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81.3 請求書 ーノーベン・アルーバー (改)
しおりを挟む「ノーベン様 こちらが請求書になります。」
「うわあ、随分お金を使ったね。」
ドレス・靴・バッグ・スィートルームの宿泊費・専属メイド3人、etc…etc…凄い金額になっている。
リィーサの様子を見るために、ボクもこのホテルに泊まっているけど、スィートルームなんて高価でとても泊まれないよ。
「この請求書にある物を買った人は誰なの?」
「こ、この女性です。」
「だよね。兄様と婚約解消したから、この人とアルーバ男爵家とはもう全然関係ない人なんだよね。このお金はさー、使った人が払えばいいんじゃない?」
「はい そのように致します」
翌日早朝 リィーサは髪の毛を鷲掴みされてスイートルームから引きずり出された。
「痛い痛い痛い!」
ホテルは大騒ぎで宿泊客が何の騒ぎか集まってきた。
ボクのその人垣の中に紛れて様子を見ていた。
「貴方達 何するのよ。私を誰だと思っているのよ?!」
「リィーサ・ガーバマ ここのサインにはそう書いてある」
「そうよ。それが私の名前よ。未来のアルーバ男爵夫人よ」
「そうか じゃあ未来のアルーバ男爵夫人。俺も名乗ってやろう、あんたがサインしたこの請求書の店全部から頼まれた借金取りだよ。馬車代・ドレス代ここの宿泊費はいつ払う気なんだ?」
自分のサインの入った書類を突きつけられている。
そこには手間賃として倍額上乗せされていたらしい。
「代金が倍になっているじゃないの!! こんな法外な値段なんて酷いわ!! い…いいわよ、そんなはした金 すぐにでもノーベン・アルーバが来て払ってくれるわ。……あっ!やめて私のドレスに汚い手で触らないでっ!」
部屋の中を物色している男達がドレスを運び出そうとしている。
ドレスに抱き着くと繊細なレースの生地が裂ける音が響く。
「いやあああっ!! 私のドレスがっ!! 貴方弁償しなさいよ。これ高かったんだから」
「旦那様 こっちのドレス ワインのシミがついてますよ。返品できません。これは買い取ってもらわないと」
「わかった。破れと汚れと今着ているので3着は返品不可能っと、靴は1つ駄目か、残りを差し引いてと……あんたこんなの生きているうちに返せる額じゃないぜ。どーすんだ?」
「だから お金はアルーバ男爵家が払ってくれるのっ!!もうっ!触らないで!」
「はははははははは、面白いこと言うじゃねえか。このドレスは お前が買い漁ったんだろ?」
「そうよ。私はアルーバ男爵家の妻になるんだから これくらい当然なの!ノーベンに聞いてよ。彼が私の為に馬車を用意してくれたんだから!!」
「これはまた面白いことを言うなぁ。アルーバ男爵家がお前に馬車を用意しただと?なに言っているんだ。お前は流しの馬車に乗り込んで料金も払わず 色々顎で色々こき使われたと御者が言っていたぞ。」
!!!
「な、流しの馬車ですって?…… 嘘 じゃあ、私は違う馬車に乗ったって事?? 嘘 嘘 どうしよう?? 私が待ち合わせの場所にいないってノーベンは心配して探しているはずよ。そこの貴方、急いでアルーバ男爵家に連絡してちょうだい。リィーサが困ってるって言えばすぐに駆け付けてくれるわ!」
「連絡? はははははははははは、馬鹿かお前は そんな無駄なこと するわけないだろう」
借金取りは宿泊客の方に振り向いて詫びと騒ぎの説明をする。
「宿泊されている皆様、朝から大変ご迷惑をおかけしております。最近この女のように自分は貴族の妻になるからツケにしろと言って、金を払わず逃げる事件が多発してるんですよ」
宿泊客達の悪意に満ちた視線はリィーサに向けられる。
「そんなっ、違うわ。私は本当にノーベン・アルーバの……ぎゃぁっ」
借金取りは無言でリィーサを殴りつけた。
「呼び捨てにするなんてなんて無礼な女なんだ。アルーバ男爵様も名前を出されていい迷惑だよ。皆様も色女色男が近寄ってきたら、お気を付けください。ほら立て、お前のような図々しい女、使った金を全部払うまで逃がさないから覚悟しておけ。」
「本当よ!本当なの!私はアルーバ男爵夫人になるのよ!いやあああー!放して!!」
宿泊客達は口々に「アルーバ男爵、危なかったわね」「なんてひどい女なんだ」と同情言葉とリィーサの愚行を罵っていた。
ボクが見ていたのはここまで、この後は借金取り達がリィーサの新しい仕事場に連行して行った。
リィーサの仕事は天職ともいえるところにしてあげたよ。
しかも手っ取り早く高額なお金が稼げる夜の店。
報告書によると何度か逃げようとしたが、豪華なドレスと踵の高い靴が邪魔をして すぐに連れ戻されたらしい。
娼館では豪華なドレスを着た貴族の女を抱けると言うのが珍しく、指名ナンバーワンだった。
一晩で何人も相手をしているリィーサは次第にやつれていき、半年も経てば3着あったドレスは男達の白濁が付いてシミだらけ、どんどん汚くみすぼらしくなっていった。
給料全額を借金返済に充てられ、手元には自由に出来る金はない。
新しいドレスが買えるわけもなく、薄汚れているリィーサから だんだんと客足が遠のいた。
「リィーサ、コーツアが小屋行になったから お前が特別客の相手をしろ」
「いやあ、それだけは嫌よ。なんでもするからお願いそれだけは」
「なんでもするなら 特別客とヤるんだな。借金はまだまだ沢山あるんだ。払えないなら奴隷に落ちるか? そこまで落ちるともう太陽は拝めないぜ。男と混じっての肉体労働は大変だぞ。そのあとは夜の相手もしなくちゃいけないしな。ククク、俺はどっちでもいいけどな。」
「イヤイヤイヤイヤ…誰かぁ 助けて…」
貴族の女なのに病気持ちでも拒まないと言う噂が広まり、死期が近い男達は最後の思い出にとこぞってリィーサを指名してまた指名ナンバーワンに返り咲いた。
そのおかげでリィーサの莫大な借金は1年で完済した。
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