【R18】月に叢雲、花に風。

蒼琉璃

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拾壱、囚われの蝶―其の参―

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 師匠から譲り受けた巻物を持って、若菜は慣れ親しんだ廊下を歩いていた。今まで此方が挨拶をしてもあまり反応が良くなかったり、無視される事も多かったが、気難しい自分よりも年上の中年陰陽師も若菜の姿を見れば、深々と頭を下げた。さすがの若菜も、実に分かりやすい態度だと心の中で苦笑したがこれからが努力の見せ所だ。
 上司として建前だけで無く、本当に彼等に信頼して貰えるように振る舞わなくてはならない。陰陽寮にきた当初はもっと周りの陰陽師達は手厳しい態度だった。だが、それも年々好転してきているし、友人まで出来た。
 だから、絶対諦めずに実力で認めて貰えるように頑張ろうと若菜は強く、心に誓った。

 とは言え、あの陰間茶屋での一件を思うと床を踏みしめる足音が鈍くなり歩みが遅くなる。光明に強要された事よりも夕霧から垣間見える嗜虐的で残忍なあの微笑みが、若菜の心を怯えさせるのだ。
 若菜は蜜色の目を伏せ、頭を振ると離れの広い廊下を歩き割り振られた陰陽師達の部屋の角部屋、かつては自室だった場所の前まで来た。

「夕霧……いる? 光明様からお仕事を届けに行くように言われたの」

 中からは返事が無く、人の気配も無い様に思えた。試練を終え荷物を運び込んで眠ってしまったか、それとも見習いの頃の友人と祝杯でもあげているのだろか。
 勝手に部屋に入ってしまうのは気が引けるが、書斎にでも巻物を置いて直ぐにお暇しようと思い、若菜はゆっくりと襖を開けた。
 中は薄暗くてやはり人は居ないようだ、奥にある書斎まで進むと突然の背後から口を塞がれ、驚いてくぐもった悲鳴をあげた。
 手の感触からして男性のようで、肩をガッチリ捕まれ、若菜は青褪め思わずその腕を掴んだ。

「んんっ~~!? んぅっっ!」
「し~~。僕ですよ、セ・ン・パ・イ。驚きましたぁ?」

 梅花の香りがして、耳元で夕霧の低い声がすると驚いたように横目で彼を見上げた。三日月型の潤んだ黒い瞳が細められている。
 子供のようにふざけて驚かせてきたのだろうか。だが、若菜の口は塞がれたままで、いっこうに夕霧は離してくれず視線で訴えかけた。
 その怯えたような表情を見るとニィッと口角を釣り上げて夕霧は笑った。

「良かったぁ。僕すっかり嫌われたと思ってたんだけど~~、そうじゃなさそうだねぇ! こうして無防備に一人で僕の部屋に来るって事は、とんでもないお馬鹿さんなのかな?」

 耳元で嘲笑うように囁かれ、口を塞がれたまま頭を振ると、フンッと鼻を鳴らして此方を向かせると両手を掴んで引き寄せた。目の前に不敵な笑みを浮かべた美少年が唇を重ねようとすると、若菜はハッとして彼の胸板を押した。

「いやっ!! 何するのっ……! 冗談でもこんな悪戯は辞めてっ」
「おやぁ? そう言う顔もできるんだ、若菜。でもさぁ……それ、僕を喜ばせるだけだよ、僕はその怯えた顔が大好きなんだよねぇ! 僕に口付けされるのそんなに嫌なんだ……尚更なおさらしたくなるんだけど?」

 青褪めて、逃げようとする若菜の腕を掴むと頭を引き寄せて強引に口付けられた。あの日必死で口付けを拒んだのに、夕霧の舌先は僅かに開いた隙間からスルリと押し入って、抵抗するように縮こまる小さな舌先を絡め取ると、華奢なのにびくともしない胸板を叩いた。元陰間のせいなのか、舌先は器用に動いて口腔内を繊細な動きを見せながらくすぐると、吐息が乱れて拒絶する心とは裏腹に快楽が押し寄せる。
 それを否定するかのように、若菜は声をあげた。

「んっ、んぅっ……! っ、やぁ、やだっ、やめっ、本当に……っ、やめて、夕……」
「あー、それそれ……そうだよ、その声! あれからさ、試しに色んな女とやったんだけどさぁ……どいつもこいつも僕に魅了されて、好きだの、恋仲になろうだの、イロにしてやろうだの……。つまんない事しか言わないんだよねぇ、もっとこうさぁ! 僕に怯えてくれなきゃ、ぞくぞくしないっていうか……それに他の女は若菜みたいに気持ち良く無かった」

 そう言うと若菜の体を軽々と抱き上げ、布団の上に押し倒すとあの狂気に満ちた表情のまま、若菜の両手を押し付けた。
 一体夕霧は何を考えているんだろう。光明の愛弟子となり、愛人になっている立場にあるし、昨晩のあの表情からしても自分に好意的な様子では無かった。何より、朔と交わったのだと思うと胸がチリチリと燃えるような嫉妬の感覚に襲われる。
 
「こっ、こんな事したら、陰陽寮から追い出されて破門にされるんだから……!」

 若菜は怯えたように彼を見つめ、屈しないように震える声で言い放った。若菜の体の上に跨って、両手を布団に押し付けた魔性の美少年は、ますます嗜虐的に楽しそうに笑みを浮かべた。あくびが出るようなつまらない任務だ、その合間に自分が初めて知った、まるで天界の女神のような極上で甘露な霊力を味見するくらい、法眼も許可するだろう。

「えーー、それは困るなぁ、だけど……若菜。僕との事をここの陰陽師達に知られたらまずいんじゃない? 僕が若菜様に筆下ろしされたんですぅぅ~♡ なんて言えば、光明様の愛人でいたいけな僕に手を出して……なんて話が広まり、義弟の朔様と近親相姦してるっていう事まで尾ヒレがついちゃうかもしれないねぇ」
「……っ……」

 若菜は思わずビクリ、と体を震わせて押し黙ってしまった。そんな事になれば朔にも迷惑がかかってしまう。言葉に詰まった若菜の額に、夕霧は額を合わせると囁くような低い声で言った。

「困るよねぇ? 困っちゃうよねぇ……先輩。でも安心してよ。君を傷付けたらめちゃくちゃ僕叱られちゃうからさ……優しくしてあげる。それに色んな女と寝たから童貞の時よりかは勉強したからさ」

 若菜は背筋が寒くなった。夜伽を要求する事自体、傷付ける行為なのに女性のように美しい少年はそれが理解出来ていないようだった。その可憐な姿とは裏腹に中身はドス黒いものが渦巻いているようで、その落差に若菜は恐怖を感じた。再び、夕霧が口付けようとすると若菜は思わず顔を背ける。
 若菜の小さな桜貝のような耳を赤い舌先でねっとりと舐めると、耳元で何か呪術のような言葉を囁かれた。初めて聞くような響きの言葉に目を見開くと、徐々に体に力が入らなくなる。
 震える指先で抗議するように、彼の着物を掴むがそれに構わず夕霧は妖魔の赤い舌先で耳朶をしゃぶり、熱い吐息をかけながら耳の裏をねっとりと舐められると、怖気と共に微弱の快楽が這い上がってくる。

「っ……! ふっ……」

 若菜は絶対に声を出すまいと唇を固く閉じた。呪術で体の動きを封じられ、目を閉じて完全に夕霧を心の中から追い出す。
 この指先も舌の動きも朔だと思えば良いのだと頭の中で何度も繰り返した。耳朶を甘噛みし、首筋を舐められるとビクンと喉を反らして弱々しい指先で、夕霧の肩に指を立てた。

「かわいいー、愛する朔様の為に声は出したく無いんだ? でもさ、僕と交わった時は我慢できずに声出してたじゃん。最後まで貫けるかなぁ?」
「ゃっ、もう、本当に止めてっ……ぁっ、ふっ、んっ………っ!」

 巫女装束に手を掛けると、白衣をずらして豊かな乳房をさらけだすとその上に悪戯な猫のように顎を置いてそう言うと、整った指先で右の乳房を揉み込みながら、首筋から耳元までをゆっくりと分厚い舌先で舐められ。
 まるで、尺八をするように目を閉じて何度も行き来され、乳房を優しく揉まれると段々と若菜の息が乱れてうっすらと瞼を開ける。

「はぁ……はぁ……っ、ゃ……っ……んっっ……」
「ねぇ、若菜。朔様とどんなふうに夜伽してるの? 僕との時は淡々としてて全然楽しくなかったんだけど」
「知らないっ……あっ、んんっ」

 その言葉に短刀で胸をえぐられたような気持ちになった若菜は、突っぱねるように反抗するが、それを戒めるように胸の蕾を指先で抓られると、ビクンっと腰がしなる。
 
「反抗的だなぁ、ふふふっ……若菜って耳朶とここが気持ちいいみたいだね。嫌がってても触ったら、体がビクビクして直ぐわかる。隠せないんだねー、淫乱な先輩だなぁ、かわいい♡」

 胸を嗜虐的に強く揉まれ、突然舌先で指の間に挟まれた胸の蕾を優しく舐められると思わず上擦った声が上がって、ハッとして唇を噛みしめると手の甲で口を抑えた。

「ふっ……んっ、んぅ……や、やめ、んっ……はぁ、はぁ……ぁっ」
「ほらやっぱり……んっ、気持ちいい癖に、義弟おとうとちゃんにここ舐められて、一杯可愛い声出してるの? 光明さまとの時も男を誘う声してるよねー ん、ほら、乳首舐めてほしい?」

 二本の指を開けて、舌先で乳輪を焦らすように舐めながら問いかけられいやいやと頭を降る。だが、歪んだ夕霧は固くなって立ち上がった胸の蕾の周辺を舌先でくるくると舐めながら指圧するように乳房を弄ぶと、口付けるように唇にそれを挟み込んだ。清浄な霊気はこの小さな花の蕾からも感じられてうっとりと夕霧は目を細めた。法眼が喉から手が出るほど欲しい気持ちは良く理解できる。
 若菜のような不純物や濁りの無い甘露な霊力を持つ特別な人間は、何百年に一人、それ以上かも知れない。

「やぁっ、あっ、はぁっ……あんっ、や、やめ、やだ、あっ、はぁ、もう、あっ、あっ、いやぁっ」
「おっと……逃げられないよ。いい加減観念しなよ。そんないやらしい顔してさぁ」

 若菜は乱れた服のまま、彼の両肩を掴んで抜け出そうと上半身を動かすと、華奢な腰を抱かれ、緋袴ひはかまを片手で脱がすと、茂みの無い整った薄桃色の亀裂と白い恥丘が見えた。そこから香る天上の華のような、清々しく嫌味のない甘い華のような香りが鼻孔を擽ると、天狗にとってそれだけで射精したくなる程で、思わす鼻を近付けてしまう。
 陰陽師の女と夜伽とした時にも霊力の良い香りがするが、若菜のそれは脳天を突きぬけて理性を壊すようなものだった。前回は夕霧として演技をしていた分、自分を抑えていたが今回はそれがない。

「はぁ……凄い、脳までくるわぁ、若菜の蜜。ほらほら暴れない。光明様にお万個舐められて気持ち良さそうにしてたでしょ。義弟ちゃんにも毎晩されて、気持ちいいの覚えちゃってるよねぇーー、僕も舐めてやるよ。ほら、足開きな」
「やっ、あっ、やめ、舐めないでっ、あっ、あんっ……っ、くぅ、ぁっやっあっあっ! あっ、やぁ、あっ、やめ、そこは、だめ、あっ、あんっ…や、あっあっやあっ」

 強引に若菜の脚を開かせると、夕霧は貪りつくように花弁に食らいついた。つい最近まで童貞だったとは思えないくらい柔らかな舌先は開けた花弁の幾層にも重なった花弁を舐め、舌先で蜜穴から花芯まで、下から上へと舐めていく。元陰間のせいか奉仕に慣れている様子で、音を立てながら愛撫されると、声を出さないように我慢していた若菜の唇が開いて甘い歓声があがってしまう。
 楽しげに笑いながら下品な言葉を投げかけられ若菜はぎゅっと目を瞑った。夕霧は唇を花弁に吸いつかせ、花弁全体を舌先で縦横無尽に舐めた。
 体の自由が効かない若菜は、腰をくねらせて逃げようとするが、片足を捕らえられ花奥から溢れ出した蜜を舐めとるようにしてむせび泣く若菜を追い詰める。

「ゆうぎり、おねがい、おねがいだからぁ、あっ、はぁっ、やんっ、あっあっあっ、やぁ、いきたくないっ、あっあっ、ぁっ、――――ッ!!」
「んん、はぁ、本当に若菜は敏感だよねぇ。お万個、ほら濡れてきらきら光ってる。桜色で整って綺麗……ほらほらぁ、僕の指が欲しいんじゃない? 素直になりな」

 布団を握りしめて、蜜色の瞳から涙がこぼれ落ちると体が硬直して絶頂に達する。舌先に絡まった愛液を口に含むと、夕霧はうっとりと自分の唇を舐めた。全身が熱くなって霊力が増したような気がする。誘うように愛液が溢れると極上の果汁に誘われるように舌先でそれを絡めて、小さな花芯を舌先でつんつんと刺激する。
 そして中指を挿入すると、音を響かせながら指を動かされると、若菜の白い肌は上気し快楽に切ない声をあげて喘いだ。
 我慢したいのに、一番弱い花芯を愛撫されるとどうしようもなく甘い声がでて、罪悪感で涙がこぼれ落ちる。夕霧はその打ちひしがれた表情を見ると、興奮するかのように敏感な花芯を分厚い舌先で押し付けるように舐め、器用に中の赤い実を剥いて、優しく吸い上げる。
 中指の根本を締め付けられ、吸いつきミミズが這うような心地の良い感触にうっとりとした。若菜が気をやる瞬間、甘い蜜の霊力は濃くなり美酒のようになる。

「ひっ……! はぁぁっ、あっあっあっ、や、やぁ、あ、あっ、あっ、ああ、ゆるして、それ、だめ、あっあっ、やぁぁ、あぁっ、また、きちゃぅ、やぁ」
「んんぅ、はぁ、美味しい……ゆるして、若菜、可愛いねぇ、でもだめー、んんっ、ほら、貝みたいに潮吹きしてるよ。勿体ない……ほら、ほら、いけ」

 深く夕霧が花芯に吸いつき根元なら舐めとる、花奥のツボを指の腹で押された瞬間意識が真っ白になって、ビクンと体が大きく震えたかと思うと絶頂に達する。服を乱して呼吸を荒げる若菜の無垢な花弁から指を引き抜くと愛液に濡れた自分の指先を舐めた。両手をついて覆い被さるように、美少年は耳元で囁いた。

「声出さないんじゃなかったけ? 僕の愛撫で二回も気をやっちゃって、淫乱な若菜ちゃん。……もう許してほしい?」

 若菜はハッとして涙目で彼を見ると何度も頷いた。もう自分を虐めることに満足してしまったのかもしれない。夕霧は三日月型の黒い瞳を潤ませ、屈託の無い笑みを浮かべて言った。

「じゃあさ、僕の魔羅を舐めてくんない? そしたら終わりにしてあげてもいいよ」

 立ち上がった美少年の乱れた着物からそそり立つそれは、彼に太い陰茎がついているのが不釣り合いに思える。魔性の微笑みを浮かべた夕霧は見下ろし、右の口角をニッと釣り上げる。
 若菜は乱れた着物を抑えながら、戸惑うように夕霧を見上げた。

「ほ、本当に……? な、舐めたら許してくれるの」
「上手くできたらな。選択肢は無いはずだよ、若菜。僕もう辛いんです……先輩♡」

 夕霧は声色を変えて、いつもの調子で媚びるように言うと若菜の顎を掴み唇を撫でた。
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