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仄暗い秘密②

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 琉花さんは梨子の膝を枕にして眠っているので起こさないようにして、僕と梨子は加奈さんと思われる女性のアカウントを共有する。
 彼女のSNSは友達とカフェに行ったり、恋人と思われる男性と旅行に行ったり、充実した生活を過ごしているように思われた。
 最近の投稿は、曽根さんが自殺した当日だった。
 花の画像と、曽根さんの死を追悼ついとうする文面が書かれている。
 
『多くの人が問題を抱えている。友達だけじゃない。私も、子供たちの声をきちんと聞けるように教員として身が引き締まりました。
 いまこそ、本当に命を大事にする教育が必要です』

 最後に書かれた文面から、彼女が教員をしている事が分かった。まさかこの日にまたしても高校時代の友人が飛び降りるなんて思いもよらなかっただろう。
 それから、更新は止まっているけど彼女の様子は他の三人とは違うように思えた。
 もしかして『闇からの囁き』にアクセスしていないのだろうか。
 
『ねぇ、健くん。従兄妹と連絡ついたんだけど話してみたいって……話してみる? あ、もう一人親戚もいるけど……いい?』
「うん、いいよ。初対面だけど……オカルト方面の話が出るかも知れないけど大丈夫かな? なるべく掠らないようにするけど」
『あ、それは大丈夫だと思う』

 梨子の反応はなんだか微妙な感じだったが、彼女の朝比奈女子高等学校に通っていた人なら、詳しい話が聞けるだろうと思った。
 しばらくして、ホストの僕が呼び出すと梨子の従兄妹と思われるギャルと、スキンヘッドの僕と同い年位の男が現れて、心なかで一瞬驚いてしまった。

『いぇいいぇい、健くんはおはつー! いま大丈夫そ? いつメンじゃないから緊張するかもだけど、よろしくねぇ。
 健くん、梨子のカレシなの? キュンじゃん尊い~』
『梨子が言ってた霊感オタク、やっと会えたな。梨子から聞いてるかもだけど、俺たち寺生まれでさぁ。俺は跡取り息子の千堂明せんどうあきら、こっちは姉貴の亜矢子あやこ……俺の方は霊感あるんだけど、あんたの守護霊めっちゃ美人だな! 同い年だしタメでいいよ』

 僕とばぁちゃんは思わずその勢いに固まってしまった。人生の中でこういうノリの属性の人とまともに話した事が無い。
 いわゆる『陽キャ』と言われる人たちだが、緊張する。和風な室内を見ても寺生まれだと言う事は嘘ではないだろう。
 梨子が微妙な反応だったこと、なんとなく今も顔が引きつってる理由がわかるような気がする。

『また変なのが来たよ……。寺の跡取り息子って柄じゃないねぇ。ま、霊感は本当にあるようだし、目は悪くないようだけど』
「は、はじめまして。あ、あの僕は彼氏じゃなくて。とりあえずお話聞かせて貰ってもいいですか?」

 ばぁちゃんは美人だと言われて、内心嬉しそうにしているが、僕はもう完全に不良に絡まれた学生みたいに挙動不審きょどうふしんになりながら、亜矢子さんに話しかけた。
 それにしても霊感オタク……悲しすぎるあだ名なんだけど、梨子。

『えー―、まだなんだ。アオハルじゃん! 朝比奈ねぇ、いろんな思い出あったなぁ。あの時は亜矢子、クソ真面目だったんだけど。
 美術部だよね? 朝比奈の美術部って結構有名でさぁ。県のコンテストとかで入賞してる生徒が多かった聞いてたよ』

 亜矢子さんは運動部だったそうだが、朝比奈女子高等学校は文化部に力を入れていて、吹奏楽や美術部は実力ぞろいのメンバーだったという。
 とはいえ、廃校になる数年前から生徒の数は少なかったそうだ。

『あ、うんうん。この人たち見た事をある。一個上の先輩だったわ~~。文化部って普段何してるかわからないじゃん?
 だけど、文化祭の時は生き生きしてるんだよねぇ~~』

 シェアされた四人の記念写真を亜矢子さんと明くんが見ていた。

『この二人、飛び降り自殺した奴じゃね? なんかもうこの時からこいつらのオーラが黒いな……。いや、全員だわ。この人たち、一体なにしたんだよ』
「君はオーラ見えるの? 僕は写真からじゃオーラはわからなくて。霊視はできるんだけど」
『ああ、俺のは特殊でさ。そいつの念とか因果みたいなのも視えるんだよ』

 霊感と言っても人それぞれ違う。
 こうしてオーラで何かを感じる人もいれば生霊だけ視えたり、声だけ、姿だけ、気配だけなんて人もいる。
 中には人が死ぬ事だけ予知できる人も。
 姉の亜矢子さんも、明くんも霊的な事に抵抗がないようでその部分だけは少しほっとする。

『この美人ね、部長だった人。菊池加奈きくちかなだよ。地主の長女で……明、あんた覚えてない? 
 絵の才能すごくあったんだけど、教員免許とって埼玉で小学校の先生してる』
檀家だんかだし、そりゃ覚えてるよ。めちゃくちゃ美人! 俺は苦手だけどな』

 どうやら、菊池加奈きくちかなは埼玉で小学校の教員をしている。千堂さんの檀家なら直接本人と会って、呪いを解き助けてあげる事が出来そうだ。
 僕は少し胸を撫で下ろすと、彼等に質問した。

「朝比奈女子高等学校って、何かありましたか? 霊的な噂でも何でもいいんですけど」
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