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102 木属性の魔物討伐 最終日 消える二人 ーエイプ・フリーレルー

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終わった。


この魔物魔物討伐でディッセンを片付けるチャンスを狙っていましたが上手くことが運んで良かった。

今まで苦労して神子様のお世話してきたのに子供を産んだだけで王になられてはたまりませんからね。

私は自分自身に治療と体力が僅かに回復する木属性の魔法『癒しの露草』をかけた。


「ふう、これなら安心して帰還できるでしょう。アリージャ来なさい。貴方にもかけてあげます『癒しの露草』」

「ああ、有難うございます」


魔力切れを起こしていたアリージャは顔色が良くなりました。

神子様は当然自分もかけてもらえると思っている顔をしていますが貴方は加護の力の為にいるだけで戦いには参戦してないでしょう。


「神子様は……かけなくてもいいですね」

「なんでだよ」

「私の魔力も無尽蔵にあるわけじゃないんです。この戦いでかなり魔法を使いました。あと魔法が使えるのは1回くらいです。神子様は体力も怪我もないからかける必要がありません。」


背後でディッセンを抱きしめたノーベンがつぶやいた。


「うっぅっ、……フリーレル、魔法だ。回復魔法をかけてくれ。」

「では『癒し…」


ノーベンの頭に手をかざすとはねのけられた。


「違う俺じゃない。ディッセンを治してくれ」

「ムダですよ。この身体には魂がない。回復魔法は蘇生魔法ではありませんから生き返りません」

「じゃあ蘇生魔法をかけてくれよ!」

「そんな凄い魔法を魔法学園で行うならまだしも、こんな魔法陣もかけない場所では無理です。それに私の魔力も『癒しの露草』1回分くらいしかないんです」

「わかった、俺はいい、ディッセンを治療してくれ。」

「無駄だと言ったでしょう。ノーベン、貴方は頭や腕に大怪我をしているんですよ。死体にかけるより自分の治療に…」

「死体じゃないっ!! いいから早くしろっ!!」

「ふぅ、効くかわかりませんよ。『癒やしの露草』」


ディッセン・アルーバの擦り傷や肩口にあった傷が綺麗にふさがる。


!!


「ディッセン良かったなぁ。魔法学園に戻ったらちゃんと治療しような。」


血だらけのノーベンはディッセンに頬ずりして喜んでいる。



……驚きました。

ディッセン、貴方はまだ生きているんですか。

心臓の傍にある棘を動かして とどめを刺したつもりだったのに魔法属性の相性が悪いせいで、仕留めそこなったようですね。

この場に留まって私の魔力の回復を待てば、ノーベンの治療と体力の回復魔法をかけることになる。

そんなことはしませんよ。

私は懐から転移魔法スクロールを取り出した。


「ここは危険です。小物の魔物に襲われたらひとたまりもありません」


真実は エリア7のラスボスを討伐すれば全ての魔物が息絶え、ここは一番安全な場所なんですよ。

無知なアリージャはともかく、ノーベンは兄を助けることに必死でそちらに頭が回らないうちに沢山動かさないと。

帰還の途中で心臓の傍の棘が刺さるかもしれないですからね。


「皆さん、急いで魔法学園に帰りましょう。ノーベン・アルーバ、死体は私につかまれませんから連れて帰るなら貴方がちゃんと捕まえてて下さいね。」

「黙れ何度も言わせるな。死体じゃないっ!!ディッセンは寝ているだけなんだ。」

「そうですか、では転移します。皆さん私に掴まって下さい。」


死体を見たくない神子様は、アルーバ兄弟とは反対側にしがみつき、アリージャは落ち込んだ表情でその間につかまった。

転移魔法スクロールを燃やすと小さな魔法陣が足元に展開され、決められた場所、この場合は魔法学園へと転移する。

転移中の20分間は術者の私の身体に掴まっていないといけない。

両手でも大変なのにノーベンは片手で二人分の体重を支えてますから、そのボロボロの小さな体で20分持つのでしょうか?


………10分ほど経ったころ、ノーベンの動きがおかしくなった。


怪我した腕でディッセンを抱えていたが死体の重さに支えられなくなってきたようで何度も抱えなおしている。


「ディッセン、駄目だっ……くっ、ディッセンっ」


万歳をする格好でディッセンはズルズルと腕の中から滑り落ちていく。

なんとか背中のシャツの端を指で引っ掛けているような持ち方でギリギリ掴んだ。

ディッセンは背中が丸出しでぶら下がっており、戦闘で傷んだ服はビリビリと裂けてきた。


「ディッセンっ!!ボクに捕まってっ!!」


その声も虚しくノーベンの手にシャツを残して、ディッセンは時空の間 はざまにゆっくりと落ちて行く。


「ディッセン、駄目だ!そっちに行くな!ディッセン…待てっ!!」


ノーベンはローブから手を放し私の身体を蹴って勢いをつけて急降下した。


「ぐっ!」

「おい、エイプ大丈夫か」

「フリーレル様っ!!」


脚から嫌な音が聞こえた。ノーベンに蹴られた膝が痛い。

あの音からすると火属性の勇者の蹴りだ、木属性の私の足の骨は折れているかもしれない。


ノーベンはなんとかディッセンの元に手が届きと急いで抱きよせる。


「ディッセン、ボクの傍にいなくちゃだめだろ💗…あ……」


ディッセンを抱きしめたノーベンはこちらを見ながら手を伸ばすが距離が縮むことはなく、時空の間 はざまに吸い込まれるように二つの影はゆっくりと遠ざかっていく。


「おい アイツらどんどん落ちていくぞ」

「うぐっ、時空転移中の落下はどこに飛ばされるのか誰にもわかりません。膝が砕けている私が助けるのは無理です。どうすることも出来ません。二人とも無事に魔法学園に戻りたいのなら、術者のしっかり私に掴まってて下さい」


あっという間に小さくなって消えてしまった。

恐怖に震える神子様とアリージャは痛いくらいに私にしがみつき魔法学園には無事三人で帰還した。



 
 
 
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