11 / 17
聖女から悪女へ①
しおりを挟む
私は毎朝、貞淑な妻を装う為に薄化粧をして、慎ましく過ごしておりました。
シュタウフェンベルク家の家族、そしてリーデンブルク家の人々を恐れるように、素顔を隠すように。
けれども、今日から被る仮面は私の心の奥に宿る、アルノーへの愛を隠す為のもので、何と心強いものでしょうか。
私はレースの美しいドレスに着替え、メイドが用意してくれたイヤリングを耳につけると、私はギルベルト様の待つ食堂へも向かいました。
何時もと変わらないアルノー、そして深酒の後をお隠しになったギルベルト様がいらっしゃいました。
「オリーヴィア。遅かったね」
「おまたせ致しまして申し訳ありませんわ、ギルベルト様」
「あの後、君とアルノーの事が気がかりで仕方なかったんだよ。飲みすぎてしまって、申し訳ないね。しかし、彼が夫婦の話に割り込んでくるとは思わなかったよ。――――アルノーは良く介抱してくれたのかい?」
「ええ。体調が優れませんでしたから……。昨日はどうやらお客様もいらっしゃらなかったようですし、ゆっくり休めましたわ」
私の言葉に、ギルベルト様は居心地の悪そうな表情を浮かべました。私がこのように夫としての不貞を、皮肉めいて言及した事は一度もありません。
私はいつものように笑顔を浮かべ、昨日とは別の仮面を被ったのです。
それから、私とギルベルト様の仲はますます冷え切っていきました。
別棟に愛人を住まわせ騎士団の任務が終えると、真っ先に寵愛する彼女の所へと向かいます。
もちろん、私には指一本触れる事はありません。このままでは、いずれ愛人との間に嫡男ができ、私はギルベルト様から離婚を告げられてしまうのも時間の問題でしょう。
――――けれど、私にはある計画がありました。
かつては、女神エルザの忠実な大鷲と呼ばれたリーデンブルク辺境伯も、歳を重ねるにつれて自身の肉体的な衰えを感じられているようでした。
美しいお義母様は、性に対しても自由奔放な方で、私が薄々感じていたように、ギルベルト様と歳の変わらない若い愛人がいらっしゃったようです。
その鬱憤を晴らすように、お義母様がめったにお越しにならないお庭で可憐な花を愛で絵筆を走らせたり、アトリエに籠もって絵を描く事を楽しんでおられました。
獣人に対して、あれほど酷い仕打ちをした人には思えないほどに、才能と教養をお持ちでしたが、それが恐ろしくもあります。
私は、涙を浮かべながらハンカチを目元に当てると庭へ入っていき、ベンチに座りました。
「おお、オリーヴィア。此処に来るとはまた珍しい事だな……あの気味の悪い獣人は連れて来ておらぬだろうな?」
「申し訳ありません、お義父様……私、一人になりたくて庭に来ましたの。アルノーはおりませんわ」
「……ふむ。浮かない顔をしているようだが泣いているのか? ギルベルトとまた何かあったのか?」
お義父様に聞かれると、私はさらに涙を堪えるようにして両手で顔を覆います。
リーデンブルク辺境伯は、何かと私を気にかけており、それが息子の妻を気遣うものとは異なるものだと言う事を、うすうす肌で感じておりました。
「ええ……お義父様。ギルベルト様の事で悩んでおりますの。ギルベルト様がずっと別棟に籠もられて私たちの寝室にお戻りにならないのです」
「――――ダニエラ嬢か。愚息の女癖の悪さも伴侶を迎えれば治るものと思っていたが、いったい誰に似たのやら。私の方から、もう一度ギルベルトに話そう」
隣に座ったお義父様は、ギルベルト様の浮気に呆れたように言うと、私を元気づけるかのように手を握ってこられました。
いつもならば、お義父様に触れられるような事があっても、やんわりと手を引っ込めてしまうのですが、私はリーデンブルク辺境伯の手を握り返したのです。
それには、さすがに驚いたようで私を伺うようにしながら視線を向けました。
「全て不器用な私が悪いのです、お義父様……。このままでは、リーデンブルク家の跡継ぎを生むことが出来ません。それならばいっそ……ギルベルト様のご兄弟を嫡男に迎えるほかありませんわ」
お義父様の喉が音を立てました。
ギルベルト様は一人息子で次男はいらっしゃいません。
もちろん、愛人もいらっしゃらないのです。
それから導かれる意味する言葉は一つで、察したようにお義父様の目の色が変わりました。
ですが、直ぐに私の要望に答えるには、世間体が悪いと考えたようです。
「ふむ……。オリーヴィア、考えておこう……これも息子のため、ひいてはリーデンブルクの存続のためだ。――――そうだな。この作品が終われば、お前を描こう」
私は頷き微笑みました。
リーデンブルク辺境伯は、慎重な方で呼び鈴を鳴らさない限り、誰も寄り付かないアトリエに私を呼び、逢瀬を重ねようと言うのでしょう。
お義父様は初夜の騒動から、私とギルベルト様との間に、まだ一度も肉体関係が無い事を知らないようでした。
私がギルベルト様との行為を完全に拒んでいると言う事を口にする事は、夫として屈辱的で尊厳を傷つけられるものかも知れません。
「お待ちしておりますわ、お義父様」
私の誘惑に、リーデンブルク辺境伯が答えるのか不安ではありましたが、成功したようです。
庭先で話した時から、前にもましてお義父様は私を気に掛けるようになり、たびたび高額な装飾品の贈り物などして気を引くような素振りをしました。
それとも、私の気が変わってしまう事を恐れての行動でしょうか。
私はそれを素直に喜び、お義父様を喜ばせました。世間体を気にすると言っても、欲望には忠実な方なのでしょう。
刺々しさが消え、華やかな心の変化に身近な人々は察します。そのような言動を、やはりギルベルト様やお義母様は少々不審に思われていたようです。
これで彼らの、アルノーに対する疑惑の眼差しを逸らす事が出来たのかも知れません。
私も、出来るだけ彼に接することはやめ、わざと遠ざけるようにあしらいました。
ある日、アルノーは私を呼び止め嗜めるように両肩を抱きました。
執事がそんな無礼な行動をすれば、周りにどう思われるか、その考えが及ばないほど憤りを感じているようで、私は嬉しくもあり、また悲しくもありました。
「どういうおつもりですか、オリーヴィア様。私を避け、リーデンブルク辺境伯と親子の絆を深めていらっしゃるようですが……ギルベルト様も奥様が不審に思われているようですよ」
「何を言っているの、アルノー。お義父様は私を可愛がって下さっているだけだわ」
「……ですが」
「気にしなくていいわ、アルノー。貴方には関係ない事よ」
アルノーの瞳からは戸惑いと怒りが感じられました。
彼からすれば奇妙な行動でしょう。
結ばれてから、一度も彼に触れておらず、二人きりになることを避けたのです。
心を弄ばれたと傷付いてしまったのかも知れません。やはり、シュタウフェンベルク家の娘だと罵られ、私を殺したいと思うほど憎んでも良いのです。
私はこれから、恐ろしい事をするのだからアルノー、貴方はどうかその罪を背負わないで。
「……分かりました、お嬢様」
それだけ言うと、冷たく突き放すように歩きだす彼の背中を見送り、涙が溢れそうになるのを私は必死にこらえました。
泣くのは最期の時で良いのだから、今は弱気になることは許されないのです。
✤✤✤
私は、遠乗りをすると言って嘘をつくとローブを深く被り街へと急ぎます。
できるだけ人に見られ無いようにして、私は裏路地を歩き、目的地の場所へと向かいます。
オフィーリア大陸には、それぞれの街に大抵魔女と呼ばれるような存在がいます。彼女たちは薬草に詳しく、美容や健康のために薬を調合し時には『まじない』をして、身分問わず頼られるような存在でありました。
敬虔な女神エルザの信徒であっても、それは例外ではありません。
不可思議な模様の看板を見つけると、私は緊張を感じながら、恐る恐る店に入りました。
怪しげな薬草やトカゲがぶら下がり、見たこともないような器具や骸骨が並んで、とても恐ろしく、不気味に感じられました。
店の奥には腰の曲がった白髪頭のお婆さんが、微笑むとしわがれた声で出迎えてくれます。
「いらっしゃい、お嬢さん。あんたが欲しいものはこれだろう?」
「――――どうしてわかったの? まだ何も言っていないのに」
「――――夢に見たのさ。あたしゃ、大きな出来事が起こるときに未来が視える。一滴でよく効くよ」
「ありがとうございます」
黒い小瓶を手にすると、私は多めにお金を支払いました。私は、手が震えるのを抑え再び馬に乗ると、偽りの家族の元へと戻ります。
庭園の美しい花たちの絵画をかきあげたリーデンブルク辺境伯が、近々私をアトリエに呼びつける事でしょう。
その時こそ、運命の時です。
‘’リーデンブルク辺境伯の暗殺‘’
シュタウフェンベルク家の家族、そしてリーデンブルク家の人々を恐れるように、素顔を隠すように。
けれども、今日から被る仮面は私の心の奥に宿る、アルノーへの愛を隠す為のもので、何と心強いものでしょうか。
私はレースの美しいドレスに着替え、メイドが用意してくれたイヤリングを耳につけると、私はギルベルト様の待つ食堂へも向かいました。
何時もと変わらないアルノー、そして深酒の後をお隠しになったギルベルト様がいらっしゃいました。
「オリーヴィア。遅かったね」
「おまたせ致しまして申し訳ありませんわ、ギルベルト様」
「あの後、君とアルノーの事が気がかりで仕方なかったんだよ。飲みすぎてしまって、申し訳ないね。しかし、彼が夫婦の話に割り込んでくるとは思わなかったよ。――――アルノーは良く介抱してくれたのかい?」
「ええ。体調が優れませんでしたから……。昨日はどうやらお客様もいらっしゃらなかったようですし、ゆっくり休めましたわ」
私の言葉に、ギルベルト様は居心地の悪そうな表情を浮かべました。私がこのように夫としての不貞を、皮肉めいて言及した事は一度もありません。
私はいつものように笑顔を浮かべ、昨日とは別の仮面を被ったのです。
それから、私とギルベルト様の仲はますます冷え切っていきました。
別棟に愛人を住まわせ騎士団の任務が終えると、真っ先に寵愛する彼女の所へと向かいます。
もちろん、私には指一本触れる事はありません。このままでは、いずれ愛人との間に嫡男ができ、私はギルベルト様から離婚を告げられてしまうのも時間の問題でしょう。
――――けれど、私にはある計画がありました。
かつては、女神エルザの忠実な大鷲と呼ばれたリーデンブルク辺境伯も、歳を重ねるにつれて自身の肉体的な衰えを感じられているようでした。
美しいお義母様は、性に対しても自由奔放な方で、私が薄々感じていたように、ギルベルト様と歳の変わらない若い愛人がいらっしゃったようです。
その鬱憤を晴らすように、お義母様がめったにお越しにならないお庭で可憐な花を愛で絵筆を走らせたり、アトリエに籠もって絵を描く事を楽しんでおられました。
獣人に対して、あれほど酷い仕打ちをした人には思えないほどに、才能と教養をお持ちでしたが、それが恐ろしくもあります。
私は、涙を浮かべながらハンカチを目元に当てると庭へ入っていき、ベンチに座りました。
「おお、オリーヴィア。此処に来るとはまた珍しい事だな……あの気味の悪い獣人は連れて来ておらぬだろうな?」
「申し訳ありません、お義父様……私、一人になりたくて庭に来ましたの。アルノーはおりませんわ」
「……ふむ。浮かない顔をしているようだが泣いているのか? ギルベルトとまた何かあったのか?」
お義父様に聞かれると、私はさらに涙を堪えるようにして両手で顔を覆います。
リーデンブルク辺境伯は、何かと私を気にかけており、それが息子の妻を気遣うものとは異なるものだと言う事を、うすうす肌で感じておりました。
「ええ……お義父様。ギルベルト様の事で悩んでおりますの。ギルベルト様がずっと別棟に籠もられて私たちの寝室にお戻りにならないのです」
「――――ダニエラ嬢か。愚息の女癖の悪さも伴侶を迎えれば治るものと思っていたが、いったい誰に似たのやら。私の方から、もう一度ギルベルトに話そう」
隣に座ったお義父様は、ギルベルト様の浮気に呆れたように言うと、私を元気づけるかのように手を握ってこられました。
いつもならば、お義父様に触れられるような事があっても、やんわりと手を引っ込めてしまうのですが、私はリーデンブルク辺境伯の手を握り返したのです。
それには、さすがに驚いたようで私を伺うようにしながら視線を向けました。
「全て不器用な私が悪いのです、お義父様……。このままでは、リーデンブルク家の跡継ぎを生むことが出来ません。それならばいっそ……ギルベルト様のご兄弟を嫡男に迎えるほかありませんわ」
お義父様の喉が音を立てました。
ギルベルト様は一人息子で次男はいらっしゃいません。
もちろん、愛人もいらっしゃらないのです。
それから導かれる意味する言葉は一つで、察したようにお義父様の目の色が変わりました。
ですが、直ぐに私の要望に答えるには、世間体が悪いと考えたようです。
「ふむ……。オリーヴィア、考えておこう……これも息子のため、ひいてはリーデンブルクの存続のためだ。――――そうだな。この作品が終われば、お前を描こう」
私は頷き微笑みました。
リーデンブルク辺境伯は、慎重な方で呼び鈴を鳴らさない限り、誰も寄り付かないアトリエに私を呼び、逢瀬を重ねようと言うのでしょう。
お義父様は初夜の騒動から、私とギルベルト様との間に、まだ一度も肉体関係が無い事を知らないようでした。
私がギルベルト様との行為を完全に拒んでいると言う事を口にする事は、夫として屈辱的で尊厳を傷つけられるものかも知れません。
「お待ちしておりますわ、お義父様」
私の誘惑に、リーデンブルク辺境伯が答えるのか不安ではありましたが、成功したようです。
庭先で話した時から、前にもましてお義父様は私を気に掛けるようになり、たびたび高額な装飾品の贈り物などして気を引くような素振りをしました。
それとも、私の気が変わってしまう事を恐れての行動でしょうか。
私はそれを素直に喜び、お義父様を喜ばせました。世間体を気にすると言っても、欲望には忠実な方なのでしょう。
刺々しさが消え、華やかな心の変化に身近な人々は察します。そのような言動を、やはりギルベルト様やお義母様は少々不審に思われていたようです。
これで彼らの、アルノーに対する疑惑の眼差しを逸らす事が出来たのかも知れません。
私も、出来るだけ彼に接することはやめ、わざと遠ざけるようにあしらいました。
ある日、アルノーは私を呼び止め嗜めるように両肩を抱きました。
執事がそんな無礼な行動をすれば、周りにどう思われるか、その考えが及ばないほど憤りを感じているようで、私は嬉しくもあり、また悲しくもありました。
「どういうおつもりですか、オリーヴィア様。私を避け、リーデンブルク辺境伯と親子の絆を深めていらっしゃるようですが……ギルベルト様も奥様が不審に思われているようですよ」
「何を言っているの、アルノー。お義父様は私を可愛がって下さっているだけだわ」
「……ですが」
「気にしなくていいわ、アルノー。貴方には関係ない事よ」
アルノーの瞳からは戸惑いと怒りが感じられました。
彼からすれば奇妙な行動でしょう。
結ばれてから、一度も彼に触れておらず、二人きりになることを避けたのです。
心を弄ばれたと傷付いてしまったのかも知れません。やはり、シュタウフェンベルク家の娘だと罵られ、私を殺したいと思うほど憎んでも良いのです。
私はこれから、恐ろしい事をするのだからアルノー、貴方はどうかその罪を背負わないで。
「……分かりました、お嬢様」
それだけ言うと、冷たく突き放すように歩きだす彼の背中を見送り、涙が溢れそうになるのを私は必死にこらえました。
泣くのは最期の時で良いのだから、今は弱気になることは許されないのです。
✤✤✤
私は、遠乗りをすると言って嘘をつくとローブを深く被り街へと急ぎます。
できるだけ人に見られ無いようにして、私は裏路地を歩き、目的地の場所へと向かいます。
オフィーリア大陸には、それぞれの街に大抵魔女と呼ばれるような存在がいます。彼女たちは薬草に詳しく、美容や健康のために薬を調合し時には『まじない』をして、身分問わず頼られるような存在でありました。
敬虔な女神エルザの信徒であっても、それは例外ではありません。
不可思議な模様の看板を見つけると、私は緊張を感じながら、恐る恐る店に入りました。
怪しげな薬草やトカゲがぶら下がり、見たこともないような器具や骸骨が並んで、とても恐ろしく、不気味に感じられました。
店の奥には腰の曲がった白髪頭のお婆さんが、微笑むとしわがれた声で出迎えてくれます。
「いらっしゃい、お嬢さん。あんたが欲しいものはこれだろう?」
「――――どうしてわかったの? まだ何も言っていないのに」
「――――夢に見たのさ。あたしゃ、大きな出来事が起こるときに未来が視える。一滴でよく効くよ」
「ありがとうございます」
黒い小瓶を手にすると、私は多めにお金を支払いました。私は、手が震えるのを抑え再び馬に乗ると、偽りの家族の元へと戻ります。
庭園の美しい花たちの絵画をかきあげたリーデンブルク辺境伯が、近々私をアトリエに呼びつける事でしょう。
その時こそ、運命の時です。
‘’リーデンブルク辺境伯の暗殺‘’
0
お気に入りに追加
162
あなたにおすすめの小説
自分の完璧に応えられない妻を売った伯爵の末路
めぐめぐ
恋愛
伯爵である彼――ボルグ・ヒルス・ユーバンクは常に、自分にとっての完璧を求めていた。
全てが自分の思い通りでなければ気が済まなかったが、周囲がそれに応えていた。
たった一人、妻アメリアを除いては。
彼の完璧に応えられない妻に苛立ち、小さなことで責め立てる日々。
セーラという愛人が出来てからは、アメリアのことが益々疎ましくなっていく。
しかし離縁するには、それ相応の理由が必要なため、どうにかセーラを本妻に出来ないかと、ボルグは頭を悩ませていた。
そんな時、彼にとって思いも寄らないチャンスが訪れて――
※1万字程。書き終えてます。
※元娼婦が本妻になれるような世界観ですので、設定に関しては頭空っぽでお願いしますm(_ _"m)
※ごゆるりとお楽しみください♪
貴妃エレーナ
無味無臭(不定期更新)
恋愛
「君は、私のことを恨んでいるか?」
後宮で暮らして数十年の月日が流れたある日のこと。国王ローレンスから突然そう聞かれた貴妃エレーナは戸惑ったように答えた。
「急に、どうされたのですか?」
「…分かるだろう、はぐらかさないでくれ。」
「恨んでなどいませんよ。あれは遠い昔のことですから。」
そう言われて、私は今まで蓋をしていた記憶を辿った。
どうやら彼は、若かりし頃に私とあの人の仲を引き裂いてしまったことを今も悔やんでいるらしい。
けれど、もう安心してほしい。
私は既に、今世ではあの人と縁がなかったんだと諦めている。
だから…
「陛下…!大変です、内乱が…」
え…?
ーーーーーーーーーーーーー
ここは、どこ?
さっきまで内乱が…
「エレーナ?」
陛下…?
でも若いわ。
バッと自分の顔を触る。
するとそこにはハリもあってモチモチとした、まるで若い頃の私の肌があった。
懐かしい空間と若い肌…まさか私、昔の時代に戻ったの?!
夫に他の男性との情事を目撃されてしまいました
鍋
恋愛
私はヴァニラ、Eランク冒険者。
何故かSSランク冒険者のセーロスと結婚。
夫の留守中、風邪に効く薬草を採りに森に入って、幻覚・催淫作用のあるホルメー茸の胞子を吸い込んでしまった。
これは、森の中で見ず知らずの男性と情事に及んでいたヒロインが、夫に現場を目撃され夫がヤンデレ化していくお話です。
※地雷要素多いのでご注意ください。
R18
いきなりヒロインの他の男性との絡みから始まります。
メリバ?監禁風?
のんびり更新します。
かつて私を愛した夫はもういない 偽装結婚のお飾り妻なので溺愛からは逃げ出したい
おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
※また後日、後日談を掲載予定。
一代で財を築き上げた青年実業家の青年レオパルト。彼は社交性に富み、女性たちの憧れの的だった。
上流階級の出身であるダイアナは、かつて、そんな彼から情熱的に求められ、身分差を乗り越えて結婚することになった。
幸せになると信じたはずの結婚だったが、新婚数日で、レオパルトの不実が発覚する。
どうして良いのか分からなくなったダイアナは、レオパルトを避けるようになり、家庭内別居のような状態が数年続いていた。
夫から求められず、苦痛な毎日を過ごしていたダイアナ。宗教にすがりたくなった彼女は、ある時、神父を呼び寄せたのだが、それを勘違いしたレオパルトが激高する。辛くなったダイアナは家を出ることにして――。
明るく社交的な夫を持った、大人しい妻。
どうして彼は二年間、妻を求めなかったのか――?
勘違いですれ違っていた夫婦の誤解が解けて仲直りをした後、苦難を乗り越え、再度愛し合うようになるまでの物語。
※本編全23話の完結済の作品。アルファポリス様では、読みやすいように1話を3〜4分割にして投稿中。
※ムーンライト様にて、11/10~12/1に本編連載していた完結作品になります。現在、ムーンライト様では本編の雰囲気とは違い明るい後日談を投稿中です。
※R18に※。作者の他作品よりも本編はおとなしめ。
※ムーンライト33作品目にして、初めて、日間総合1位、週間総合1位をとることができた作品になります。
【R-18】初恋相手の義兄を忘れるために他の人と結婚しようとしたら、なぜか襲われてしまいました
桜百合
恋愛
アルメリア侯爵令嬢アリアは、跡継ぎのいない侯爵家に養子としてやってきた義兄のアンソニーに恋心を抱いていた。その想いを伝えたもののさりげなく断られ、彼への想いは叶わぬものとなってしまう。それから二年の月日が流れ、アリアは偶然アンソニーの結婚が決まったという話を耳にした。それを機にようやく自分も別の男性の元へ嫁ぐ決心をするのだが、なぜか怒った様子のアンソニーに迫られてしまう。
※ゆるふわ設定大目に見ていただけると助かります。いつもと違う作風が書いてみたくなり、書いた作品です。ヒーローヤンデレ気味。少し無理やり描写がありますのでご注意ください。メリバのようにも見えますが、本人たちは幸せなので一応ハピエンです。
※ムーンライトノベルズ様にも掲載しております。
王妃は涙を流さない〜ただあなたを守りたかっただけでした〜
矢野りと
恋愛
理不尽な理由を掲げて大国に攻め入った母国は、数カ月後には敗戦国となった。
王政を廃するか、それとも王妃を人質として差し出すかと大国は選択を迫ってくる。
『…本当にすまない、ジュンリヤ』
『謝らないで、覚悟はできています』
敗戦後、王位を継いだばかりの夫には私を守るだけの力はなかった。
――たった三年間の別れ…。
三年後に帰国した私を待っていたのは国王である夫の変わらない眼差し。……とその隣で微笑む側妃だった。
『王妃様、シャンナアンナと申します』
もう私の居場所はなくなっていた…。
※設定はゆるいです。
【R18】水面に映る月影は――出戻り姫と銀の騎士
無憂
恋愛
和平のために、隣国の大公に嫁いでいた末姫が、未亡人になって帰国した。わずか十二歳の妹を四十も年上の大公に嫁がせ、国のために犠牲を強いたことに自責の念を抱く王太子は、今度こそ幸福な結婚をと、信頼する側近の騎士に降嫁させようと考える。だが、騎士にはすでに生涯を誓った相手がいた。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる