スクールカースト上位の俺は異世界の中心で男にまわされる

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94 スープ ーガストー・サオマー

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指輪をもらったあの日から3日、セプターの顔を見ていない。

どうやらセプターに避けられているらしい。


『俺を抱いた責任はちゃんと取れよ。プロポーズも指輪も貰っているんだ』


あんな事を言ってセプターに無理やり責任を取るように頷かせれば、好かれるわけないじゃないか。

そんなことわかっている。

あの時は俺がこんなに愛して尽くしていることをわかって欲しかった。

でも、今は避けられていることが辛くて仕方ない。

責めるように言ったのは間違いだった。


魔法学園内をこれだけ歩いて会わないなら屋敷に帰ってしまったのかも知れない。


それでも今日も未練たらしくセプターの部屋の前に来てしまった。


「セプター…ごめん…」

「サオマ様?」


驚いて振り向くとメイドがワゴンに昼食を乗せて立っている。


「なんだ」

「バンテール様のお食事をお持ちしました」


 !

セプターは屋敷に帰らず部屋にいるのか。

ドアが開けられれば セプターの顔を少しでも診ることが出来る。


俺はドアをメイドに譲る。

メイドは少し変な顔してから軽くノックをした。


「バンテール様、お食事をお持ちしました。ドアを開けて下さい」


だが、中からドアは開かない。

メイドはすぐに諦めて食事を持って帰ろうとする。


「待て、食事を置いていけ。後で食べるかも知れないだろう」

「…あのぉ…バンテール様は、昨日もご用意してワゴンを廊下に置いておきましたが お食べになりません。もしかしたら討伐前と同じようにご自分で用意されているのかもしれません」

「自分で用意?セプターがそう言ったのか?」

「い、いえ、私はわかりません。このドアは魔法で鍵がかかってて開きませんし、3日間ずっとお食べになりませんので」

「3日間 食べてないだと?!」


誰にも報告せず自己判断しているのか…コイツは駄目なメイドだ。



「食事は俺が届ける。下がれ、お前はクビだ」

「クビだなんて、そんな。どうやってお届けすれば良かったんですか」

「ドアが開かなければ、窓から入ればいいだろう」

「窓ですか?!」


俺は自分の部屋へ戻ると窓から雲で飛んでセプターの部屋のバルコニーに降りた。

大きなガラス戸から中を覗くと、リビングのソファーにセプターが横たわっている。

ガラス戸を取っ手を両手で引くと左手の方だけカチリと音をたてて開く、急いで駆け寄り青い顔してやつれたセプターを抱き起こした。


「セプター、どうしたんだ具合が悪いのか。今 食事と医者を用意するからな」

「う………ガストー、…ごめん…」

「もういい、謝るな。食事を持ってくる、少しでも食べろ」

「いらない…」

「とにかく待ってろ」


そっと元の位置に寝かせ、食事を持ってくるためにドアを開けると、またカチリと左手の方のドアだけ鍵が開く。


なんだ?変だな。


ドアの前でしくしく泣いているメイドがまだいた。


「おいお前、医者を連れてこい。いなければ治癒魔法が使えるオークト様をお連れしろ」

「ひっく、私はクビじゃ………」

「早くしろ!本当にクビにするぞ!」

「はっ、はいーっ」


メイドに医者を呼びに行かせて、食事を持って戻るとセプターがソファーにいない。

バルコニーに目をやるとセプターは身を乗り出して落下した。

急いで雲を作って追いかけてセプターを地上スレスレで受け止める。


「なにしてんだバカ!!…バカっ…バカセプター…折角、生きて戻ってこれたのになにやってんだ」

「ガストー…ごめん……」

「謝るくらいならこんなバカなことするなっ!!」

「…ごめん……」


泣きながらセプターを抱きしめて部屋に戻るとメイドが医者を連れてきていた。

診察すると案の定、栄養失調だということがわかった。

数日何も食べていないから消化にいいものを食べさせるようにと言われ、野菜をくたくたに煮た野菜スープを持ってこさせた。

だが、口を付けない。


「自分で飲めないのか。ほら俺が飲ませてやる。口を開けろ」

「やめろ…いらない………」

「食べなくちゃ、元気になれないじゃないか」

「………………」


うー、これは言いたくなかったけど仕方ない。


「…俺のことちゃんと責任とってくれって言っただろ。じゃないと許さないぞ」

「…わかってる………だから…死んで責任をとるんだよ…」

「はあ?!お前何いってんだよ。そんなので責任なんか取れるわけ無いだろ。」

「ガストー…もう、俺に構うな」

ねるのもいいかげんにしろ」


俺はスプーンをセプターの口に無理やり入れる。

反射的にセプターが払いのけるから 俺は持っていたスープを頭から浴びた。


「熱っっ!!」

「ガストー、すまん」

「………新しいスープを用意させる。今度はちゃんと飲めよ」

「いらない」


新しいスープを払いのけはしなかったが、飲むことはなかった。
 

このままだと本当にセプターは死んでしまう。

セプターに何か食べさせないと…

 !

あれなら絶対に口にしてくれる。

クソっ!! わかっているけれど、アイツに負けたようで悔しいから嫌だ。

だけど、セプターの命にはかえられない。



俺は医者とオークト様にセプターの事を頼むとバンテール伯爵別邸に雲に乗って飛んでいった。
 
 
 
 
 
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