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番外編

享楽を与えたもう―薫・後編―

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 芽亜里様の懇願こんがんするお声は甘く淫らでした。濡れた唇を震わせ、喘ぐ芽亜里様のご様子は、女の私でも欲情してしまうほどでした。声もなく微笑む薫様がひざまづいて芽亜里様を見つめ、毒蛇のような紅い舌先を、突起した淡い乳首に絡ませたのです。
 その光景はとても淫らで、私は知らないうちに、自分の着物の襟元から手を差し入れておりました。
 私の乳房に、薫様の舌先がしっとりと絡みついたら、どのような快感を感じるのでしょう。

「はぁっ、んっ、あっ……あっ、あっ、はぁっ……ご主人様の舌が柔らかくて、気持ちいいのっ……あふっ、んっんっ、ぁっ!」
「んっ……ふふ、いけないな、メアリー。これはれっきとした検査なんだぜ。それなのに、俺の舌が気持ちよくてたまらないんだね」

 芽亜里様は、薫様の両肩に手を置きいやいやと頭を振ります。そんな事などお構いなしに、薫様は蕾と乳輪に舌を押し付け、先端の周囲をなぞるように舐めあげました。
 芽亜里様は口に含む薫様の様子を眺めながら、掠れた甘い声をあげておられます。
 私はゴクリと喉を鳴らして、肌襦袢の先にある乳輪をなぞると、薫様を思って指を動かしたのです。私は唇を噛んで声を殺すと、芽亜里様の淫らな表情をできるだけ観察し、甘い声に興奮を感じながら指を動かしました。

「ひぁっ、あっ、ああっ、んっ、あ、だって、だめぇ、はぁっ、あっ、あん、お胸だけでそんなに達したらっ、はしたなっ……ひぁぁっ!」
「はぁっ……ふふふ、そんなこと言って、またイッてしまったじゃないかぁ。さぁ、メアリー。俺に可愛くて卑猥な女陰ヴァギナをみせてごらんよ」

 薫様に乳首を吸われた瞬間、絶頂に達した芽亜里様は、息を切らしながら青色の瞳に涙を浮かべておられました。
 私は、乳首を摘まれ痛い思いをしたことはありますが、あんな風に気をやってしまうほど感じた事はありません。
 芽亜里様が、スカートを上げると白いタイツと、幼女のような薄桃色の亀裂が見えます。あの時は局部を凝視していなかったのですが、何故か芽亜里様の陰部には陰毛が生えておりません。
 もしかして、剃られているのかしら? 
 桜貝のようにピッタリと閉じたそこは、鏡で見た自分の陰部とは異なるように思えました。

嗚呼あぁ、綺麗だねメアリー。だけど俺は、もっと君のことが知りたいんだよ。だから腟内なかを見せてくれないか。安心してね、メアリー。俺はこう見えても、一応医学の勉強もしてたんだぜ」
「ふぁっ、ひぁっ……んんっ、ゃ、やだ、薫様、な、なにするの? そのお道具はなぁに? ひぁっ、やぁっん」

 薫様が手にした物には、見覚えがあります。
 あれは、腟鏡ちつきょうではないでしょうか?
 薫様は丁寧に消毒した腟鏡ちつきょうを持つと、芽亜里様に挿入します。そして腟内なかを凝視して、ほう、とため息をついたのです。さながら、膣内部に広がる女性の神秘性や美しい造形に感嘆かんたんの声をあげているようにも思えました。

「とても綺麗だ……ここにいつも、俺の魔羅が入るんだと思うと感慨かんがい深いな。ふふっ、そんなに顔を真っ赤にして、メアリー、腟内なかを覗かれるのがそんなに恥ずかしいのかい?」
「ゃ、恥ずかしいの……じ、じっと見られているのは嫌、も、もう、やめて……これじゃなくて……あのっ」
「これじゃなくて、愛撫して欲しいのかい? あははっ!」

 薫様はゾクゾクするような声色こわいろで芽亜里様の意志を確認しますと、膣鏡を抜いて、親指で綺麗に閉じた亀裂を愛しげに撫でました。芽亜里様に机の上に寝そべるように促した薫様は、足を立ててこちらに陰部を向けるようにとおっしゃったのです。
 綺麗に重なった薄桃色の亀裂と、盛り上がる恥丘を優しく指で撫で、円を描きます。

「あっ、んっ、ああっ、はぁっ、あっ、ああっ、んっ、はぁっ、はぁっ、ご主人さまぁっ、あっ、あっあっあっ!」
「少し触れただけで、ほら……指に愛液が絡んできたよ。やっぱり、他の奴らより俺の愛撫のほうがメアリーは好きなんじゃないか。嗚呼、ほら陰核クリトリスの周りを指でなぞっただけで、ここから蜜がたくさん溢れ出た」

 薫様が、芽亜里様の陰核を避けるように指で愛撫されますと、私は思わず女陰が疼くような感覚を覚えたのです。いくら屋敷には私しかいないとはいえ、いつ両親が足を踏み入れるかわかりません。はしたないと思いながらも、私は自分の性欲に負けて股間に手を添えてしまったのです。
 芽亜里様の表情は今は見えませんが、甘い声と、震える太腿を見ると、快感を感じているのでしょう。
 私は、着物の裾を噛みながら指を動かし自分を慰めました。

「ああっ、あっ、はぁっ、んんっ、あんっ、ふぁぁあ、だめぇ、そこ、はぁっ、んんっ、指で弾いたら、きゃう! あ、あああっ!」
「だってメアリー、ここに触れたら直ぐにイクだろ? だから俺としては、こうして焦らせてから、思いっきり感じさせたいんだよ」

 薫様はわざと陰核に触れずに芽亜里様の花弁の表面を愛撫しておりました。芽亜里様は羞恥と焦らされる背徳感に、いやらしく愛液を垂らしていらっしゃったのです。
 あの時はすぐに、口淫をされた薫様ですが、今日はまるで私に見せるかのように、綺麗な女陰をぱっくりと割り、人差し指で陰核を撫で回しました。

「――――ッッ!! っはぁ! あっ、やぁぁんっ、はぁっ、あっ、ぁ、だめ、そこは、ひどくかんじちゃうのっ!! やぁ、そこばっかり虐めないでぇ、薫さまぁ!」

 私は夢中で、芽亜里様の痴態ちたいを凝視しておりました。自分の指の音が、お二人に聞こえるのではないかと思いながら、ふしだらな行為にふけっていたのです。
 太腿を閉じようとする芽亜里様の間に腕を押し入れ制すると、とうとう薫様の指を待ちわびて、ヒクヒクとうごめく穴に中指と薬指を挿入したのです。

「さぁ、それでは触診の時間だね、メアリー。良く潤んで……俺の指に絡みついてくるよ。どれどれ、指の平に粒が当たる。俺の指が欲しくて奥へ奥へと吸引するようだ。バラバラに動かしてみようか」
「あっんん! 言わっないでぇっ、はぁっ、あっああっ、あんっ、はぁっ、あっあっあっ、気持ちいい、あっ、はぁっ」

 静かな部屋に芽亜里様の淫らな音と、鈴音のような嬌声が響き渡ります。激しく指を動かしている訳ではありませんが、芽亜里様の体が何度も震え、背中を浮かせている様子から見ても、薫様の愛撫がいかに上手であるかが伺えるのです。
 あの美しい指で、私の腟内なかをかき混ぜて欲しい……。そう、強く願わずにはおれません。
 芽亜里様に対する手淫は執拗で、何度も追い詰めると、机もスカートも薫様の手のひらも、愛液まみれになり、ようやく満足したように指を抜かれたのです。
 ふと床を見ますと、はしたない私の淫液で汚れてしまい、突然理性が戻ってきました。慌てて雑巾でそれを拭き、どうしようもない羞恥にうなだれておりました。

「はぁ、ふふ、こんなに感じていたら十分かなぁ。それじゃあ、メアリー。ご主人様に抱きついてごらん。今から魔羅で腟内なかを解して、よく効く薬を注いであげるからね」
「はあっ……はぁっ、はい……んんっ!」

 芽亜里様の腕を取ると首に回し、机に座らせ薫様は両足を抱きかかえました。
 腟内なかに魔羅を挿入しますと、薫様の淫らな腰の動きで響いた、ぶつかり合う肉の音と、愛液と魔羅が絡み合う音がしました。私はその淫靡な光景に釘付けになったのです。
 芽亜里様は、薫様の愛撫に悶え白衣をぎゅうっと握りしめました。

「メアリーっ、はぁ、あはっ、可愛い! 本当に可愛いなぁ、俺のラプンツェルはっ、一週間ぶりの俺の魔羅によがって泣いてっ、はぁっ、愛してるよっ、はぁっはぁっ、ああ凄い」
「あっ、あんっ、ひっ、やぁっ、あっぁあっ、はぁっ、気持ちいいっ、あぁぅ、愛してますっ、薫様っ、んっ、ああっ、やぁ、そこ擦っちゃだめぇっ! ――――ッッ!」

 薫様は享楽的に微笑むと、芽亜里様の花弁を貪るように腰を淫らに動かします。私はまた自分の指を着物の隙間に忍ばせ、今度は三本にして挿入すると腟内なかを上下に擦りました。
 綺麗な花弁が、薫様に犯されている様子を見ながら自慰にふけると、小さな声が漏れます。

「はっ……! あっ、メアリーが達すると俺を離すまいと、はぁっ、締め付けるんだっ……んっ、はぁっ、あはっ、んんっ、たまらないなぁ! まずは、最初の種付けだ……ねっ!」
「あっ、イクっ、イクッ! やぁぁっ!!」

 反射的に薫様の腰に両足を絡ませて、芽亜里様は絶頂に達しました。白濁した液体が注がれたのか、魔羅が抜かれますと、愛液が糸を引いて離れます。
 薫様が椅子に座り、今度は膝の上に乗って腰を振るようにと芽亜里様に命令するのです。芽亜里様はふらふらと立つと、椅子に座った薫様の上に伸し掛かり、おずおずとスカートを口に含んで先端に亀裂を押し当てます。

「嗚呼、それいいねぇ! 俺と交わっている部分を見せたいから、ずっと口に加えて可愛い声を我慢してごらん。そら、魔羅を支えてあげるから、ゆっくり腰を下ろすんだ。太いお注射で腟内なかから元気にならないとね」

 ――――見せたい?
 その言葉に青褪めてしまいました。けれども芽亜里様が腰を降ろして、涙を散らせながらくぐもった甘い声を上げた瞬間、思わず魅入ってしまったのです。
 乳房を撫で、陰核を愛撫しながら腰を動かす薫様に、芽亜里様はぎゅっと瞳を閉じ感じていらっしゃるようでした。

「んふっ、んんっ、んーーっ、んっ、……んんっ、ん!んっんっ! んんっっ!」
「はぁっ、愛してる、愛してるよメアリーっ、はぁ、ちゃあんと! 俺の上で腰を振れるようになったね、偉いなぁ。はぁっ、はぁっ……っ、くっ」

 芽亜里様と薫様は、両手を繋いで互いの腰を動かしています。芽亜里様は、もうスカートを咥える事が出来なくなり、薫様に下から突き上げられて、もう快感に耐えられなくなっているようでした。
 愛してる、と連呼する薫様の言葉に私は傷つき、嫉妬で唇を噛みながら、激しく交わる二人を恨めしげに見つめていました。

「はぁっ、あっあっあっ、もうだめ、はぁっ、あっ、きゃっ、んっ、ま、待って誰か、見てっ、――――ッッ!! ああんっ、ま、待って薫様ぁ、誰か見てるのっ、やめ、とめて、だめ、イクッ、いやぁっ」

 私はギクリとして扉から離れると息を殺しながら、小走りに廊下を走りました。赤面し驚愕した表情を浮かべながら、快楽に翻弄ほんろうされる芽亜里様。
 そして、こちらに視線を向けて、退廃的な笑みを浮かべる、薫様の高らかな笑い声が忘れられません。

✤✤✤

 数日後、何事も無かったかのように私が庭先で掃除をしていますと、布摺れの音がして和装の薫様が散歩に出てこられた事を知ったのです。
 手折った野花を持ち、まるで傾国の美女のような佇まいをした薫様と目が合うと、私は軽く会釈をしました。
 内心では、あの日の情交を見ていたことを、責められるのでは無いかと、気が気ではありませんでした。
 しかし、薫様は私の元へと来るとニヤリと微笑んで、こう言われたのです。

「お前、俺を見ていたね」
「…………」
「俺のメアリーは、とっても美しかっただろう? 可哀想だけど、どれだけお前が俺を思っていたとしても、とうてい彼女の愛の深さには届かないんだぜ。だけど、好きに自慰するがいいさ。我慢は体に毒だからねぇ」

 毒蛇が嘲笑うような、酷い言葉でした。
 頭から冷水を浴びせられたような感覚に陥りましたが、同時にうなじがぞくぞくと泡立ちような、おかしな興奮を覚えたのです。
 薫様は私がご夫妻の営みを覗き見をして、自慰をしていた事も知っているのです。

「な、何故……そのような事をおっしゃるのですか」
「何故って……あはは! 全部メアリーと俺のためさ。恥じらうメアリーは天使のように愛らしいだろう? 無垢な彼女の心の奥にある背徳心を擽って、彼女を新たな快感に目覚めさせるんだ。もっと深く愛し合って、俺の子を孕んで欲しいからねぇ」

 彼岸花のように微笑んだ薫様を、私は恐ろしく感じました。
 薫様にとって私も、あの部屋にある淫らな道具と同じく、芽亜里様と愛し合うための道具の一つでしかないのですから。


 薫編 完
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