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1 物語の終わり
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――――物語の終わりはいつもそう。
世界を救う英雄の隣には、素敵なお姫様がいる。私の恋も同じようにある日突然、前触れもなく終わりを告げた。
アレクサンドラ大陸の人間とエルフと獣人たちは、深淵の淵から現れた邪神と、恐ろしい魔物たちによって幾度となく、苦しめられてきた。もちろん、邪神を討伐しようと、長い間何度も連合騎士団や、大魔導士様たちが挑んだけれど、命からがら逃げ帰ってきたのだ。
けれど、神々の啓示を受けた黒衣の竜騎士と呼ばれるランスロット様が、ソルフェージュ連合騎士団に入られ、神竜の背に乗り、お仲間と共に邪神を地底の奥底に縛り付けて封印をした。
話によると、邪神はランスロット様が神々から授かった『聖なる力』で永遠に痛みを刻まれる鎖で繋がれたと聞いたけれど、真相は分からない。ともかくヘドロのような黒い魔物たちは、ぐずぐずと崩れ落ちて消え去り、アレクサンドラ大陸に平和が訪れたの。
そして、ランスロット様はソルフェージュ帝国に帰還し、星の女神の生まれ変わりと言われている、第二皇女のメヌエット様と婚約したの。サラサラの銀髪の長い髪に、深い緑色の温和な瞳、優しく慈悲深い性格で、彼女は誰からも愛されているお姫様だった。
ランスロット様と恋仲になってもおかしくないし、メヌエット様ならふさわしいように思えるわ。
「ら、ランスロット様……。婚約おめでとうございます」
「ああ、ありがとう?」
黒髪に涼しい青色の瞳、端正な顔立ち。
今夜は黒衣の竜騎士の異名である黒い甲冑は、身につけていらっしゃらない。明日になれば、新しく与えられた大きな城でランスロット公爵として過ごす……らしい。
同じように、邪神の封印を手伝ったお仲間とお酒を飲んでいて、偶然私の耳に入ってきたの。共に戦ったお仲間は全部で四人。
大男の人間の戦士、獣人の格闘家、エルフの女性の魔法剣士、それにエルフの盗賊……暗殺者?の方だわ。
失礼だけどお仲間のお名前は、正直なところ、魔法剣士さん以外は、あまりよく覚えてないの。
宿酒場はこの街にたくさんあるし、本当に数回しかここに立ち寄られたことはないから……というのは言い訳。
「ごゆっくり、お過ごしください」
竜の背中に乗る姿を見たあの日から、私はランスロット様に恋をして、邪神の封印と共に失恋したの。初めて会話したのは、以前ふらっとお店に立ち寄られ、お酒と鹿肉の燻製をお出しした時に、ほんの少し今日の天気のお話をした時だけ。
ランスロット様は、私の名前なんて知らないし、きっと顔も覚えてないと思う。だから私に話しかけられて、微妙な反応をされた。
私はすごく恥ずかしくなって、いたたまれない気持ちになり、お盆を持って頭を下げると立ち去ろうとした。
その時、不意に横から誰かに手首を掴まれて、心臓が止まりそうになる。
「なぁ、あんた酒が切れてんだわ。追加で一杯頼んでもいーい? 君のおすすめのやつでいいからさ♪」
「は、はい……畏まりました」
私の手を掴んだのは、エルフの盗賊らしき人だ。腰には二本のダガーがさしてあり、クロスボウを背負っている。他にもいろいろ……私にはよくわからない武器を持っていた。
銀髪の波打つ髪、顔と首には魔法文字が刻まれたサソリのタトゥーをしている。
エルフなので、端正な顔立ちをしているけれど、物凄く目つきが悪い。ピアスのせいもあるのかな?
本当に、ランスロット様のお仲間であるのが不思議なくらいだわ。
「ちょっとレジェロ。あんまりここの宿の子を、驚かせるようなことをするのはやめて。私は、結構この宿で世話になってるんだから」
そう言って、目のやり場に困る格好をしているのは、エルフの魔法剣士の女性。紅一点だから、彼女だけは印象に残ってるの。金髪で尖った耳に切れ長の赤い瞳が綺麗だわ。お名前はたしかフィーネ様。直接お話はしたことはないけれど、ランスロット様と旅ができていいなぁ。あの目つきの悪いエルフは、レジェロ様って言うのね。
でも良かった、フィーネ様がお名前を呼んでくれていなかったら、きっと私は大恥かいたかもしれないもの。この帝国では英雄御一行様のお名前は、全員知ってて当たり前なんだから。
「すぐにご用意いたします、レジェロ様」
「は~~い。相変わらず口煩いねぇ、お前は。また皺が増えるぞ」
レジェロ様は私に手を振ると、フィーネ様に嫌味を言って、ガンッと椅子を蹴られた。それを笑う獣人の方。
あとでお父さんに、こっそりと他の方のお名前も聞いておかなくちゃ。ランスロット様以外に興味がないなんて知られたら、心配されちゃうわ。
世界を救う英雄の隣には、素敵なお姫様がいる。私の恋も同じようにある日突然、前触れもなく終わりを告げた。
アレクサンドラ大陸の人間とエルフと獣人たちは、深淵の淵から現れた邪神と、恐ろしい魔物たちによって幾度となく、苦しめられてきた。もちろん、邪神を討伐しようと、長い間何度も連合騎士団や、大魔導士様たちが挑んだけれど、命からがら逃げ帰ってきたのだ。
けれど、神々の啓示を受けた黒衣の竜騎士と呼ばれるランスロット様が、ソルフェージュ連合騎士団に入られ、神竜の背に乗り、お仲間と共に邪神を地底の奥底に縛り付けて封印をした。
話によると、邪神はランスロット様が神々から授かった『聖なる力』で永遠に痛みを刻まれる鎖で繋がれたと聞いたけれど、真相は分からない。ともかくヘドロのような黒い魔物たちは、ぐずぐずと崩れ落ちて消え去り、アレクサンドラ大陸に平和が訪れたの。
そして、ランスロット様はソルフェージュ帝国に帰還し、星の女神の生まれ変わりと言われている、第二皇女のメヌエット様と婚約したの。サラサラの銀髪の長い髪に、深い緑色の温和な瞳、優しく慈悲深い性格で、彼女は誰からも愛されているお姫様だった。
ランスロット様と恋仲になってもおかしくないし、メヌエット様ならふさわしいように思えるわ。
「ら、ランスロット様……。婚約おめでとうございます」
「ああ、ありがとう?」
黒髪に涼しい青色の瞳、端正な顔立ち。
今夜は黒衣の竜騎士の異名である黒い甲冑は、身につけていらっしゃらない。明日になれば、新しく与えられた大きな城でランスロット公爵として過ごす……らしい。
同じように、邪神の封印を手伝ったお仲間とお酒を飲んでいて、偶然私の耳に入ってきたの。共に戦ったお仲間は全部で四人。
大男の人間の戦士、獣人の格闘家、エルフの女性の魔法剣士、それにエルフの盗賊……暗殺者?の方だわ。
失礼だけどお仲間のお名前は、正直なところ、魔法剣士さん以外は、あまりよく覚えてないの。
宿酒場はこの街にたくさんあるし、本当に数回しかここに立ち寄られたことはないから……というのは言い訳。
「ごゆっくり、お過ごしください」
竜の背中に乗る姿を見たあの日から、私はランスロット様に恋をして、邪神の封印と共に失恋したの。初めて会話したのは、以前ふらっとお店に立ち寄られ、お酒と鹿肉の燻製をお出しした時に、ほんの少し今日の天気のお話をした時だけ。
ランスロット様は、私の名前なんて知らないし、きっと顔も覚えてないと思う。だから私に話しかけられて、微妙な反応をされた。
私はすごく恥ずかしくなって、いたたまれない気持ちになり、お盆を持って頭を下げると立ち去ろうとした。
その時、不意に横から誰かに手首を掴まれて、心臓が止まりそうになる。
「なぁ、あんた酒が切れてんだわ。追加で一杯頼んでもいーい? 君のおすすめのやつでいいからさ♪」
「は、はい……畏まりました」
私の手を掴んだのは、エルフの盗賊らしき人だ。腰には二本のダガーがさしてあり、クロスボウを背負っている。他にもいろいろ……私にはよくわからない武器を持っていた。
銀髪の波打つ髪、顔と首には魔法文字が刻まれたサソリのタトゥーをしている。
エルフなので、端正な顔立ちをしているけれど、物凄く目つきが悪い。ピアスのせいもあるのかな?
本当に、ランスロット様のお仲間であるのが不思議なくらいだわ。
「ちょっとレジェロ。あんまりここの宿の子を、驚かせるようなことをするのはやめて。私は、結構この宿で世話になってるんだから」
そう言って、目のやり場に困る格好をしているのは、エルフの魔法剣士の女性。紅一点だから、彼女だけは印象に残ってるの。金髪で尖った耳に切れ長の赤い瞳が綺麗だわ。お名前はたしかフィーネ様。直接お話はしたことはないけれど、ランスロット様と旅ができていいなぁ。あの目つきの悪いエルフは、レジェロ様って言うのね。
でも良かった、フィーネ様がお名前を呼んでくれていなかったら、きっと私は大恥かいたかもしれないもの。この帝国では英雄御一行様のお名前は、全員知ってて当たり前なんだから。
「すぐにご用意いたします、レジェロ様」
「は~~い。相変わらず口煩いねぇ、お前は。また皺が増えるぞ」
レジェロ様は私に手を振ると、フィーネ様に嫌味を言って、ガンッと椅子を蹴られた。それを笑う獣人の方。
あとでお父さんに、こっそりと他の方のお名前も聞いておかなくちゃ。ランスロット様以外に興味がないなんて知られたら、心配されちゃうわ。
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