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6 運命の歯車は回りだして②
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お客様は大丈夫なの?
宿泊客は、屈強な戦士や、熟練の魔法使いの人ばかりじゃない。地方から帝都に来た家族連れの観光客もいたわ。あのお客様たちは大丈夫なの……? 小さな子供もいたのに心配だわ。
どうしてこんな事になったの。ここが有名になってしまったから、儲けていると思われて、盗賊団に狙われたのかしら。それとも、もしかして私が原因なの?
ぐるぐるといろんな考えが頭を回って、答えが出ない。私は、お母さんの胸に顔を埋めて震えるしかなかったの。私が、強いソルフェージュの騎士だったら、お父さんを一人で行かせずに済んだのに。
それから、どれくらいの時間がたったのかしら。さっきの怒号や剣がぶつかり合うような、金属音が全く聞こえなくなっていたの。静か過ぎて、逆に嫌な予感がする。
ううん、きっと全員で盗賊団を追い払ったんでしょう。悪い事を考えたら悪い結果を引き寄せちゃうって、いつもお母さんが言っていたもの。
でも、お父さんは、いつまでたっても戻って来なかった。
「ドルチェ、静かになったみたい。お母さん少し様子を見てくるから、貴女はここで待っていて。大丈夫だったら、貴女を呼びに来てあげるから」
「お母さん、私も一緒に行く! お母さんまで戻ってこなかったら、私」
お母さんの顔は青褪めていて、唇の色も白くなっていた。私だって、恐怖のあまりそんな顔になっていると思う。私の真剣な訴えに、お母さんは気押されるようにして頷くと、酒場の方に二人で向かうことにしたの。
私は、万が一のためにペーパーナイフを手に取ると、ポケットの中に忍ばせた。そして、息を殺しながら静かに部屋から出たの。
「…………」
お母さんと、手を繋ぎながら身を低くし、音を立てないようにして酒場の方へと向かう。むっとする熱気と、嗅ぎ慣れない鉄臭い匂いがして、私の背中には冷や汗が伝ったの。
ワインの酒樽が転がり、テーブルはひっくり返って、食器もあちらこちらに無造作にぶち撒けられていた。
床や椅子には、お客様らしき方々が血を流して倒れていた。二階の手摺りには、洗濯物のように両手を垂らして、絶命している女性の姿が見えて、私は悲鳴を上げないように、手で自分の口を塞ぎ、ガタガタと震えが止まらなくなってしまったの。
客室は乱暴に、すべての部屋が開け放たれていた。中には扉に血飛沫が飛び散っているお部屋もあって、涙が溢れてきた。
「なに……これ………酷い……いや……おかぁさ」
「貴方! 貴方ぁ! 嘘よ、どうして、嘘よ」
お母さんが取り乱して大声を出したから、私は息が止まりそうになって、反射的にそちらを見た。
そこには、倒れこんでいたお父さんの体が見えた。お母さんが半狂乱になりながら縋り付いていたの。
お父さんが倒れていた床には大きな血溜まりが出来ている。私は頭の中が混乱し、まるで首を誰かに締められたように苦しくなり、言葉が一言も発せなくなっていたの。
頭がガンガンして、目の前の光景が現実だなんて、受け入れられない。きっとあのまま疲れて眠ってしまって、悪い夢を見ているんだわ。だって、私達何も悪い事なんてしていないもん……。毎日、真面目にお仕事をしてる。日曜には神殿に通って、神様にお祈りをして、皆と同じように生きてるだけだもの。
だから、こんなの夢よ。夢だもの……!
「どうして……どうして……貴方」
お母さんは壊れたように、大声で泣き叫んでいた。ゆっくりと右から人影が現れて、剣を振り下ろすと、それはお母さんの背中を刺した。盗賊の男が、無表情に何度もお母さんの背中を剣で刺していて、私は我に返ると泣きながら絶叫した。
「いやぁぁ!! やめてぇぇ!!」
私の絶叫を聞くと、盗賊風の男女が無言のまま、ヌッと暗闇から出てきた。
誰一人瞬きもせず、顔についた血飛沫も拭わない。無表情で私を見る彼らは、なんだか普通の人間には思えないわ。ううん、人間だけじゃない。これまで私が話した事のある、どの獣人やエルフ、オーガのお客様とも異なっていて、生気がなく、全く感情が読めないの。
彼らは機械的に首を傾げると、ゆっくりと二階の手摺りや、床を這うようにして私に近付いてきた。
「い、いや」
私は腰が抜け、その場でへなへなと座り込んでしまったの。割れた硝子なのか、床に手をついた瞬間に、鋭い破片で手を切ったみたい。痛みが走ったけれど、そんなこと今は気にしていられない。私は恐怖で目を見開き、動けなくて、ガタガタと震えるしかなかったわ。
お客様もお父さんもお母さんも、全員殺されちゃった。レジェロ様のあの冗談めいた言葉は、おふざけの忠告なんかじゃなくて『警告』だったんだ。
お母さんを殺した盗賊が、私の腕を取った瞬間、悲鳴を上げて、無意識にその男の顔を押し退けようと、怪我をした手の平を押し付けたわ。その瞬間に、酒場に絶叫が響いた。
『ギャァァァァァァ!』
私の手から僅かに溢れた血が、男の顔に触れた瞬間、まるで酸がかかったように煙がもくもくと立ち上がり、顔が溶け、そこから醜く歪んだ魔物のような邪悪な顔が見えたの。
「ま、魔物!?」
それは、ギャアギャアと悲鳴を上げながら、私から手を離すと、転がり回っている。
魔物達は、カチカチと歯音を鳴らしてざわめくと、無表情だった彼らの顔が一気に殺意へと変わり、怒り狂ったように表情が険しくなっている。
これで、自分だけ置いていかれず、家族と一緒に死ねるんだという安堵感と、まだ死にたくないという気持ちで、私の頭は混乱し、心臓が破裂しそうなくらい、バクバクと音を立てていたの。
にじり寄るようにして、魔物が私に近付いてきた。
「い、いや、助けてっ……誰か、助けてぇ!」
別の魔物が私の腕を掴もうとした瞬間、それの眼球にクロスボウの矢が刺さると、声も無く絶命した。仲間を殺された瞬間を目撃した彼らは、身構え、カチカチと歯を鳴らせて警戒し、威嚇しているみたい。
「えっ………?」
その瞬間、窓ガラスが次々に割れる音がして、いくつもの投げナイフが私の頭上や横を通り過ぎ、魔物の喉や目、心臓に突き刺さった。私は悲鳴を上げながら両耳を塞ぐと、体を屈めたの。
「よいしょっと!」
誰かが軽快に酒場の窓から中に入ってきた。もしかして、騒ぎを聞きつけたランスロット様……?
ううん、まさか……そんな筈ないよね……?
淡い期待を胸に、背後を振り返るとそこには、この場に一番似つかわしくない相手が居たの。ガラスを踏み砕き、クロスボウを背中に直し、右手のピースサインから紅玉の瞳を見せたレジェロ様が、口内ピアスと、スプリットタンの舌をべぇと見せつけると、ニヤリと笑った。
「じゃじゃーーん♪ 正義の味方は遅れてやってくるもんっしょ。やっほーー、ドルチェちゃん♡ レジェロ様、参上だよ♪」
「れ、レジェロ様……! ど、どうして」
どうしてレジェロ様が……レジェロ様が私を助けに来てくれるなんて。一階にいた魔物たちは投げナイフで即死した奴も居たけれど、怪我を負って、さらに興奮してるようだったわ。
二階にいた魔物たちが、カチカチと音を立てながら体を揺らし襲い掛かってきた。レジェロ様は両手を交差して、腰から暗殺者が使うダガーを取り出すと、彼らを睨みつけ口端を上げた。
「ほーーん。変身する者ねぇ。クソ雑魚かぁ。軽い運動にもならねぇって感じぃ? 片付けっから待っててね」
シェイプシフターって、聞いたことがあるわ。
動物やいろんな種族の皮を、魔法を使って剥ぎ取り、皮を被って擬態する魔物だったはず……。でもどうして、帝都にこんな魔物が出るの?
その瞬間、軽やかに両手のアサシンダガーを使い、シェイプシフターの攻撃を交わし、回転しながら斬りつける。
敵の胸に突き刺して、そのまま背後から襲いかかってくるシェイプシフターに向かってレジェロ様は回し蹴りをする。靴に忍ばせていた鋭いナイフが飛び出し、魔物の首に深々と刺さった。
そして、軽やかに離れると天井から私に向かって襲い掛かってきたシェイプシフターに、コートの内側から取り出した魔銃を、片手にくるりと回転させて持つと、レジェロ様の首と顔のタトゥーが青白く光った。発砲音がして魔力の弾丸が数発飛び出し、頭上でシェイプシフターが、破裂する音がしたの。
剣がぶつかり合う音と、魔銃の破裂音、血の匂い、魔物の腐敗した土のような匂い。
お父さんとお母さんの変わり果てた姿が目に入ってきた。だんだんと自分と世界が遠く引き離されてしまったように、周囲の小さくなっていく。そして目の前が真っ暗になったの。
――――熱い。
「さぁて、これでよしっと♪」
私はいつの間にかレジェロ樣に抱き上げられていて、室内は火の海になっていたの。混濁する意識の中で、私はそれをぼんやりと見ていた。私は涙を流しながら、無意識にうわ言を呟いているみたい。
「お父さん……お母さん……。お家が……燃えてる……レジェロ様……お家が……」
「ごめんねぇ、ドルチェちゃん。君が生きてると、困る奴がいるみたいだからさぁ。あの中にちょうど女の死体があって良かったわ。さて人だかりができる前に、お家に帰りましょ♡」
レジェロ様は炎の中でニヤリと笑った。まるで破壊の神みたい。そこで私の意識は再び途切れた。
宿泊客は、屈強な戦士や、熟練の魔法使いの人ばかりじゃない。地方から帝都に来た家族連れの観光客もいたわ。あのお客様たちは大丈夫なの……? 小さな子供もいたのに心配だわ。
どうしてこんな事になったの。ここが有名になってしまったから、儲けていると思われて、盗賊団に狙われたのかしら。それとも、もしかして私が原因なの?
ぐるぐるといろんな考えが頭を回って、答えが出ない。私は、お母さんの胸に顔を埋めて震えるしかなかったの。私が、強いソルフェージュの騎士だったら、お父さんを一人で行かせずに済んだのに。
それから、どれくらいの時間がたったのかしら。さっきの怒号や剣がぶつかり合うような、金属音が全く聞こえなくなっていたの。静か過ぎて、逆に嫌な予感がする。
ううん、きっと全員で盗賊団を追い払ったんでしょう。悪い事を考えたら悪い結果を引き寄せちゃうって、いつもお母さんが言っていたもの。
でも、お父さんは、いつまでたっても戻って来なかった。
「ドルチェ、静かになったみたい。お母さん少し様子を見てくるから、貴女はここで待っていて。大丈夫だったら、貴女を呼びに来てあげるから」
「お母さん、私も一緒に行く! お母さんまで戻ってこなかったら、私」
お母さんの顔は青褪めていて、唇の色も白くなっていた。私だって、恐怖のあまりそんな顔になっていると思う。私の真剣な訴えに、お母さんは気押されるようにして頷くと、酒場の方に二人で向かうことにしたの。
私は、万が一のためにペーパーナイフを手に取ると、ポケットの中に忍ばせた。そして、息を殺しながら静かに部屋から出たの。
「…………」
お母さんと、手を繋ぎながら身を低くし、音を立てないようにして酒場の方へと向かう。むっとする熱気と、嗅ぎ慣れない鉄臭い匂いがして、私の背中には冷や汗が伝ったの。
ワインの酒樽が転がり、テーブルはひっくり返って、食器もあちらこちらに無造作にぶち撒けられていた。
床や椅子には、お客様らしき方々が血を流して倒れていた。二階の手摺りには、洗濯物のように両手を垂らして、絶命している女性の姿が見えて、私は悲鳴を上げないように、手で自分の口を塞ぎ、ガタガタと震えが止まらなくなってしまったの。
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「なに……これ………酷い……いや……おかぁさ」
「貴方! 貴方ぁ! 嘘よ、どうして、嘘よ」
お母さんが取り乱して大声を出したから、私は息が止まりそうになって、反射的にそちらを見た。
そこには、倒れこんでいたお父さんの体が見えた。お母さんが半狂乱になりながら縋り付いていたの。
お父さんが倒れていた床には大きな血溜まりが出来ている。私は頭の中が混乱し、まるで首を誰かに締められたように苦しくなり、言葉が一言も発せなくなっていたの。
頭がガンガンして、目の前の光景が現実だなんて、受け入れられない。きっとあのまま疲れて眠ってしまって、悪い夢を見ているんだわ。だって、私達何も悪い事なんてしていないもん……。毎日、真面目にお仕事をしてる。日曜には神殿に通って、神様にお祈りをして、皆と同じように生きてるだけだもの。
だから、こんなの夢よ。夢だもの……!
「どうして……どうして……貴方」
お母さんは壊れたように、大声で泣き叫んでいた。ゆっくりと右から人影が現れて、剣を振り下ろすと、それはお母さんの背中を刺した。盗賊の男が、無表情に何度もお母さんの背中を剣で刺していて、私は我に返ると泣きながら絶叫した。
「いやぁぁ!! やめてぇぇ!!」
私の絶叫を聞くと、盗賊風の男女が無言のまま、ヌッと暗闇から出てきた。
誰一人瞬きもせず、顔についた血飛沫も拭わない。無表情で私を見る彼らは、なんだか普通の人間には思えないわ。ううん、人間だけじゃない。これまで私が話した事のある、どの獣人やエルフ、オーガのお客様とも異なっていて、生気がなく、全く感情が読めないの。
彼らは機械的に首を傾げると、ゆっくりと二階の手摺りや、床を這うようにして私に近付いてきた。
「い、いや」
私は腰が抜け、その場でへなへなと座り込んでしまったの。割れた硝子なのか、床に手をついた瞬間に、鋭い破片で手を切ったみたい。痛みが走ったけれど、そんなこと今は気にしていられない。私は恐怖で目を見開き、動けなくて、ガタガタと震えるしかなかったわ。
お客様もお父さんもお母さんも、全員殺されちゃった。レジェロ様のあの冗談めいた言葉は、おふざけの忠告なんかじゃなくて『警告』だったんだ。
お母さんを殺した盗賊が、私の腕を取った瞬間、悲鳴を上げて、無意識にその男の顔を押し退けようと、怪我をした手の平を押し付けたわ。その瞬間に、酒場に絶叫が響いた。
『ギャァァァァァァ!』
私の手から僅かに溢れた血が、男の顔に触れた瞬間、まるで酸がかかったように煙がもくもくと立ち上がり、顔が溶け、そこから醜く歪んだ魔物のような邪悪な顔が見えたの。
「ま、魔物!?」
それは、ギャアギャアと悲鳴を上げながら、私から手を離すと、転がり回っている。
魔物達は、カチカチと歯音を鳴らしてざわめくと、無表情だった彼らの顔が一気に殺意へと変わり、怒り狂ったように表情が険しくなっている。
これで、自分だけ置いていかれず、家族と一緒に死ねるんだという安堵感と、まだ死にたくないという気持ちで、私の頭は混乱し、心臓が破裂しそうなくらい、バクバクと音を立てていたの。
にじり寄るようにして、魔物が私に近付いてきた。
「い、いや、助けてっ……誰か、助けてぇ!」
別の魔物が私の腕を掴もうとした瞬間、それの眼球にクロスボウの矢が刺さると、声も無く絶命した。仲間を殺された瞬間を目撃した彼らは、身構え、カチカチと歯を鳴らせて警戒し、威嚇しているみたい。
「えっ………?」
その瞬間、窓ガラスが次々に割れる音がして、いくつもの投げナイフが私の頭上や横を通り過ぎ、魔物の喉や目、心臓に突き刺さった。私は悲鳴を上げながら両耳を塞ぐと、体を屈めたの。
「よいしょっと!」
誰かが軽快に酒場の窓から中に入ってきた。もしかして、騒ぎを聞きつけたランスロット様……?
ううん、まさか……そんな筈ないよね……?
淡い期待を胸に、背後を振り返るとそこには、この場に一番似つかわしくない相手が居たの。ガラスを踏み砕き、クロスボウを背中に直し、右手のピースサインから紅玉の瞳を見せたレジェロ様が、口内ピアスと、スプリットタンの舌をべぇと見せつけると、ニヤリと笑った。
「じゃじゃーーん♪ 正義の味方は遅れてやってくるもんっしょ。やっほーー、ドルチェちゃん♡ レジェロ様、参上だよ♪」
「れ、レジェロ様……! ど、どうして」
どうしてレジェロ様が……レジェロ様が私を助けに来てくれるなんて。一階にいた魔物たちは投げナイフで即死した奴も居たけれど、怪我を負って、さらに興奮してるようだったわ。
二階にいた魔物たちが、カチカチと音を立てながら体を揺らし襲い掛かってきた。レジェロ様は両手を交差して、腰から暗殺者が使うダガーを取り出すと、彼らを睨みつけ口端を上げた。
「ほーーん。変身する者ねぇ。クソ雑魚かぁ。軽い運動にもならねぇって感じぃ? 片付けっから待っててね」
シェイプシフターって、聞いたことがあるわ。
動物やいろんな種族の皮を、魔法を使って剥ぎ取り、皮を被って擬態する魔物だったはず……。でもどうして、帝都にこんな魔物が出るの?
その瞬間、軽やかに両手のアサシンダガーを使い、シェイプシフターの攻撃を交わし、回転しながら斬りつける。
敵の胸に突き刺して、そのまま背後から襲いかかってくるシェイプシフターに向かってレジェロ様は回し蹴りをする。靴に忍ばせていた鋭いナイフが飛び出し、魔物の首に深々と刺さった。
そして、軽やかに離れると天井から私に向かって襲い掛かってきたシェイプシフターに、コートの内側から取り出した魔銃を、片手にくるりと回転させて持つと、レジェロ様の首と顔のタトゥーが青白く光った。発砲音がして魔力の弾丸が数発飛び出し、頭上でシェイプシフターが、破裂する音がしたの。
剣がぶつかり合う音と、魔銃の破裂音、血の匂い、魔物の腐敗した土のような匂い。
お父さんとお母さんの変わり果てた姿が目に入ってきた。だんだんと自分と世界が遠く引き離されてしまったように、周囲の小さくなっていく。そして目の前が真っ暗になったの。
――――熱い。
「さぁて、これでよしっと♪」
私はいつの間にかレジェロ樣に抱き上げられていて、室内は火の海になっていたの。混濁する意識の中で、私はそれをぼんやりと見ていた。私は涙を流しながら、無意識にうわ言を呟いているみたい。
「お父さん……お母さん……。お家が……燃えてる……レジェロ様……お家が……」
「ごめんねぇ、ドルチェちゃん。君が生きてると、困る奴がいるみたいだからさぁ。あの中にちょうど女の死体があって良かったわ。さて人だかりができる前に、お家に帰りましょ♡」
レジェロ様は炎の中でニヤリと笑った。まるで破壊の神みたい。そこで私の意識は再び途切れた。
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