、ベルの音が鳴り響いている。
新郎新婦の新しい門出を祝う、祝福のベル。
美しい音色が、教会の鐘のように鳴り響いて、王都は沸き立っている。
俺は、歓声をあげる人々に手を振りながら、馬車の中でオリーヴィアと指を絡ませると、呟いた。
「城の門までいけば、思う存分に君に口付けられるのに」
「あら、今すぐでもいいわ。もう貴方と愛し合っていることを、誰にも秘密にする必要はないんですもの」
オリーヴィアはそう言うと、不意を突いて俺に、可愛らしく唇を重ねた。
彼女の柔らかな頬を慈しむように撫でると舌を絡ませ、ゆっくりと離す。
俺は、オリーヴィアの髪飾りにつけられたイベリスの白い花に触れると笑った。
イベリスの花は清楚で美しく、控え目な見た目とは裏腹に、寒さに強い花だ。
イベリスの花言葉は『心をひきつける』『初恋の思い出』『甘い誘惑』だ。そのどれもがオリーヴィアを連想させる。
「イベリスの花は、君の髪によく似合う」
「私との思い出の花を、国の花にするなんて……、貴方はなんて人なの。本当に心から愛してるわ」
オリーヴィアが微笑み、俺の肩にもたれ掛かると、その重さと温もりに安堵した。
こうして、最愛の人が俺の隣で生きている。
その奇跡だけで、俺はどうしようもない幸せに包まれた。
☆☆☆
ディートリヒ陛下とオリーヴィア王妃の披露宴が終わると、俺はようやく肩の荷が下りた。
近衛隊長の鎧を脱ぐと、一息ついてワインを開ける。
この一年間は、陛下とオリーヴィア様にとって、怒濤の日々だった。
ルサリィの独立とお二人の結婚で、ようやく新しい時代が来たのだと実感する。
俺が生きている間に、こんなことが起こるとは思わなかったが、なんだか感慨深いな。
俺はいつの間にか、お二人のことを心から尊敬し、生涯の忠誠を誓っている。
彼らにお世継ぎが生まれたなら、命を懸けて護ろう。
だが、あの二人が築きあげるこの国の未来は、きっと平和であるに違いないな。
「ようやく、お役目が終わったみたいだね、近衛隊長殿」
「っ……! ヴィヴィか。またノックもせずに部屋に入ってくるなんて、俺に斬られても文句は言えんな」
「なーに言ってんの。あんた、今まであたしの気配に、全く気付かなかったくせに」
残念だが、図星だ。
ヴィヴィは、密偵としてかなり腕があるので油断をすれば、すぐに寝首をかかれるだろうな。
しかし、なぜ俺はこの山猫の獣人と酒を飲んだり、チェスをしたりしているのだろう。
共に任務を任されてから、ヴィヴィと過ごす時間が多くなったように思う。
彼女といると、他の女のように気を使わなくていい。
扉にもたれ掛かっていたヴィヴィは、猫のように軽やかに俺に近付くと、ワインを奪い一口飲んで、テーブルに置く。
「おい、行儀が悪いぞ。ワインが欲しいなら……んっ」
ヴィヴィは、俺に唇を重ねるとそのまま胸ぐらを掴み、俺をベッドに押し倒した。
女と口付けたのは、子供の時以来じゃないか?
俺は軽く混乱したまま、何事かとヴィヴィを見上げる。
いつぞや彼女が指摘した通り、心身ともに強くなるためには、女など無用だと考えていたので……この歳になっても、俺は女の経験はない。
思わず俺は、ベッドの上で後退る。
「ゲオルク。この際、オリーヴィア様たちの最高の結婚式を見たから、遠慮なく言うけど。あんた、本当に鈍すぎ。もしかしてあんた男の方が好み?」
「違う」
「あたしのこと嫌いなの?」
「嫌いではない。好ましいとは……思う」
ヴィヴィが俺の服を掴んで引っ張るとボタンが弾け飛び、上半身を裸にされた。
そして恥ずかしげもなく、ヴィヴィは自分の上着をさっと脱ぐと胸をあらわにする。
ツンと上を向いた豊かな胸も割れた腹筋も、俺には刺激が強すぎる……な。
体温が上がり、俺の心臓はバクバクと音を立てていた。
「なっ……!」
「童貞でも、あたしが優しくしてあげるから、安心しなって。近衛隊長さん」
そう言うとヴィヴィはペロリと唇を舐めた。
獣人の女はみんな、ヴィヴィのように積極的なんだろうか。
いや、女とは俺が思うよりもそうなのかもしれん。
そうこうしているうちに俺は、快楽に飲み込まれた。
END
✨✨✨✨✨✨✨✨✨✨✨
本編はこれにて完結致しますか、R18シーンの番外編を予定しておりますので、ぜひぜひ読んで頂きたいです!(*´艸`*)
この先は糖分しかありませんのでぜひー!
結婚式を前にして、男の準備などたかが知れているだろう。
スルティナ地方の風習として、新郎は豊穣の女神エルザの御前で、新婦に出逢うまでその姿を見ることが許されない。
聞けば、女神の祝福を受ける前に花嫁の命を取られないために、という由来があるそうだ。
だが、俺はオリーヴィアが『エルザの金獅子』と謳われた、ギルベルトと政略結婚しリーデンブルク城に戻る、花嫁姿の彼女を目撃している。
俺は獣人として卑下され、結婚式への参列も許されず、教会から戻る彼女を待っていた。
あの日のオリーヴィアは、この国の誰よりも美しかったが、表情は雪雲のように曇り、俺に助けを求めていた。
今の俺なら、さんざん彼女を傷付けた、外面だけはいいあの最低な男を殴り倒して、オリーヴィアを連れ去っていただろう。
オリーヴィアは、子供の頃から俺しか見ていなかった。
きっと、あの政略結婚は彼女にとって人生でもっとも辛く、最悪な日だったろうと思う。
そう言えば、どんなに獣人である俺と、人族であるオリーヴィアとは結婚できないと諭しても、オリーヴィアは俺と結婚すると言って聞かなかったな……。
「ディートリヒ陛下? どうかなされましたか」
「いいや。昔のことを思い出していた。彼女は執事の俺と結婚すると言ってきかなかったんだ。彼女は子供の時から本当に頑固で一途なお嬢様だった。あれから……、本当に彼女と結婚することになるなんて思いもよらなかったよ。ゲオルク、俺は彼女を殺すつもりでいたが、誰よりも愛してしまったんだ」
「それは……、きっと女神エルザのお導きでしょう。陛下とオリーヴィア様は運命の赤い糸で結ばれていたのでは?」
背後に控えていた側近のゲオルクに、俺は懐かしむように思い出話を聞かせた。
今のは、色恋に疎いゲオルクにしては、優秀な答えだったな。
運命の赤い糸なんぞ、俺は一度も信じたこともなかったが、今ならそれを実感できる。
「これから、王妃になるオリーヴィアより王の俺がはしゃいでいては、格好がつかんな。さぁ、聖域に向かおう。俺の最愛の人が待っている」
✤✤✤
澄んだ空気に白い吐息が交じった。
この地方では雪解けの頃、恋人たちは女神エルザの前で永遠の愛を誓うのが好ましいと言われている。
夫婦で新しい春を迎えるというのが、縁起が良いのだろう。
俺たちを祝ってくれる親族はもういないが、今は多くの民と、信頼できる仲間が俺たちを見守ってくれていた。
そして、ありがたいことにヴェードル国のグンヒルド王と王妃のみならず、友好関係にある小国の王までも、俺たちの結婚式に駆けつけてくれている。
雲の切れ間から、まるで俺たちを祝福するかのように差し込む光が、雪と華、そしてオリーヴィアの清楚なウエディングベールを照らした。
俺はオリーヴィアが赤い絨毯の上を歩いて、女神像の前で落ち合うまで、その美しさに目を奪われていた。
ベール越しに見える、オリーヴィアの長い睫毛と、木苺のような唇。
華奢な彼女の手を取ると、俺はオリーヴィアの手の甲に口付ける。
「本当に綺麗だ……オリーヴィア。俺の愛しい人」
「陛下、この日が来るのをずっと待っていたわ」
俺は、巫女に促されるままに聖なる泉から指輪を取り出すと、彼女の薬指にはめた。
そして今度は、彼女が交代で俺の薬指に指輪をはめる。
俺は、早る気持ちを抑え花嫁のウェディングベールをめくりあげた。
今日はいつにもまして、オリーヴィアが輝いて見えるな。
なんて愛しい人なのだろう。
そして、俺は雪の結晶が太陽の光に反射して魔法のように輝くのを見る。
そして、オリーヴィアの白い吐息を飲み込むように、甘く唇を重ねた。
これが永遠の愛を誓う儀式の、締めくくりになる。
「誰よりも貴方を愛してるわ、アルノー」
「それはこちらの台詞です。私は貴女のものですよ、オリーヴィアお嬢様」
俺たちは昔のように執事とお嬢様に戻って、永遠の愛を誓った。小さく笑って愛を囁やき合っていると、巫女に軽く窘められる。
永遠の愛を誓う厳粛な儀式で、戯れなど不真面目だと思われたかもしれない。
申し訳ないが、今日はそんなこと構うものか。
俺とオリーヴィアは、女神エルザによって導かれたのだから、きっと仲睦まじくしている様子を見て、女神も喜んでいるだろう。
俺は巫女のことなどお構いなしに、オリーヴィアの体を軽々と抱き上げると、彼女は可愛らしい悲鳴をあげた。
そして、そのまま彼女を馬車に乗せる。
「さぁ、城に帰ろう……オリーヴィア。もうこれで、君は正式に俺の、最愛の妻だ」
「ええ。私の最愛のディートリヒ陛下。今夜は私を、とびっきり甘やかして離さないでね」
「――――またそうやって私を困らせるんですから、お嬢様は。いつも鳴くのは君の方だろ」
城下町には、俺とオリーヴィアを心待ちにする民がいる。
雪解けを待って行われた、春の訪れを告げる結婚式は、ルサリィとして建国し、同時にヴェードルから独立して、記念すべき最初の祝祭となった。
ゲオルクが言うには、どうやら出店や催し物まであるらしいが、彼女を連れて見に行けないのが残念だ。
馬車に乗り、城に戻るまで教会の出口から待ち伏せる人々の祝福の声はやまず、俺たちの幸せを祈るように、ベルの音が鳴り響いている。
新郎新婦の新しい門出を祝う、祝福のベル。
美しい音色が、教会の鐘のように鳴り響いて、王都は沸き立っている。
俺は、歓声をあげる人々に手を振りながら、馬車の中でオリーヴィアと指を絡ませると、呟いた。
「城の門までいけば、思う存分に君に口付けられるのに」
「あら、今すぐでもいいわ。もう貴方と愛し合っていることを、誰にも秘密にする必要はないんですもの」
オリーヴィアはそう言うと、不意を突いて俺に、可愛らしく唇を重ねた。
彼女の柔らかな頬を慈しむように撫でると舌を絡ませ、ゆっくりと離す。
俺は、オリーヴィアの髪飾りにつけられたイベリスの白い花に触れると笑った。
イベリスの花は清楚で美しく、控え目な見た目とは裏腹に、寒さに強い花だ。
イベリスの花言葉は『心をひきつける』『初恋の思い出』『甘い誘惑』だ。そのどれもがオリーヴィアを連想させる。
「イベリスの花は、君の髪によく似合う」
「私との思い出の花を、国の花にするなんて……、貴方はなんて人なの。本当に心から愛してるわ」
オリーヴィアが微笑み、俺の肩にもたれ掛かると、その重さと温もりに安堵した。
こうして、最愛の人が俺の隣で生きている。
その奇跡だけで、俺はどうしようもない幸せに包まれた。
☆☆☆
ディートリヒ陛下とオリーヴィア王妃の披露宴が終わると、俺はようやく肩の荷が下りた。
近衛隊長の鎧を脱ぐと、一息ついてワインを開ける。
この一年間は、陛下とオリーヴィア様にとって、怒濤の日々だった。
ルサリィの独立とお二人の結婚で、ようやく新しい時代が来たのだと実感する。
俺が生きている間に、こんなことが起こるとは思わなかったが、なんだか感慨深いな。
俺はいつの間にか、お二人のことを心から尊敬し、生涯の忠誠を誓っている。
彼らにお世継ぎが生まれたなら、命を懸けて護ろう。
だが、あの二人が築きあげるこの国の未来は、きっと平和であるに違いないな。
「ようやく、お役目が終わったみたいだね、近衛隊長殿」
「っ……! ヴィヴィか。またノックもせずに部屋に入ってくるなんて、俺に斬られても文句は言えんな」
「なーに言ってんの。あんた、今まであたしの気配に、全く気付かなかったくせに」
残念だが、図星だ。
ヴィヴィは、密偵としてかなり腕があるので油断をすれば、すぐに寝首をかかれるだろうな。
しかし、なぜ俺はこの山猫の獣人と酒を飲んだり、チェスをしたりしているのだろう。
共に任務を任されてから、ヴィヴィと過ごす時間が多くなったように思う。
彼女といると、他の女のように気を使わなくていい。
扉にもたれ掛かっていたヴィヴィは、猫のように軽やかに俺に近付くと、ワインを奪い一口飲んで、テーブルに置く。
「おい、行儀が悪いぞ。ワインが欲しいなら……んっ」
ヴィヴィは、俺に唇を重ねるとそのまま胸ぐらを掴み、俺をベッドに押し倒した。
女と口付けたのは、子供の時以来じゃないか?
俺は軽く混乱したまま、何事かとヴィヴィを見上げる。
いつぞや彼女が指摘した通り、心身ともに強くなるためには、女など無用だと考えていたので……この歳になっても、俺は女の経験はない。
思わず俺は、ベッドの上で後退る。
「ゲオルク。この際、オリーヴィア様たちの最高の結婚式を見たから、遠慮なく言うけど。あんた、本当に鈍すぎ。もしかしてあんた男の方が好み?」
「違う」
「あたしのこと嫌いなの?」
「嫌いではない。好ましいとは……思う」
ヴィヴィが俺の服を掴んで引っ張るとボタンが弾け飛び、上半身を裸にされた。
そして恥ずかしげもなく、ヴィヴィは自分の上着をさっと脱ぐと胸をあらわにする。
ツンと上を向いた豊かな胸も割れた腹筋も、俺には刺激が強すぎる……な。
体温が上がり、俺の心臓はバクバクと音を立てていた。
「なっ……!」
「童貞でも、あたしが優しくしてあげるから、安心しなって。近衛隊長さん」
そう言うとヴィヴィはペロリと唇を舐めた。
獣人の女はみんな、ヴィヴィのように積極的なんだろうか。
いや、女とは俺が思うよりもそうなのかもしれん。
そうこうしているうちに俺は、快楽に飲み込まれた。
END
✨✨✨✨✨✨✨✨✨✨✨
本編はこれにて完結致しますか、R18シーンの番外編を予定しておりますので、ぜひぜひ読んで頂きたいです!(*´艸`*)
この先は糖分しかありませんのでぜひー!
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