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漆、木花之佐久夜毘売―後編―
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キョウの公家が住む屋敷と酷似しているがどこか異国の情緒もあり、まるで絵巻物の中の世界のようだ。珍しく門番も屈強な女性の兵士で、この屋敷にいる仕様人も、由衛と同じく白狐や紅雀と同じく白蛇の化身の類、天女に至るまで全て、女性で統一されている。
木花之佐久夜毘売は、天照大御神の名の孫で、高天ヶ原に下ったニニギノミコトの妻となり二人の神を出産するが、出産と言う務めを果たしてこの天界へと戻ってきた。
元より、親神より差し出されたような形で妻になった女神は、男性よりも女性を好ましく思うのか、末端の家来に至るまで女性で統一されている。
木花之佐久夜毘売に手を引かれ、導かれた先は美しい日本庭園が見える大広間である。庭から山が見えるのは、彼女が火山の女神でもあるからだろう。
部屋にはお香のような良い香りがし、卓には御茶と金平糖や和菓子等、様々な用意されていた。木花之佐久夜毘売は、上座に優雅に鎮座して若菜に促した。その、優雅な仕草は一つ一つが美しく洗練されている。
『さぁ、貴方の好きなものを用意しておきましたよ』
若菜は恭しく座ると、御茶とお菓子を食べ始めた。一見、何処にでもある菓子に見えるがその味は甘露で心を癒してくれる。その美味しさを噛み締めて幸福そうにしていると、ふと木花開耶姫が優しく問い掛けてきた。
『最近の貴方の心身の疲労が激しく、心配です。幼き日より私を信仰し、供物を捧げ、こうして私の声を聞き見ることができる霊力の高い娘――――。わたくしは貴女を特別に目にかけているのですよ』
若菜は手を止めると、木花之佐久夜毘売を見た。彼女との出合いは物心がつく頃で、連れられた 神社の桜の木の下で佇む姿を見つけ、持っていた金平糖を彼女に捧げてからだ。だが幼き日の記憶は夢のようであり、大人になってからその想い出は記憶の彼方に封印されていた。
記憶が無いとはいえ、陰陽寮に身を寄せるようになっても、無意識に参拝する場所は木花之佐久夜毘売を奉る神社で、桜の好きな彼女はその花を愛した。その信仰のお陰か、こうして逢瀬をし助言や加護を受けている。
「はい……その、義弟との行く末も……陰陽寮の事も、式神達の事も心配です」
悩み事は沢山あるが、何と言えば良いのか、歯切れの悪い若菜に微笑みかける。うまく言葉に出来ない若菜を手助けするように木花之佐久夜毘売は言葉を続けた。
『――――何も心配する事はありませんよ。朔は貴方を心から慕っています。貴方の為なら命を惜しまぬ程に。不器用ではありますが……、必ず最後に進むべき道を見つけます。貴方も本当は良く分かっているでしょう、朔は、他の者など初めから目に入っていないのですよ』
心の中を見透かされたような気になった。お鶴の事もそうであるし、光明が朔を愛人として扱っている事への不安と嫉妬、そして種違いとはいえ姉弟で恋仲になってしまった事への罪悪感が心を苦しめていた。義姉弟で無ければそんな苦しみも生まれなかったが、義姉弟なければ出逢えなかったジレンマが苦しい。
「佐久夜様がそう仰るなら――――私……」
『人の世の理は面倒なもの。天界も理や法はあれど心は自由です。例え義理の姉弟でも此方では夫婦となり愛し合えます。それに――――若菜、もう一人貴方を心から愛する殿方も、重要な運命を握っています』
木花之佐久夜毘売の言葉はとても心の支えになり、例え目が醒めれば忘れてしまうのだとしても、自分が朔を心のままに愛しても天は許してくれるのだと言う気持ちになる。そして、もう一人、自分を心から愛すると相手と言う言葉が引っ掛かり不思議そうに首を傾げた。
「由衛……? それともまさか光明様ですか――?」
由衛は兎も角、先日の様子からまさかそんな事は無いだろうが他に思い付くような異性はいない。大抵の場合は気味悪がるか差別的な目で見る異性が多いからだ。
――その言葉に、木花之佐久夜毘売は目を細めた。
『いいえ……。その者には近い将来出逢うでしょう。朔と、その者と、貴方の縁は絡まる糸のように複雑に、強い絆で結ばれているのです』
一体誰の事だろうと不思議そうにする若菜を、手招きした。大人しく女神の側によると若菜の柔らかい稲穂色の巻き毛に細い指先を絡ませると言う。
『これから先の運命は、若菜……貴方にとって過酷なものとなるでしょう。それはわたくしにとっても絵空事ではないのです―――』
若菜の髪から手を離すと、両頬を包み込むようにして木花之佐久夜毘売はそっと桜色のふっくらとした若菜の唇に桃色の唇を重ねる。夢の中ではそれが当然のようで、なんの疑問ももたず抵抗することもなく、自然と目を閉じて受け入れる。若菜には女知音を好む訳ではないのだが、こうする事が今は自然のように思える。
「……ん」
男性のように荒々しい接吻ではなく、優しく穏やかなもので小さな舌が絡まりあうと少し息が乱れる。唇を離すと、女神は穏やかに微笑み寵愛する人間の娘の頭を撫でた。ぼんやりとした表情で若菜は華奢な体を彼女に預ける。
『わたくしの霊力を直接注いであげましょう。このままでは貴方の精気はあの男達に吸われたままになってしまいます。わたくしの寵愛を貴方に』
✤✤✤✤✤✤
夢の中でぼんやりと霞む思考の中で木花之佐久夜毘売に体を預けると、目を閉じた。
肩を抱き寄せられる感触がして、名を呼ばれるとゆっくり瞼を開けた。そこは先程の客間では無く全く異なった西洋風の寝室になっている。普通ならばこの荒唐無稽な展開に驚くのだが、夢ではそれが当たり前のように別段不思議な事とは思えなかった。
南蛮渡来のカーテンのついた寝具はベッドと呼ばれるものだろう。とても柔らかく清潔で心地よく、ほんのりと良い香りがする。
寝室にはドレス姿の西洋の人形が飾られており、彼女の趣味を垣間見たような気がした。
『愛らしいでしょう。わたくしは西洋の女神達とも仲が良いので、時々贈って頂くのよ』
天界には神々の国境が無いのだろうか、とぼんやりと若菜は考えていた。気付けば服を脱いだ覚えはないが、若菜は見た事も無いヒラヒラとした豪華で可愛らしい下着と太腿まである靴下を着させられていた。
これは南蛮の女性が身に着けるものだろうか、木花之佐久夜毘売も同じように可愛らしい下着を身に着けていた。
変わった所と言えば、乳房が露になり下着の布地が予め切られて花弁が見える事だ。
「さくや、さま………ん…………ふっ……」
ふと名前を呼ぶと、琥珀色の柔らかな巻き毛を撫でながら若菜の唇をふさいで小鳥のように何度も啄み、そっと柔らかなベッドに若菜を押し倒すした。柔らかな唇は心地良くほんのりと頬を染めて、木花之佐久夜毘売をぼんやりと見上げた。
「とても、綺麗です……佐久夜さま」
雪のように白く極め細やかな柔肌に、若菜より豊かで形の良い柔らかな胸、括れのある腰。華奢な肢体は同姓から見ても純粋に綺麗だと思った。今ま出逢ったどの女性よりも、彼女は美しく長くサラサラとした美しい艶のある黒髪からはとても良い桜の香りがする。
自分と変わらない位の、清楚な美少女だ。彼女のような女性になりたいと憧れの眼差しを向けてしまう。その、清楚な美しさは異性同性問わず魅了するだろう。
女神は慈愛に満ちた笑みを浮かべ、押し倒した若菜の胸の先の蕾と自分の胸の先の蕾を擦り合わせるようにして、包み込むとじんわりとした安心感と快楽が生まれる。
『貴女こそ……金の美しい巻き髪、長い睫毛、琥珀の瞳……ふっくらとした唇、心地のよい陶器のような肌、エルフのように愛らしい……きっとリボンが似合うでしょうね。もっと可愛いお洋服を着せたいわ』
「えるふ……??」
首を傾げる若菜に、女神は西洋にいる美しい種族なのよ、と子供に教えるように囁いた
木花之佐久夜毘売は、やはり西洋が好きなのだろうか。この部屋の作りも何処を見ても洋式であるし、だから自分を特別愛らしいと感じるのかもしれない。まるで、可愛い人形を愛でるような眼差しで、若菜の胸元まで降りると女性独特の繊細な動きで優しく乳房を愛撫し、桃色の突起に柔らかな舌先を絡めた。
若菜の吐息葉緩やかに乱れてじわり、じわりと甘い声があがる。
「…………はぁ……………ん、んんっ……さくやさま……」
頬を染め唇に指を寄せて恥ずかしそうに快楽を感じる若菜の様子に満足し、髪を耳元にかけると若菜の反応を微笑みながら見つめた。桃色の蕾を巧みに舌先で舐め、徐々に固くさせていく。
そして脇腹や背中、胸を下から上にかけて羽毛のように、軽く撫でるように愛撫されると、ぞわぞわとした快楽が体を駆け巡った。男性の愛撫とは異なり、静かに追い詰めていくような手法にふつふつと沸騰していくような快感を感じた。
「んんっ……………はぁ……ん、………やぁん………」
徐々に喘ぐ唇が濡れ初め、体を敏感に震わせる若菜をあやす様に柔らかく口付けすると、繊細な指先が太股と内股を愛撫した。
『可愛い子………』
優しく囁き、枕の上で頭を撫でながら乳輪の境目を柔らかく舐めなた。佐久夜の指先が恥毛のない亀裂をゆっくりと往復するように撫でる。男性の太い指とは違い、ほっそりとした指先が、あくまで繊細に慎重に愛撫する。
上下に撫でながら花芯を巻き込むように同時に指の腹でると、若菜はぎゅっとシーツを握りしめて両足をピンと突っ張った。
「んんっ……あっ……はぁ、あっ……っあ、そこは、っっ……や」
花芯への敏感な反応とともに、濡れ始めた花弁に微笑みながら頬に口付ける。蜜を絡め弱点である膨らむ花芯をゆっくりと優しく一定の速さで撫でている。断続的な緩やかな快楽に魘されるように若菜は目を細めた。
『ここはわたくしと貴方だけ。女同士、遠慮はいりませんよ……ねぇ、若菜……痛くない?』
「は……い、んっ……はぁ、っっ、大丈夫です…」
頭を撫でてゆっくりと陰核の根本から上に、円を描くうちに、段々と若菜の吐息が乱れる感覚が早くなり目尻に涙が溜まり始めた。
濡れ音が蜜の量が増えて行くと共に響き渡ると愛液でぬるぬると指が滑っていく。その淫らな様子に木花開耶姫もまた、息を少し乱して興奮するかのように問い掛ける。
『若菜、気をやってしまいそう?』
こくこくと何度も頷き若菜は彼女に抱きつく。
「あっ、あん……は、い、い、っ……気をやってしまい、そうです、はぁっ……っあぁ!」
『……クス。気をやってしまったのですね』
若菜は突然押し寄せた快楽に体を震わせて絶頂に達すると、木花之佐久夜毘売にすがりついた。若菜を愛しそうにして頭を撫でてやると、脇腹やヘソの当たりに小さく柔らかい舌を這わせて愛撫する。それだけでも、敏感になっている肢体は、快感に身悶え処女雪のような白い肌を紅潮させ、汗を滲ませていた。
するり、と木花開耶姫は体勢を低くすると若菜の太股を開かせると撫でながら内股にゆっくりと舌を這わせるとその度に体を敏感に震わせる。若菜の空いた片方の太股を手のひらでゆっくり何度も撫で腹や、喘ぐ美少女を上目遣いで見守っていた。
「――――ッ、ふぁっ、んっっ!」
『殿方は乱暴に扱うばかりで、こんなことはしてくれないでしょう?』
若菜は目を伏せおずおずとうなずく。確かに式神との儀式でも、朔や光明との夜伽も力強く攻め立てられるので体力も直ぐに尽きてしまう。微笑むと若菜の桜貝の亀裂をゆっくりと指で開き既に濡れている両ヒダを舌先でなぞるように舐められ、思わず赤面して彼女を見つめる。
「っはぁ、さくやさま、そこは不浄の場所です……女神様にそのような……ひっぅんっ」
太股を撫でながら、濡れ音を響かせて舐める木花開耶姫は、蠱惑的な微笑みを浮かべ舌先を若菜の弱点である花芯に押し当てた。
『いいえ、貴方の女陰は綺麗ですよ。それに女陰は命が生まれる場所なのだから』
「はあっ、んん、はぁっ、あ、さくやさまぁ…あっ、はぁ………んんんんっ」
若菜は愛液を舐める音に耳まで紅くなり、ベッドのシーツをぎゅっと握りしめると、繊細で緻密な舌先の動きに翻弄されるように上擦った甘い声をあげた。女神の愛撫に淫らな声をあげる若菜の蜜穴に細い中指がゆっくりと挿入され入口で止まる。丁度、恥骨の裏側に当て優しくまさぐるとその指をぎゅっと締め付け、敏感に反応する。
愛液が指を伝って溢れ出して、舌先で掘り起こそうとする動きと相まって激しい快楽に変わっていく。足の指先が徐々にピンッと伸びていく様子に笑みを浮かべる。
「っっはぁ、も、もう、そこ、あっ、やぁんっ」
『若菜は本当に感じやすいのね? そんなに可愛い反応されたら堪らないわ。きっと、男達も我慢できなくて激しくしてしまうのね』
恭しい言葉遣いはやめ、木花之佐久夜毘売は内部を癒すように霊力を注ぐと膣内に温かさが広がる。
気をやりそうな若菜の花芯を、丁寧に時間をかけて舌先で転がすように舐め、一定の速度は崩さずに中指を出し入れし、恥骨壁を擦ると若菜は眉を強く八の字に顰めて目尻に涙を潤ませた。
「あっあっ、はぁっあっあっ、だめ、だめ……さくやさま、き、気をやりそうです、あぁ!」
頬を上気させ若菜は、甘い声で懇願したかと思うとガクガクと体を震わせて絶頂に達してしまう。ゆっくりと指を抜いて体を起こすと、若菜の手を引いて上半身を起こし抱き締めると耳元でそっと囁く。
『若菜、わたくしにもして……さぁ、貴女に私の霊力を注ぐわ』
佐久夜は枕を腰に沿わせるように座ると若菜を導いた。戸惑う彼女の頭を撫で、蠱惑的な笑みで囁く。
「あの、上手に出来るか……不安です」
『上手く出来るかなんて、気にしないでいいのよ、わたくしが貴方にしたようにすればいいの』
頬を染めて不安そうにする若菜をまるで子供を教えるかなように諭すと白い指先で、ぱっくりと薔薇色の女陰を広げる。若菜は頭を垂れるとおずおずと、仔猫が乳を飲むかのように舌先を出し恥毛のない花弁を舐め始める。
拙い舌先の動きが、背徳感を煽り若菜の稲穂のような髪を撫でながら自らの胸を揉んで吐息を漏らす。
『はぁ………若菜、気持ちいい……はぁ、指を二本で……』
「んっ、んん……はぁ……」
ぼんやりと言われるがまま二本の指先で暖かな内部をかき混ぜる。女性の膣内なんて、触れた事など勿論無い若菜は、そのきつい締め付けに驚きつつもペロペロと花芯を舐めた。木花之佐久夜毘売は、若菜の頭を押しつけつつ、自分ら快楽を求めるように腰を降り始める。
舌先に絡む愛液は、人のものとは違い、まるで上質な蜂蜜のように甘露で口の中に入ると体の芯から温まり指先まで力がみなぎるようだった。
「んんっ……んっふ……」
『はぁ、いい子ね……はぁ……あぁんっ、指を少し激しくして……あぁ! はぁ……さぁ、可愛いお口を開けなさい』
頬を染め言われるがままに二本の指の動きを早めると濡れた小さな口を開ける。
その瞬間眞液が、激しく飛び散るように注がれ勢いで飲んでしまう。まるで薄荷のような、清涼感とともに甘露な極上の蜜は若菜の内部から包み込み、ぼんやりと光の膜となって少女の体を包み込んだ。
深い深呼吸をする若菜を、乱れた吐息の女神がゆっくりと押し倒すと覆い被さり抱き締め、視線を合わせる。柔らかな胸の感触とすべらかな肌、良い香りが霞がかるように思考を奪っていた。
『寵愛は授けました。目が覚めれば、貴女はこの逢瀬を全て忘れるでしょう……。けれどわたくしは何時でも貴方を見守っていますよ。貴方の幸せを願っています。ふふ、最後に二人で一緒に気持ち良くなりましょう?』
悪戯っぽく微笑む若菜に啄むように口付け、小さな柔らかな舌先を互いに絡み合わせる。
「んっ………ん、はぁ……さくやさま……あっ! ひぅっ」
若菜の足を組み敷くと、互いの花弁を重ね合わせた女神は花核を擦り合わせるようにして動き始めた。濡れた桜貝からは互いの愛液が絡まりあって淫らな音が響き渡る。
「はぁっ、はぁんっ……あうっ……さくやさま、こ、擦れてっ……あんんん」
『はぁ、はぁ、気持ちいいでしょ? はぁ……女同士も気持ちいいのよ……男なんていらないくらいね……はぁ……ん』
円を描くように腰を動かされ、ぶつかり合う度に繊細で柔らかいのに強い快楽が襲いかかってくる。両手を互いに絡めて若菜の揺れる胸を舐めると更に動きを早める。快楽で溶け舌ったらずになる若菜を愛しそうに見つめて頬を染めると女神らしからぬ荒く息を乱して喘ぐ。
「はぁんん、いやん、あっっ、ぁっ、そんなにしたら、わたし、わたし……!」
『あっ、はぁん、若菜気持ちいいわ……一緒に気をやりましょうね……はぁん、あっ……あっ……可愛い、あっあっあっ!』
そのまま腰を淫靡にくねらせて円を描いて上下に擦り付けると、同じタイミングで一層高くなった甘い声をはりあげると絶頂に達した。
まるで射精するかのように、女神の眞液は若菜の花弁を濡らし、意識は空白の彼方へと吸い込まれる。
✤✤✤✤✤✤
「ふぁ、………よく寝た。私どうやって部屋まで戻ってきたんだろう。そうだ、倒れちゃって……」
若菜はパチッと瞼開けると起き上がり天上に向かって伸びをした。倦怠感もすっかり取れて普段よりも元気になったような気がする。
ふと、襖を開いて由衛が寝室に入ってくると側に正座をしてマジマジと此方を見た。心なしか頬が紅い。
『姫、もうお体の方は大丈夫ですか? 随分と顔色が良くなられましたね』
「由衛、連れて帰って来てくれてありがとうね。体は凄く楽になって元気だよ……? どうしたの、何だか顔が紅いけど」
『いえ…………』
「???」
まさか、襖越しに聞こえた愛しい主の艶声に反応したとは言える訳がない。
なんならちょっと覗いても罰は当たらんやろと思ってたなんて、元神使としては口が裂けても言える筈は無かった。
木花之佐久夜毘売は、天照大御神の名の孫で、高天ヶ原に下ったニニギノミコトの妻となり二人の神を出産するが、出産と言う務めを果たしてこの天界へと戻ってきた。
元より、親神より差し出されたような形で妻になった女神は、男性よりも女性を好ましく思うのか、末端の家来に至るまで女性で統一されている。
木花之佐久夜毘売に手を引かれ、導かれた先は美しい日本庭園が見える大広間である。庭から山が見えるのは、彼女が火山の女神でもあるからだろう。
部屋にはお香のような良い香りがし、卓には御茶と金平糖や和菓子等、様々な用意されていた。木花之佐久夜毘売は、上座に優雅に鎮座して若菜に促した。その、優雅な仕草は一つ一つが美しく洗練されている。
『さぁ、貴方の好きなものを用意しておきましたよ』
若菜は恭しく座ると、御茶とお菓子を食べ始めた。一見、何処にでもある菓子に見えるがその味は甘露で心を癒してくれる。その美味しさを噛み締めて幸福そうにしていると、ふと木花開耶姫が優しく問い掛けてきた。
『最近の貴方の心身の疲労が激しく、心配です。幼き日より私を信仰し、供物を捧げ、こうして私の声を聞き見ることができる霊力の高い娘――――。わたくしは貴女を特別に目にかけているのですよ』
若菜は手を止めると、木花之佐久夜毘売を見た。彼女との出合いは物心がつく頃で、連れられた 神社の桜の木の下で佇む姿を見つけ、持っていた金平糖を彼女に捧げてからだ。だが幼き日の記憶は夢のようであり、大人になってからその想い出は記憶の彼方に封印されていた。
記憶が無いとはいえ、陰陽寮に身を寄せるようになっても、無意識に参拝する場所は木花之佐久夜毘売を奉る神社で、桜の好きな彼女はその花を愛した。その信仰のお陰か、こうして逢瀬をし助言や加護を受けている。
「はい……その、義弟との行く末も……陰陽寮の事も、式神達の事も心配です」
悩み事は沢山あるが、何と言えば良いのか、歯切れの悪い若菜に微笑みかける。うまく言葉に出来ない若菜を手助けするように木花之佐久夜毘売は言葉を続けた。
『――――何も心配する事はありませんよ。朔は貴方を心から慕っています。貴方の為なら命を惜しまぬ程に。不器用ではありますが……、必ず最後に進むべき道を見つけます。貴方も本当は良く分かっているでしょう、朔は、他の者など初めから目に入っていないのですよ』
心の中を見透かされたような気になった。お鶴の事もそうであるし、光明が朔を愛人として扱っている事への不安と嫉妬、そして種違いとはいえ姉弟で恋仲になってしまった事への罪悪感が心を苦しめていた。義姉弟で無ければそんな苦しみも生まれなかったが、義姉弟なければ出逢えなかったジレンマが苦しい。
「佐久夜様がそう仰るなら――――私……」
『人の世の理は面倒なもの。天界も理や法はあれど心は自由です。例え義理の姉弟でも此方では夫婦となり愛し合えます。それに――――若菜、もう一人貴方を心から愛する殿方も、重要な運命を握っています』
木花之佐久夜毘売の言葉はとても心の支えになり、例え目が醒めれば忘れてしまうのだとしても、自分が朔を心のままに愛しても天は許してくれるのだと言う気持ちになる。そして、もう一人、自分を心から愛すると相手と言う言葉が引っ掛かり不思議そうに首を傾げた。
「由衛……? それともまさか光明様ですか――?」
由衛は兎も角、先日の様子からまさかそんな事は無いだろうが他に思い付くような異性はいない。大抵の場合は気味悪がるか差別的な目で見る異性が多いからだ。
――その言葉に、木花之佐久夜毘売は目を細めた。
『いいえ……。その者には近い将来出逢うでしょう。朔と、その者と、貴方の縁は絡まる糸のように複雑に、強い絆で結ばれているのです』
一体誰の事だろうと不思議そうにする若菜を、手招きした。大人しく女神の側によると若菜の柔らかい稲穂色の巻き毛に細い指先を絡ませると言う。
『これから先の運命は、若菜……貴方にとって過酷なものとなるでしょう。それはわたくしにとっても絵空事ではないのです―――』
若菜の髪から手を離すと、両頬を包み込むようにして木花之佐久夜毘売はそっと桜色のふっくらとした若菜の唇に桃色の唇を重ねる。夢の中ではそれが当然のようで、なんの疑問ももたず抵抗することもなく、自然と目を閉じて受け入れる。若菜には女知音を好む訳ではないのだが、こうする事が今は自然のように思える。
「……ん」
男性のように荒々しい接吻ではなく、優しく穏やかなもので小さな舌が絡まりあうと少し息が乱れる。唇を離すと、女神は穏やかに微笑み寵愛する人間の娘の頭を撫でた。ぼんやりとした表情で若菜は華奢な体を彼女に預ける。
『わたくしの霊力を直接注いであげましょう。このままでは貴方の精気はあの男達に吸われたままになってしまいます。わたくしの寵愛を貴方に』
✤✤✤✤✤✤
夢の中でぼんやりと霞む思考の中で木花之佐久夜毘売に体を預けると、目を閉じた。
肩を抱き寄せられる感触がして、名を呼ばれるとゆっくり瞼を開けた。そこは先程の客間では無く全く異なった西洋風の寝室になっている。普通ならばこの荒唐無稽な展開に驚くのだが、夢ではそれが当たり前のように別段不思議な事とは思えなかった。
南蛮渡来のカーテンのついた寝具はベッドと呼ばれるものだろう。とても柔らかく清潔で心地よく、ほんのりと良い香りがする。
寝室にはドレス姿の西洋の人形が飾られており、彼女の趣味を垣間見たような気がした。
『愛らしいでしょう。わたくしは西洋の女神達とも仲が良いので、時々贈って頂くのよ』
天界には神々の国境が無いのだろうか、とぼんやりと若菜は考えていた。気付けば服を脱いだ覚えはないが、若菜は見た事も無いヒラヒラとした豪華で可愛らしい下着と太腿まである靴下を着させられていた。
これは南蛮の女性が身に着けるものだろうか、木花之佐久夜毘売も同じように可愛らしい下着を身に着けていた。
変わった所と言えば、乳房が露になり下着の布地が予め切られて花弁が見える事だ。
「さくや、さま………ん…………ふっ……」
ふと名前を呼ぶと、琥珀色の柔らかな巻き毛を撫でながら若菜の唇をふさいで小鳥のように何度も啄み、そっと柔らかなベッドに若菜を押し倒すした。柔らかな唇は心地良くほんのりと頬を染めて、木花之佐久夜毘売をぼんやりと見上げた。
「とても、綺麗です……佐久夜さま」
雪のように白く極め細やかな柔肌に、若菜より豊かで形の良い柔らかな胸、括れのある腰。華奢な肢体は同姓から見ても純粋に綺麗だと思った。今ま出逢ったどの女性よりも、彼女は美しく長くサラサラとした美しい艶のある黒髪からはとても良い桜の香りがする。
自分と変わらない位の、清楚な美少女だ。彼女のような女性になりたいと憧れの眼差しを向けてしまう。その、清楚な美しさは異性同性問わず魅了するだろう。
女神は慈愛に満ちた笑みを浮かべ、押し倒した若菜の胸の先の蕾と自分の胸の先の蕾を擦り合わせるようにして、包み込むとじんわりとした安心感と快楽が生まれる。
『貴女こそ……金の美しい巻き髪、長い睫毛、琥珀の瞳……ふっくらとした唇、心地のよい陶器のような肌、エルフのように愛らしい……きっとリボンが似合うでしょうね。もっと可愛いお洋服を着せたいわ』
「えるふ……??」
首を傾げる若菜に、女神は西洋にいる美しい種族なのよ、と子供に教えるように囁いた
木花之佐久夜毘売は、やはり西洋が好きなのだろうか。この部屋の作りも何処を見ても洋式であるし、だから自分を特別愛らしいと感じるのかもしれない。まるで、可愛い人形を愛でるような眼差しで、若菜の胸元まで降りると女性独特の繊細な動きで優しく乳房を愛撫し、桃色の突起に柔らかな舌先を絡めた。
若菜の吐息葉緩やかに乱れてじわり、じわりと甘い声があがる。
「…………はぁ……………ん、んんっ……さくやさま……」
頬を染め唇に指を寄せて恥ずかしそうに快楽を感じる若菜の様子に満足し、髪を耳元にかけると若菜の反応を微笑みながら見つめた。桃色の蕾を巧みに舌先で舐め、徐々に固くさせていく。
そして脇腹や背中、胸を下から上にかけて羽毛のように、軽く撫でるように愛撫されると、ぞわぞわとした快楽が体を駆け巡った。男性の愛撫とは異なり、静かに追い詰めていくような手法にふつふつと沸騰していくような快感を感じた。
「んんっ……………はぁ……ん、………やぁん………」
徐々に喘ぐ唇が濡れ初め、体を敏感に震わせる若菜をあやす様に柔らかく口付けすると、繊細な指先が太股と内股を愛撫した。
『可愛い子………』
優しく囁き、枕の上で頭を撫でながら乳輪の境目を柔らかく舐めなた。佐久夜の指先が恥毛のない亀裂をゆっくりと往復するように撫でる。男性の太い指とは違い、ほっそりとした指先が、あくまで繊細に慎重に愛撫する。
上下に撫でながら花芯を巻き込むように同時に指の腹でると、若菜はぎゅっとシーツを握りしめて両足をピンと突っ張った。
「んんっ……あっ……はぁ、あっ……っあ、そこは、っっ……や」
花芯への敏感な反応とともに、濡れ始めた花弁に微笑みながら頬に口付ける。蜜を絡め弱点である膨らむ花芯をゆっくりと優しく一定の速さで撫でている。断続的な緩やかな快楽に魘されるように若菜は目を細めた。
『ここはわたくしと貴方だけ。女同士、遠慮はいりませんよ……ねぇ、若菜……痛くない?』
「は……い、んっ……はぁ、っっ、大丈夫です…」
頭を撫でてゆっくりと陰核の根本から上に、円を描くうちに、段々と若菜の吐息が乱れる感覚が早くなり目尻に涙が溜まり始めた。
濡れ音が蜜の量が増えて行くと共に響き渡ると愛液でぬるぬると指が滑っていく。その淫らな様子に木花開耶姫もまた、息を少し乱して興奮するかのように問い掛ける。
『若菜、気をやってしまいそう?』
こくこくと何度も頷き若菜は彼女に抱きつく。
「あっ、あん……は、い、い、っ……気をやってしまい、そうです、はぁっ……っあぁ!」
『……クス。気をやってしまったのですね』
若菜は突然押し寄せた快楽に体を震わせて絶頂に達すると、木花之佐久夜毘売にすがりついた。若菜を愛しそうにして頭を撫でてやると、脇腹やヘソの当たりに小さく柔らかい舌を這わせて愛撫する。それだけでも、敏感になっている肢体は、快感に身悶え処女雪のような白い肌を紅潮させ、汗を滲ませていた。
するり、と木花開耶姫は体勢を低くすると若菜の太股を開かせると撫でながら内股にゆっくりと舌を這わせるとその度に体を敏感に震わせる。若菜の空いた片方の太股を手のひらでゆっくり何度も撫で腹や、喘ぐ美少女を上目遣いで見守っていた。
「――――ッ、ふぁっ、んっっ!」
『殿方は乱暴に扱うばかりで、こんなことはしてくれないでしょう?』
若菜は目を伏せおずおずとうなずく。確かに式神との儀式でも、朔や光明との夜伽も力強く攻め立てられるので体力も直ぐに尽きてしまう。微笑むと若菜の桜貝の亀裂をゆっくりと指で開き既に濡れている両ヒダを舌先でなぞるように舐められ、思わず赤面して彼女を見つめる。
「っはぁ、さくやさま、そこは不浄の場所です……女神様にそのような……ひっぅんっ」
太股を撫でながら、濡れ音を響かせて舐める木花開耶姫は、蠱惑的な微笑みを浮かべ舌先を若菜の弱点である花芯に押し当てた。
『いいえ、貴方の女陰は綺麗ですよ。それに女陰は命が生まれる場所なのだから』
「はあっ、んん、はぁっ、あ、さくやさまぁ…あっ、はぁ………んんんんっ」
若菜は愛液を舐める音に耳まで紅くなり、ベッドのシーツをぎゅっと握りしめると、繊細で緻密な舌先の動きに翻弄されるように上擦った甘い声をあげた。女神の愛撫に淫らな声をあげる若菜の蜜穴に細い中指がゆっくりと挿入され入口で止まる。丁度、恥骨の裏側に当て優しくまさぐるとその指をぎゅっと締め付け、敏感に反応する。
愛液が指を伝って溢れ出して、舌先で掘り起こそうとする動きと相まって激しい快楽に変わっていく。足の指先が徐々にピンッと伸びていく様子に笑みを浮かべる。
「っっはぁ、も、もう、そこ、あっ、やぁんっ」
『若菜は本当に感じやすいのね? そんなに可愛い反応されたら堪らないわ。きっと、男達も我慢できなくて激しくしてしまうのね』
恭しい言葉遣いはやめ、木花之佐久夜毘売は内部を癒すように霊力を注ぐと膣内に温かさが広がる。
気をやりそうな若菜の花芯を、丁寧に時間をかけて舌先で転がすように舐め、一定の速度は崩さずに中指を出し入れし、恥骨壁を擦ると若菜は眉を強く八の字に顰めて目尻に涙を潤ませた。
「あっあっ、はぁっあっあっ、だめ、だめ……さくやさま、き、気をやりそうです、あぁ!」
頬を上気させ若菜は、甘い声で懇願したかと思うとガクガクと体を震わせて絶頂に達してしまう。ゆっくりと指を抜いて体を起こすと、若菜の手を引いて上半身を起こし抱き締めると耳元でそっと囁く。
『若菜、わたくしにもして……さぁ、貴女に私の霊力を注ぐわ』
佐久夜は枕を腰に沿わせるように座ると若菜を導いた。戸惑う彼女の頭を撫で、蠱惑的な笑みで囁く。
「あの、上手に出来るか……不安です」
『上手く出来るかなんて、気にしないでいいのよ、わたくしが貴方にしたようにすればいいの』
頬を染めて不安そうにする若菜をまるで子供を教えるかなように諭すと白い指先で、ぱっくりと薔薇色の女陰を広げる。若菜は頭を垂れるとおずおずと、仔猫が乳を飲むかのように舌先を出し恥毛のない花弁を舐め始める。
拙い舌先の動きが、背徳感を煽り若菜の稲穂のような髪を撫でながら自らの胸を揉んで吐息を漏らす。
『はぁ………若菜、気持ちいい……はぁ、指を二本で……』
「んっ、んん……はぁ……」
ぼんやりと言われるがまま二本の指先で暖かな内部をかき混ぜる。女性の膣内なんて、触れた事など勿論無い若菜は、そのきつい締め付けに驚きつつもペロペロと花芯を舐めた。木花之佐久夜毘売は、若菜の頭を押しつけつつ、自分ら快楽を求めるように腰を降り始める。
舌先に絡む愛液は、人のものとは違い、まるで上質な蜂蜜のように甘露で口の中に入ると体の芯から温まり指先まで力がみなぎるようだった。
「んんっ……んっふ……」
『はぁ、いい子ね……はぁ……あぁんっ、指を少し激しくして……あぁ! はぁ……さぁ、可愛いお口を開けなさい』
頬を染め言われるがままに二本の指の動きを早めると濡れた小さな口を開ける。
その瞬間眞液が、激しく飛び散るように注がれ勢いで飲んでしまう。まるで薄荷のような、清涼感とともに甘露な極上の蜜は若菜の内部から包み込み、ぼんやりと光の膜となって少女の体を包み込んだ。
深い深呼吸をする若菜を、乱れた吐息の女神がゆっくりと押し倒すと覆い被さり抱き締め、視線を合わせる。柔らかな胸の感触とすべらかな肌、良い香りが霞がかるように思考を奪っていた。
『寵愛は授けました。目が覚めれば、貴女はこの逢瀬を全て忘れるでしょう……。けれどわたくしは何時でも貴方を見守っていますよ。貴方の幸せを願っています。ふふ、最後に二人で一緒に気持ち良くなりましょう?』
悪戯っぽく微笑む若菜に啄むように口付け、小さな柔らかな舌先を互いに絡み合わせる。
「んっ………ん、はぁ……さくやさま……あっ! ひぅっ」
若菜の足を組み敷くと、互いの花弁を重ね合わせた女神は花核を擦り合わせるようにして動き始めた。濡れた桜貝からは互いの愛液が絡まりあって淫らな音が響き渡る。
「はぁっ、はぁんっ……あうっ……さくやさま、こ、擦れてっ……あんんん」
『はぁ、はぁ、気持ちいいでしょ? はぁ……女同士も気持ちいいのよ……男なんていらないくらいね……はぁ……ん』
円を描くように腰を動かされ、ぶつかり合う度に繊細で柔らかいのに強い快楽が襲いかかってくる。両手を互いに絡めて若菜の揺れる胸を舐めると更に動きを早める。快楽で溶け舌ったらずになる若菜を愛しそうに見つめて頬を染めると女神らしからぬ荒く息を乱して喘ぐ。
「はぁんん、いやん、あっっ、ぁっ、そんなにしたら、わたし、わたし……!」
『あっ、はぁん、若菜気持ちいいわ……一緒に気をやりましょうね……はぁん、あっ……あっ……可愛い、あっあっあっ!』
そのまま腰を淫靡にくねらせて円を描いて上下に擦り付けると、同じタイミングで一層高くなった甘い声をはりあげると絶頂に達した。
まるで射精するかのように、女神の眞液は若菜の花弁を濡らし、意識は空白の彼方へと吸い込まれる。
✤✤✤✤✤✤
「ふぁ、………よく寝た。私どうやって部屋まで戻ってきたんだろう。そうだ、倒れちゃって……」
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ふと、襖を開いて由衛が寝室に入ってくると側に正座をしてマジマジと此方を見た。心なしか頬が紅い。
『姫、もうお体の方は大丈夫ですか? 随分と顔色が良くなられましたね』
「由衛、連れて帰って来てくれてありがとうね。体は凄く楽になって元気だよ……? どうしたの、何だか顔が紅いけど」
『いえ…………』
「???」
まさか、襖越しに聞こえた愛しい主の艶声に反応したとは言える訳がない。
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