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No.011~No.015
しおりを挟むNo.011
昨日の僕は、昨日のあなたに何を残せただろう。確かめるすべはあるのだろうか。星のきらめきのように朝になれば消えてしまうものか。あなたがひとり僕を見つめている。あなたを思い出しながら僕はひとりぼっちの彼を目の前にする。そして彼がくれるものを僕は使い果たしてあなたに渡す、その繰り返し。
No.012
おちてくるおちてくる。こどもたちがあちらこちらで騒ぎだす。向こうの方からやってくる。彼らが通りすぎるのを待ってみる。おちてくる、おちてくる。遠くの山からやって来た。あれはどこの御方でしょう。姉さまも兄さまも知らぬというの。だれも知らない、だあれも知らない。こどもたちはもういない。
No.013
いいだろう、ここいらでけじめをつけようじゃないか。僕は神さまのうたう神殿に来たはずなのに。お前の正体は俺が知っている。まずは、両手をあげろ。そして、ゆっくりとこちらを向くのだ。太古の昔、ここには神さまを迎える神殿があった。今はもう、ぼろぼろだ。「僕は、人間です」「いいや、お前は」
No.014
きみは僕にいんちきを教えたね。僕が無知なやつだと知っていたから。だから世の中を教えたのだというけれど、それはきみ自身のことであって世の中はいんちきがはびこる世界ではないと思うのだ。そうさ、きみがいんちきなだけだ。隣のひとがきみと同じとはかぎらないし、同じかもしれないけれども……。
No.015
見つからないんだ、僕の大切なものが。ずっと探し続けているのにどこにもない。僕にとって大切なものがあると誰かが仕切りに言うから、誰しもが持っているものなんだと。けれど見つからないんだ。そもそも僕の大切なものは、誰かのいう大切なものと同じものなのだろうか。譲れないもののことだろうか。
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