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第十八話 ラプンツェルと蜂蜜―壱―
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目が醒めたら、私は自分のお部屋で眠っていたの。一也様がお部屋まで連れて行ってくれたのかな、そう思ってあたりを見渡すとベッドの端に書生さんが座っていた。
私が目を覚ましたことに気付いた書生さんは柔らかく微笑んで、両手をつくと顔を近づけたの。
「あ、綾斗さん……?」
「メアリー、いけない子だね。そんなに僕たちの秘密を知りたいの? 僕の書斎を漁るなんて、仔猫の悪戯が過ぎるのも考えものだな」
「ご、ごめんなさい。ちゃんと綾斗さんたちのことを知って理解したかったの」
書生さんの瞳は深い夜の海みたいに底が見えない。優しい声で額や頬を撫でてくれるのに、怒っているのか、悲しんでいるのかわからないの。
でも、ひとつだけわかってるのは悪戯をしたら『お仕置き』をされちゃうってこと……。
書生さんは私に口付けをすると耳元で囁いた。そして一也様が跡をつけた首筋に顔を寄せると少し痛いくらいに吸いついたの。
「………っ?」
「今回は残念だったけど、月のものが終わったらたくさん服從のお仕置きしてあげるからね」
月のものが終わると、女中さんから書生さんの耳に入って、私は自分のお部屋で『まぐわい』のお仕置きをされたんだよ。
自分のお部屋では初めてだから、とっても恥ずかしかった……。お布団のシーツが濡れて、お漏らししたみたいで……。
書生さんは、他の人に見られるのが嫌だから声を出さないように気を付けていたんだけど、意地悪ばっかりするの。一也様にちゃんと見えるようにしなさいって……。
ちゃんと服從してほしいって、書生さんは優しいけど飽きるまで攻めたてるから、何度も気を失っちゃったんだよ。
可愛いお洋服もお着物も、書生さんのあの白いので汚れちゃったの。みんな、仲良くしてほしいのにな。
「メアリー、どうしたんだい?」
「薫様、な、なんでもないよ。どのドレスが良いのかわからないの」
突然、背後から覗きこまれて私は飛び上がってしまったの。薫様、本当に急に現れるからいつもびっくりするんだよ!
一也様が目を盗んで表に出てきた事で、薫様もお仕事で表に出る以外で、抜け道を見つけられたんだと言ってた。よくわからないけど、薫様は一也様にちょっぴり感謝してるみたい。
明日、このお屋敷で夜界を開くんだって。お國の偉い人や異国の人も来るから、書生さんが洋装をたくさん用意してくれたの。
「ん、メアリーならどの洋装でも似合うから迷うところだ。この蒼も君のラプンツェルのような金糸の髪によく似合う。この純白のドレスも少女マリアみたいで愛らしいぞ。この桃色も可憐なグレーテルみたいだ………。その三着を持って俺の秘密の部屋に行こう」
薫様は悩ましい顔をして腕を組んでいた。三着を掴むと、何かを思いついたように妖艶に微笑む。私は頷き、薫様の後ろについていきながら少し勇気を出して尋ねてみたの。
「ねぇ、薫様。どうして『郁人』さんは眠ったままになっているの? 何も知らないから不安なの。秘密を知っても、嫌いになんてならないのに……」
私の家族はもう妃咲の一也様、書生さん、薫様だけなんだから。楽しそうに口笛を吹いていた薫様が立ち止まり振り返ると、熱っぽく私を見て指先で唇に触れた。
「俺の秘密を知っても、メアリーは愛してくれるのかい? 俺が人殺しの化け物でも、母さんのように恐れないのかなぁ」
「…………うん、なにか理由があると思うから」
あのお屋敷が燃えたのは、薫様の炎の力が原因だと書生さんから聞いた。人の命を奪うことはとても悪いことだけど、なにか理由があるはずだもの。
軍人さんの一也様もお國のために人を殺してしまったと言ってた。
私も一緒に『罪』を償えたら……いいな。
「嗚呼! そうさぁ、俺はその言葉が聞きたかったんだよ、メアリー。やっぱり君は俺のラプンツェル……! 最高に幸せな気分だよ」
薫様は洋装を下に落とすと、突然私を抱き上げて廊下でくるくると回りだした。私は悲鳴をあげて、頬を上気させる薫様を見下ろして慌てたの。だって、薫様は背が高いから頭をぶつけそうになるんだもの!
「きゃあ! 薫様、怖いよ! 怖いってば、降ろして!」
「あはは、ごめんよ、メアリー。つい嬉しくて気が狂いそうになったんだ。いいや、俺はもうメアリーに狂ってるのかなぁ? ふふふ、でもね、教えてあげる。書生は自分から手を汚すような男じゃ無いんだ、軟弱で狡い男さ」
私が首を傾げると、薫様は洋装を拾い上げて額に口づけてくれた。そして眼鏡を少し上げると妖艶に笑ったの。
「今日は機嫌がいいから、少しメアリーに教えてあげようか。妃咲家は先祖代々、不思議な能力を持っていたんだよ。それは何故か娘に受け継がれるようでね。長男しか子宝に恵まれなかった母さんは、嫁いできた赤の他人だったから、そのことを知らなかったみたいだけど」
「でも、薫様は男の人なのにどうして? あの『梅子伯母さん』と『小春ちゃん』も不思議な力を持ってるの?」
「どうしてだろうねぇ。『郁人』は妃咲家の中で男なのにも関わらず、いろんな能力を持って生まれてきたのさ。俺には及ばないけど、あの女も記憶をたどるという能力を持ってる。小春は幸運なことに、妃咲家の能力が受け継がれなかったようだけどね」
薫様のお話だと娘の全員が受け継ぐわけじゃなくて、例えば三人生まれたらその中の一人が受け継いだり、次の代の孫に能力が現れたりするんだって。
だけど初めて『郁人』さんに能力が受け継がれて妃咲のお家は大騒動だったみたい。それも他の人よりも強くてたくさんの能力を持っていた。
でも……薫様の反応を見ると、薫様も伯母さんのことが嫌いなのかな?
「そうだったの……。ねぇ、薫様。みんな『梅子伯母さん』が嫌いなの?」
「はっ、勿論だとも! あの女は穢らわしい豚だ。妃咲家の屋敷にいた女どもはどいつもこいつもおぞましい奴らさ。郁人だって………郁人だって、あの女たちがいなければ壊れずにすんだのに」
薫様がそういうと、廊下に置かれていた燭台の蠟燭に火がついた。驚いてそちらを見ると、薫様はため息をついて私を抱きしめた。
何があったのかわからないけど、たぶん薫様は『梅子叔母さん』のことに触れられたくなかったんだね。『郁人』さんもずっと眠り続けてしまうほど嫌な思いをして………。
「もう、あんな女の話はよそうメアリー。俺は君の可愛らしい洋装姿が見たいんだからさ。さぁ、行こう……夜会では君が主役なんだからな」
「うん、薫様……もう言わないから大丈夫だよ」
薫様に手を引かれて入ったお部屋は、お屋敷のお庭に面したお部屋だった。こんなところがあったなんて、ちっとも知らなかった。
このお屋敷は、たくさん知らないお部屋があるから、お庭でお散歩していてもここに気づかなかったよ。
赤の絨毯にシャンデリア、クリーム色のカーテン、お庭が見える場所には、お姫様が座るようなソファーとテーブル、そして白と茶色の英国製のベッドが置いてあった。薫様は帝都の家具じゃなくて異国のアンティークが好きなんだって。
和装を好む薫様なのに、なんだか不思議ね。
「さぁ、メアリー。俺が手伝ってあげよう。そうだな……この純白のドレス、君らしくて素敵だし、ラプンツェルも捨てがたい」
「あんまり、お腹が痛くなる洋装は好きじゃないの。お着物の帯より苦しいんだもの」
「コルセットかい? 英国じゃ昔の御伽噺のような洋装は流行ってないから安心してくれ。書生が用意したのは最新のものだ。それにしても、本当にメアリーは美しいな」
お着物の帯を取って貰って脱ぐのを手伝ってもらい、白いビスチェを着せられると、薫様がうっとりと背後で囁いた。
やだ、恥ずかしいよ……。私、あんまり異国の下着が慣れないの。
だって女中さんがあんまり肌を出しちゃだめって怒るんだもん。
「恥ずかしいから、ゃ……早くドレスを」
「待ってくれないか、メアリー。試したいことができたんだよ。この間は俺の子を孕めていなくて残念だったけど、またたくさん子種を注がなくちゃねぇ」
「えっ、ゃ、だ、だって洋装の試着する約束……ひぁっ」
薫様は軽々と私を抱き上げると、そのままふかふかのソファーに座った。クスクス笑うとまるで猫のように耳朶と首筋に舌を這わせるの。
柔らかな舌がくすぐるように動くと、私は思わずピンと足先を伸ばして吐息を漏らした。
「だめ、だめなのぉ、こんなお昼間から『まぐわい』……お庭も見えるし、せめて、か、カーテン閉めて、薫……んんっ、はぁっ」
「ちがうよ、性交だ、メアリー。あぁ、メアリーは庭師を気にしてるのかい? あの男はもう爺さんじゃないか」
薫様の唇が、首筋や鎖骨を舐めて口付ける音が響くと私は恥ずかしくなって真っ赤になる。お爺さんでも、見られるのはいや。だって、図書館の時みたいに知らない人じゃないもん!
「はぁっ、あっ、んっ、やぁ、薫様、はぁ、はぁ、んん、や、やぁ、知ってる人だと、もっと恥ずかしいっっ」
「――――んっ、そうだ。メアリー、ちょうどおやつの時間だね」
胸元と首筋のそこらじゅうを口付けていた薫様が思い出したように顔をあげて、私は少しほっとしたけど、呼び鈴を鳴らされて目を見開いた。すぐにあの無口な女中さんがやってきてしまって隠れるなんてできなかった。
私は恥ずかしくて真っ赤になると、薫様の胸板に顔をうずめたの。
「旦那様、お呼びでございますか」
「嗚呼、キヨ。俺の可愛い妻のために今日のメアリーのおやつはホットケーキを用意してくれないか。蜂蜜はいつもよりたっぷり用意してくれ」
そういうと、薫様は私の内股を撫でて指先で下着の上からあそこを撫でた。無愛想な女中さんを涙で潤んだ目で見ると、動揺するように目を逸らすの。
薫様が淫靡に微笑むと、女中さんは頬を染めて小さく返事をしたと思ったら、お部屋から出ていったんだよ。とん、とん、と胸板を叩いて抗議すると、薫様は笑って口付けてきた。
「んっ、んんぅ、はぁっ、薫さ、はぁっ、もうキヨさんのお顔、見れないよ、いじわる」
「怒った顔も可愛いねぇ、メアリー。今日は楽しいことをしたいんだよ。君はどこもかしこも甘いから、もっと甘くして味わいたいんだ」
薫様の言葉に、私は首を傾げた。
そんな私を見ると薫様は額に口付ける。
私が目を覚ましたことに気付いた書生さんは柔らかく微笑んで、両手をつくと顔を近づけたの。
「あ、綾斗さん……?」
「メアリー、いけない子だね。そんなに僕たちの秘密を知りたいの? 僕の書斎を漁るなんて、仔猫の悪戯が過ぎるのも考えものだな」
「ご、ごめんなさい。ちゃんと綾斗さんたちのことを知って理解したかったの」
書生さんの瞳は深い夜の海みたいに底が見えない。優しい声で額や頬を撫でてくれるのに、怒っているのか、悲しんでいるのかわからないの。
でも、ひとつだけわかってるのは悪戯をしたら『お仕置き』をされちゃうってこと……。
書生さんは私に口付けをすると耳元で囁いた。そして一也様が跡をつけた首筋に顔を寄せると少し痛いくらいに吸いついたの。
「………っ?」
「今回は残念だったけど、月のものが終わったらたくさん服從のお仕置きしてあげるからね」
月のものが終わると、女中さんから書生さんの耳に入って、私は自分のお部屋で『まぐわい』のお仕置きをされたんだよ。
自分のお部屋では初めてだから、とっても恥ずかしかった……。お布団のシーツが濡れて、お漏らししたみたいで……。
書生さんは、他の人に見られるのが嫌だから声を出さないように気を付けていたんだけど、意地悪ばっかりするの。一也様にちゃんと見えるようにしなさいって……。
ちゃんと服從してほしいって、書生さんは優しいけど飽きるまで攻めたてるから、何度も気を失っちゃったんだよ。
可愛いお洋服もお着物も、書生さんのあの白いので汚れちゃったの。みんな、仲良くしてほしいのにな。
「メアリー、どうしたんだい?」
「薫様、な、なんでもないよ。どのドレスが良いのかわからないの」
突然、背後から覗きこまれて私は飛び上がってしまったの。薫様、本当に急に現れるからいつもびっくりするんだよ!
一也様が目を盗んで表に出てきた事で、薫様もお仕事で表に出る以外で、抜け道を見つけられたんだと言ってた。よくわからないけど、薫様は一也様にちょっぴり感謝してるみたい。
明日、このお屋敷で夜界を開くんだって。お國の偉い人や異国の人も来るから、書生さんが洋装をたくさん用意してくれたの。
「ん、メアリーならどの洋装でも似合うから迷うところだ。この蒼も君のラプンツェルのような金糸の髪によく似合う。この純白のドレスも少女マリアみたいで愛らしいぞ。この桃色も可憐なグレーテルみたいだ………。その三着を持って俺の秘密の部屋に行こう」
薫様は悩ましい顔をして腕を組んでいた。三着を掴むと、何かを思いついたように妖艶に微笑む。私は頷き、薫様の後ろについていきながら少し勇気を出して尋ねてみたの。
「ねぇ、薫様。どうして『郁人』さんは眠ったままになっているの? 何も知らないから不安なの。秘密を知っても、嫌いになんてならないのに……」
私の家族はもう妃咲の一也様、書生さん、薫様だけなんだから。楽しそうに口笛を吹いていた薫様が立ち止まり振り返ると、熱っぽく私を見て指先で唇に触れた。
「俺の秘密を知っても、メアリーは愛してくれるのかい? 俺が人殺しの化け物でも、母さんのように恐れないのかなぁ」
「…………うん、なにか理由があると思うから」
あのお屋敷が燃えたのは、薫様の炎の力が原因だと書生さんから聞いた。人の命を奪うことはとても悪いことだけど、なにか理由があるはずだもの。
軍人さんの一也様もお國のために人を殺してしまったと言ってた。
私も一緒に『罪』を償えたら……いいな。
「嗚呼! そうさぁ、俺はその言葉が聞きたかったんだよ、メアリー。やっぱり君は俺のラプンツェル……! 最高に幸せな気分だよ」
薫様は洋装を下に落とすと、突然私を抱き上げて廊下でくるくると回りだした。私は悲鳴をあげて、頬を上気させる薫様を見下ろして慌てたの。だって、薫様は背が高いから頭をぶつけそうになるんだもの!
「きゃあ! 薫様、怖いよ! 怖いってば、降ろして!」
「あはは、ごめんよ、メアリー。つい嬉しくて気が狂いそうになったんだ。いいや、俺はもうメアリーに狂ってるのかなぁ? ふふふ、でもね、教えてあげる。書生は自分から手を汚すような男じゃ無いんだ、軟弱で狡い男さ」
私が首を傾げると、薫様は洋装を拾い上げて額に口づけてくれた。そして眼鏡を少し上げると妖艶に笑ったの。
「今日は機嫌がいいから、少しメアリーに教えてあげようか。妃咲家は先祖代々、不思議な能力を持っていたんだよ。それは何故か娘に受け継がれるようでね。長男しか子宝に恵まれなかった母さんは、嫁いできた赤の他人だったから、そのことを知らなかったみたいだけど」
「でも、薫様は男の人なのにどうして? あの『梅子伯母さん』と『小春ちゃん』も不思議な力を持ってるの?」
「どうしてだろうねぇ。『郁人』は妃咲家の中で男なのにも関わらず、いろんな能力を持って生まれてきたのさ。俺には及ばないけど、あの女も記憶をたどるという能力を持ってる。小春は幸運なことに、妃咲家の能力が受け継がれなかったようだけどね」
薫様のお話だと娘の全員が受け継ぐわけじゃなくて、例えば三人生まれたらその中の一人が受け継いだり、次の代の孫に能力が現れたりするんだって。
だけど初めて『郁人』さんに能力が受け継がれて妃咲のお家は大騒動だったみたい。それも他の人よりも強くてたくさんの能力を持っていた。
でも……薫様の反応を見ると、薫様も伯母さんのことが嫌いなのかな?
「そうだったの……。ねぇ、薫様。みんな『梅子伯母さん』が嫌いなの?」
「はっ、勿論だとも! あの女は穢らわしい豚だ。妃咲家の屋敷にいた女どもはどいつもこいつもおぞましい奴らさ。郁人だって………郁人だって、あの女たちがいなければ壊れずにすんだのに」
薫様がそういうと、廊下に置かれていた燭台の蠟燭に火がついた。驚いてそちらを見ると、薫様はため息をついて私を抱きしめた。
何があったのかわからないけど、たぶん薫様は『梅子叔母さん』のことに触れられたくなかったんだね。『郁人』さんもずっと眠り続けてしまうほど嫌な思いをして………。
「もう、あんな女の話はよそうメアリー。俺は君の可愛らしい洋装姿が見たいんだからさ。さぁ、行こう……夜会では君が主役なんだからな」
「うん、薫様……もう言わないから大丈夫だよ」
薫様に手を引かれて入ったお部屋は、お屋敷のお庭に面したお部屋だった。こんなところがあったなんて、ちっとも知らなかった。
このお屋敷は、たくさん知らないお部屋があるから、お庭でお散歩していてもここに気づかなかったよ。
赤の絨毯にシャンデリア、クリーム色のカーテン、お庭が見える場所には、お姫様が座るようなソファーとテーブル、そして白と茶色の英国製のベッドが置いてあった。薫様は帝都の家具じゃなくて異国のアンティークが好きなんだって。
和装を好む薫様なのに、なんだか不思議ね。
「さぁ、メアリー。俺が手伝ってあげよう。そうだな……この純白のドレス、君らしくて素敵だし、ラプンツェルも捨てがたい」
「あんまり、お腹が痛くなる洋装は好きじゃないの。お着物の帯より苦しいんだもの」
「コルセットかい? 英国じゃ昔の御伽噺のような洋装は流行ってないから安心してくれ。書生が用意したのは最新のものだ。それにしても、本当にメアリーは美しいな」
お着物の帯を取って貰って脱ぐのを手伝ってもらい、白いビスチェを着せられると、薫様がうっとりと背後で囁いた。
やだ、恥ずかしいよ……。私、あんまり異国の下着が慣れないの。
だって女中さんがあんまり肌を出しちゃだめって怒るんだもん。
「恥ずかしいから、ゃ……早くドレスを」
「待ってくれないか、メアリー。試したいことができたんだよ。この間は俺の子を孕めていなくて残念だったけど、またたくさん子種を注がなくちゃねぇ」
「えっ、ゃ、だ、だって洋装の試着する約束……ひぁっ」
薫様は軽々と私を抱き上げると、そのままふかふかのソファーに座った。クスクス笑うとまるで猫のように耳朶と首筋に舌を這わせるの。
柔らかな舌がくすぐるように動くと、私は思わずピンと足先を伸ばして吐息を漏らした。
「だめ、だめなのぉ、こんなお昼間から『まぐわい』……お庭も見えるし、せめて、か、カーテン閉めて、薫……んんっ、はぁっ」
「ちがうよ、性交だ、メアリー。あぁ、メアリーは庭師を気にしてるのかい? あの男はもう爺さんじゃないか」
薫様の唇が、首筋や鎖骨を舐めて口付ける音が響くと私は恥ずかしくなって真っ赤になる。お爺さんでも、見られるのはいや。だって、図書館の時みたいに知らない人じゃないもん!
「はぁっ、あっ、んっ、やぁ、薫様、はぁ、はぁ、んん、や、やぁ、知ってる人だと、もっと恥ずかしいっっ」
「――――んっ、そうだ。メアリー、ちょうどおやつの時間だね」
胸元と首筋のそこらじゅうを口付けていた薫様が思い出したように顔をあげて、私は少しほっとしたけど、呼び鈴を鳴らされて目を見開いた。すぐにあの無口な女中さんがやってきてしまって隠れるなんてできなかった。
私は恥ずかしくて真っ赤になると、薫様の胸板に顔をうずめたの。
「旦那様、お呼びでございますか」
「嗚呼、キヨ。俺の可愛い妻のために今日のメアリーのおやつはホットケーキを用意してくれないか。蜂蜜はいつもよりたっぷり用意してくれ」
そういうと、薫様は私の内股を撫でて指先で下着の上からあそこを撫でた。無愛想な女中さんを涙で潤んだ目で見ると、動揺するように目を逸らすの。
薫様が淫靡に微笑むと、女中さんは頬を染めて小さく返事をしたと思ったら、お部屋から出ていったんだよ。とん、とん、と胸板を叩いて抗議すると、薫様は笑って口付けてきた。
「んっ、んんぅ、はぁっ、薫さ、はぁっ、もうキヨさんのお顔、見れないよ、いじわる」
「怒った顔も可愛いねぇ、メアリー。今日は楽しいことをしたいんだよ。君はどこもかしこも甘いから、もっと甘くして味わいたいんだ」
薫様の言葉に、私は首を傾げた。
そんな私を見ると薫様は額に口付ける。
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